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【ユニコーン急増】フレンチテックについて。フランスで何があったの??フランスの事例から見るスタートアップ成長の条件とは!!

こんにちは!PreVenture編集部です!

2020年のフランス国内におけるスタートアップ投資額は52億ドル(約5700億円)とヨーロッパではイギリスとドイツに次ぐ3番目の数字となりました。ここ数年でユニコーン企業を20社以上生み出すなど大きな変化を見せているフランス。なぜフランスでユニコーン企業が続々と誕生しているのでしょうか。

今回は「フレンチテック」について解説します!!

フランスでユニコーン企業が増えた背景

フランスでユニコーン企業が増えた背景には、政府による経済政策が大きく影響しています。

フランスの経済政策

フランスでユニコーン企業が続出するもっとも大きな要因は、フランスの経済政策です。2005年に始まった競争力拠点政策。そして、 2013 年に開始したフレンチテック(French Tech)が、フランスのスタートアップ企業の成長に貢献しています。

フランスでのスタートアップ企業の資金調達額は年々増加。2020年は、スタートアップへの投資額は約 77 億ユーロを超え、一件当たりの資金調達額も増大している他、スタートアップ企業自体も1万社以上と増え続けています。

マクロン大統領の影響も

2017年に就任したマクロン大統領の影響も忘れてはいけません。マクロン大統領はイギリスの投資銀行ロスチャイルドでの勤務経験も持っています。その時の経験を活かし、投資せ策を実行。フランス経済の発展のために、未来あるフランススタートアップへの投資を惜しまない姿勢は、数年で成果を出しています。

マクロン大統領は、天性のリーダーシップでフランスのスタートアップ・エコシステムに大きな影響を与えています。

世界からも注目を集める

フランスには世界的大企業からの投資にも注目が集まっており、MetaやGoogle、IBMといったアメリカの巨大企業から、ソニー、楽天、富士通などの日本企業もフランスに拠点を置いています。

そして、開始当初は、政府主導の政策であったものの、地方分権化の流れの中で、地方自治体が役割を代替し、フランス全体としてスタートアップ企業を支援する土壌が整ってきています。

コロナ禍でのスタートアップ支援

コロナ禍でもフランス政府はスタートアップを積極的に支援しました。

コロナショックの影響で大打撃を受けたスタートアップに対し、融資支援や研究税額控除及び決定済み補助金等の前倒し給付など総額52億ユーロ、日本円にして約7,000億円以上の経済支援策を実行しました。

これまでのフランススタートアップ

ここでこれまでのフランスのスタートアップの様子について見ていきます。

製造業が基幹産業だった
製造業が盛んなことで知られるフランスは、宇宙航空産業のエアバス社、ルノーやシトロエン等の自動車産業といった重厚長大の製造業が国の基幹産業としてフランス経済を支えてきました。

しかし、インターネットやグローバル化によって海外との境がなくなり始めた頃、自動車業界は、賃金が安い東欧諸国などへ生産拠点を移転。その結果、国内総生産(GDP)に占める製造業の比率は 2000年から 2015 年の間に15.7%から11.2%へと低下しました。

優秀な起業家が国外へ流出
また、フランスは優秀な起業家を輩出するものの、国外へと流出してしまう”Tech Backwater”(テック産業の僻地)とされてきました。例えば、クラウドプラットフォームSnowflake、イベント管理プラットフォームを展開するEventbrite、そして現在よく耳にするワクチンを開発しているModerna。これらすべては、アメリカでフランス人起業家によって創業されました。

その背景には、フランスのスタートアップが育たない環境が問題視されていました。優秀な起業家たちは、スタートアップへの投資額も大規模で、大きなチャレンジができる土壌が整っているアメリカへと流れていました。

フランスの課題
フランスでは、優秀な人材を多く輩出していたものの、スタートアップが必要とする資金力や情報、コネクションが欠けていました。優秀であればあるほど、アメリカなどのスタートアップ企業への支援が手厚い環境で起業する人が多く、フランス経済への機会損失が問題でした。

2005年に始まった競争力拠点政策


フランスのスタートアップ大国への道のりは、2005年から始まりました。フランス政府は、2005年に競争力拠点政策を実行しました。


競争力拠点政策とは
国内に IT、医療、 バイオ、再生可能エネルギーなど成長が見込まれる様々な産業の育成を目的として産業集積地を設置。これらを競争力中核拠点と称し、大企業や大学・高校などの教育機関、政府系の公的機関を集め、地域経済を発展させるとともに、地域内でのネットワーク形成によるイノベーションの促進を図るというもの。

この政策におけるイノベーションは特定の産業同士だけに限らず、異業種が混じり合い、0から新たなイノベーションを創出することが重視されました。

ポイント① 5か年戦略の策定

競争力拠点では、関わる様々な関係者間でビジョンを共有できるように、 独自の5ヵ年戦略を策定することが決められています。競合として争うのではなく、フランスの成長そして世界経済の発展のために協力することが求められています。

ポイント② レベル分けによる効果的な支援

全71ある競争力拠点には、3つのレベル分けが行われており、

①世界級競争力拠点として7拠点。 
②準世界級競争力拠点として10拠点。
③残りが、国内級競争力拠点とされました。

第4フェーズまで到達している競争力拠点は、新たに拠点を設置する方向ではなく、過去の運営実績から、高いパフォーマンスを出している競争力拠点を選定し、集中して支援していく という「量から質への転換」へと向かっています。

2013年に始まったフレンチテック

2013年11月、当時のオランド大統領の下、スタートアップ支援をはじめとする産業育成と雇用創出のための政策が発表されました。

フランスのエコシステムを総称したフレンチテックは、デジタル共和国を掲げるフランスの一種のブランディング戦略とされています。フランス国内の経済発展はもちろん、世界中の優秀な人材を国内に招き入れて育成し、海外へ積極的に アピールするというフランスの独自の取組です。

2017年に大統領に就任したマクロン大統領は、2014年には経済・産業・デジタル大臣を担当していた経験から、フレンチテックを推進しています。

2019年から第2フェーズに入っているものの、基本的な方針は2013年から変わらず、コミュニティの形成・スタートアップの成長促進・国際化の促進を掲げています。

コミュニティ形成:フレンチテック都市圏を設置

コミュニティ形成においては、13のフランス主要地方都市にスタートアップ支援拠点として「フレンチテック都市圏」を設置。フレンチテック都市圏では、75%以上をスタートアップ起業家や元起業家で構成されるように設計。地方自治体を含む地域の公的機関の推薦が条件となっているなど、これまである程度発展している企業に対し、フレンチテックというラベル認定をすることで、地方都市にスタートアップ支援を牽引する役割を担わせています。

またフランス国内だけでなく、世界の主要都市でもフレンチテック共同体と称した拠点を設置しています。

スタートアップの成長促進

フレンチテック第1回目の選定企業124社の内84社(68%)が、イル=ド=フランス州内のスタートアップ企業となりました。

 選定された企業は

・ラベル認証による対外的な視認性を高める
・他国の市場調査やビザ取得の支援、
・資金調達での専門家によるアドバイス、
・欧州最大の株式市場ユーロネクストへの株式公開支援、
・公的機関との契約機会など

幅広い手厚い支援で企業の成長をサポートを受けることができます。
ラベル認証は、更新可能であるものの有効期限は1年間と限定されています。

さらに、ユニコーン企業創出を目的としたネクスト40と呼ばれる高位のラベル認証を用意。特に成長性が高い40社のスタートアップ企業のうち、より厳しい条件をクリアした企業のみを選定しています。

これらのラベルは投資家の投資判断の一つになっています。より可能性のある企業の投資を促すことができます。育つ可能性のある企業に確実に資金が届く環境がフレンチテックを後押ししています。

国際化の促進

国際化の促進は、
国内スタートアップ企業の海外進出を支援
外国人のフランス国内でのスタートアップ企業活動

の2点に注力しています。

フランス政府は世界の主要都市でもフレンチテック共同体と称した拠点を設置。この拠点を活用することで、国内スタートアップ企業はスムーズに海外進出できます。このように国内スタートアップの海外進出のハードルを下げ、常に支援できる体制を整えています。

一方、外国人のスタートアップ企業活動に対しては、フレンチテックビザを設けEU圏外からの外国籍の起業家、従業員、また投資家やその家族のビザ取得を支援。ビザ発行までのハードルを低くすることで、多くの外国人に利用してもらう意図を持っています。


注目のフランスのユニコーン企業

2025年までに25社のユニコーン企業輩出を目指したフランス。マクロン大統領が就任した2017年当時には3社しか存在していなかったユニコーン企業は、2022年2月には25社となりました。予定よりも3年も早く達成された目標。どのような企業が誕生したのでしょうか。

オンラインでの医療予約サービスを提供する Doctolib

医師のための予約プラットフォームとして、大きく成長したDoctolib(ドクトリブ)は、医療業界のSaaSとして大活躍しています。現在、開業医、歯科医、薬局、心理士など、30万人の医療従事者が使用するまでに成長しました。

世界を震撼させた新型コロナウイルスの影響もあり、Doctolibのサービスは広く普及。最寄りの予防接種センターや薬局、空き枠のある医師を探すプラットフォームとして、多くの人が利用しています。

現在では、フランス国内だけでなくドイツ、イタリアでも展開されており、国外展開にも成功。それだけでなく、管理業務を行うバックオフィスツールも開発、ローンチしており患者ごとの情報を一元管理できるツールとしてすでに多くの医者に利用されています。

多くの医師と商業的な関係を築いたことで製品開発などにも事業展開を果たし、今後も成長が期待されています。

ユニクロも顧客、産業ロボットユニコーン「Exotec」

フランス初のロボット分野でユニコーン企業となったExotec(エゾテック)。主に物流において活躍するExotecのロボットは、ユニクロやGUを展開する日本の世界的大企業ファーストリテイリングも顧客として持っています。

Exotecが提供するのは、垂直方向にも移動が可能な自律型倉庫ロボット「スカイポッド」。単純作業であった商品の取り出しなどをロボットで自動化。仕分け業務を正確かつ効率的に遂行することで、業務改善や人件費削減に大きく貢献しています。

現在では、350名の従業員数を誇り、アトランタやミュンヘン、そして東京にも拠点を構えています。

Ankorstore

アンチ・アマゾンとも評される地域に根ざしたプラットフォームAnkorstore。小規模事業者をマッチングさせるプラットフォームでは、アマゾンでは並ばないようなユニークな20万以上のブランドや生産者の商品が並んでいます。

過去2年間で急成長を遂げており、フランス、イギリス、ドイツ、オランダ、スウェーデンの5カ国に拠点、あわせて400人以上の従業員を抱え、23カ国でサービスを提供しています。

日本の現状

現在の日本は、先進国としてもっとも経済成長していない国として有名となっています。
起業家が輩出されにくい国民性と環境は、数年前のフランスも日本も同じような状況でした。しかし、現在では積極的かつ効果的なスタートアップ支援を行うフランスと、日本とで大きな差が生れています。

一方で、メルカリが、時価総額約7,000億円で上場するなど国内のスタートアップが盛り上がりつつあるのも事実。1回の資金調達で数十億円規模に上ることもしばしば見られており、今後もスタートアップへの投資額は伸びていくことが予想されています。

投資家による資金の流入と弱気投資

さらに、これまで手堅い印象のあった国内の巨大な機関投資家や海外VCからの資金流入も増えており、日本のスタートアップ市場が盛り上がりつつあります。

スタートアップが成長するために必要な要素は、ある程度充実している反面、世界的大企業が生まれる兆しは乏しい現状にあります。それは、世界を変えるようなアイディアでも短期の出口が見えない場合には、投資対象とならないことによりシード段階及びグロース段階での資金が不足していることが原因です。

日本人のみで組織構成

チームが日本人だけで構成されることも多く、世界を目指したイノベーションや市場開拓に最適な体制になっていないことも多く見られます。既存の事業モデルではなく、新たなアイディアとそれを実現する資金、人材の確保が日本のスタートアップが海外へと進出できない1番のネックとなっています。

まとめ

フランスと日本では、これまでの歴史や経済状況など変数も多いため一概に語ることはできません。一方で、数年前のフランスと現在の日本が似ていることも事実。スタートアップは日本経済にも必要な存在であり、日本発の企業がグローバル展開することで日本経済の発展にも繋がります。

実際、日本においてもフレンチテックに触発された「J-Startup」が始動し、2020年7月には フレンチテック都市圏に相当する「スタートアップ・エコシステム拠点都市」が全国の主要都市圏で認証されています。

フランスを模倣するだけでなく、日本が持つ強みを活かすことで日本からイノベーションを起こし、日本経済を盛り上げていくには政府、起業家、投資家など多くの人が協力する必要があります。

最後に。。。

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