ユージニア、私のユージニア。
丸山さんこんにちは。先日は博物ふぇすてぃばる!のブースに遊びに来てくださり、そして新刊をご購入くださりありがとうございました!
『ミュージアムグッズパスポート』vol.6はおかげさまで好評です!本記事をお読みの皆様でご興味のある方はぜひぜひ、お手にとってみてほしいです!
東京の暑さは札幌の暑さとはやはり異なり、湿気と日差しの強さ、そして建物や路面からの日差しの反射が結構来るなあなんて思ったりもしました。
その分、地下鉄が過ぎるときの突風や、商店街の風鈴の音に涼を感じたりして、涼しさを求める自分の野生のようなものが鋭敏になった気がします。
前回の丸山さんの記事、「10年前は何をしていた?」が面白くて。私も昔から独立願望が強くあった人間ですが、独立してからが本当に大変ですよね。「会社員として働けたらどんなに良かっただろう・・・」と泣く日々のなんと多いことよ。とはいえ、現在も非常勤として昼間の仕事に半分足を突っ込んでいますが、それだってちゃんと足を突っ込むことができるのにそうしないのは、やはり自分が望んでいないからなんですね。
できない理由を語る人は多い。でもそうじゃなくて、やるかやらないか。そして小さな挑戦と小さな失敗を積み重ねることでしか、「いつの間にこんなところまで来たんだ」という想いは得られないのかもしれません。
丸山さんと話をしていて「理想」の強さに驚きつつ、それは確かに私にもあるなあと考えさせられました。理想だとか夢だとか希望だとか。そういう類いのものを持っていれば、その通りにはならなくとも、思いも寄らなかった場所へ自分を連れて行ってくれる。思い通りの人生なんて、つまらないですしね。
「オチ」ってそんなに大事かな?
さて、今日の私の記事も、丸山さんと話をしていて考えたことをつらつらと述べていく回です。
最近読んだこの記事が自分の中でふと、自分の中にある問いを投げかけてきて。
https://book.asahi.com/article/14962054
それは「オチって本当に必要なんだろうか」という問いです。
この話、先日丸山さんと呑んだときにもしましたよね。起承転結の「結」。これをちゃんと提供できる記事を作りたい。「結」を用意することがおもてなしであり、エンターテイメントだ。みたいな話だったような気がします。間違っていたらごめんなさい。
そのときはふんふんと話をしていたのですが、宿に帰ってから「でも最近、私はそういう直木賞的な、オチがきちんとあるエンターテイメント小説とか全然読まないんだよな」と思い至って。
最近私が読んでいるのも芥川賞ノミネート作とか、明確がオチがなくともその芸術性を楽しめるものばかり。物語の中身も気にかけますが、表現の美しさ、文体の流麗さに惹かれることが多くなりました。自分の中で「結」が明確か、あるいはその有無についてあまり気にしなくなっていたなあと思います。日記文学を読むようになったのも大きいかもしれません。植本一子さんの『かなわない』の美しさは多くの方に勧めたい・・・!
https://amzn.to/3DAAHhe
私の大好きな恩田陸「ユージニア」が、直木賞にノミネートされながらも「核心がぼやけてる」と不評だったことを思い出します。それに対して恩田陸と豊崎由美が「ばばーん!と崖の上で犯人を追い詰めれば満足かよ!」とキレキレに怒っていたのも秀逸でした。あの選考委員の面々ではこの作品のしみじみとした情景の美しさを評価することはできんだろうと、当時高校生だった私も生意気に憤慨していたのでした。
https://amzn.to/44Q4sGH
他愛もない話の中に、普遍性は宿る
そう考えて、先ほどの記事で小説家の滝口悠生さんが“「この時間になんの意味があるんだ?」とか「あれは一体何だったろう?」みたいな瞬間をなるべく取りこぼしたくない。ないことにしたくないんです。”と述べているのも特徴的で、私もそういうものを書きたいし読みたいんだなと考えさせられました。
「そんな私の、中身のない何でも無い日常なんて誰が興味を持つんだ?」と思う瞬間がないこともない。でも自分の日常を振り返って、私は展覧会で他の鑑賞者が展示を見て会話しているのを聞くのが大好きなんですね。話しかけられるのも嬉しいし、コミュニケーションをとるのも楽しい。取るに足らない、私だけの感想の中に普遍性があると信じている節があるのかもしれません。
ただもちろん、書かれた記事として(あるいは作品として)残す際に調整をしたり、キュレーションをする工夫は必要です。上手く表現として成立させることを下半期の自分の目標にしていこうかな。
おわりに
というわけで、丸山さんに宿題。「下半期の目標はありますか?あるとしたらどんなものですか?」にします。ちょっと堅すぎるかな。もし良ければチャレンジしてみてください。
それではまた。
冷やした韃靼そば茶でしか癒やせない夏がある、大澤夏美より。
------------------------------
丸山晶崇(株式会社と)
東京都生まれ。デザインディレクター/グラフィックデザイナー。2017年に株式会社と を設立。地域の文化と本のあるお店『museum shop T』や、千葉市美術館ミュージアムショップ『BATICA』など、ショップの企画・運営もしている。アート関係の仕事や地域の仕事を進めると共に、公開制作・展示・アーティストとの共同企画など幅広い活動を続ける。「デザイナーとは職業ではなく生き方である」をモットーに、デザインを軸にしたその周りの仕事を進めている。長岡造形大学非常勤講師。
大澤夏美(ミュージアムグッズ愛好家)
1987年生まれ。札幌市立大学でメディアデザインを学ぶ。在学中に博物館学に興味を持ち、卒業制作もミュージアムグッズがテーマ。北海道大学大学院文学研究科(当時)に進学し、博物館経営論の観点からミュージアムグッズを研究し修士課程を修了。会社員を経てミュージアムグッズ愛好家としての活動を始める。現在も「博物館体験」「博物館活動」の観点から、ミュージアムグッズの役割を広めている。
momonokemuse.starfree.jp