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『次の世代へ心を伝えるために』
海に惹かれて手に取った。遠い記憶の中にある海によく似ている。複雑に入り組んだ岸壁は、おそらくリアス式海岸であろう。これは私の叔母が住む東北岩手の海なのか。タイトルが目につかず、本を裏返すと真っ白だった。あらためてタイトルを探すと、右上に小さく作者の名前と『断崖に響く』とあった。
本作の舞台となっている田野畑村は岩手県の東方一帯にある。北上山系のなだらかな起状が急激にその傾斜を変え、深い谷になって
他者のまなざし 幽玄一人旅団 清水大輔『異世界に一番近い場所 ーファンタジー系ゲーム・アニメ・ラノベのような現実の景色ー』
文・写真 大和田伸
本写真集(タイトル:「異世界に一番近い場所」)は、写真家・清水大輔が世界中を旅しながらゲームの舞台となるような場所を探して撮影した5つの”imaginary place”(「古代遺跡」、「地下神殿」、「迷宮」、「夜市」、「古都の白日夢」、「英吉利幻想」)の景観写真から構成されている。そして、「ファンタジー系ゲーム・アニメ・ラノベのような現実の景色」というサブタイトルが添えら
不穏に落ち着く ジョン・ゴセージ『THE ROMANCE INDUSTRY Venezia / Marghera 1998』
文・写真 岡崎宗志
第一印象は立派なのに地味な写真集だな、だった。タイトルも少し矛盾した感じ。腰を据えて読み直すとイタリアの環境問題への言及が軸となるシリアスな作品なのに、なぜか気持ちが落ち着いた。
ジョン・ゴセージ(1946〜)はこれまでに20以上の写真集を制作している。彼自身も写真集の蒐集家で、自ら出版社を立ち上げ作品を世に出している。現在も制作を続けており、2019年から継続して出
重なる才能 デュアン・マイケルズ『A Visit with Rene Magritte』
文・写真 assy
デュアン・マイケルズ(1932-)が近代シュルレアリスムを代表する画家、ルネ・マグリットのベルギーにある自宅を舞台に、マグリットやその家族を撮り下ろした記録を一冊にまとめた写真集。
アメリカ出身の写真家デュアン・マイケルズは、雑誌「エスクァイア」「マドモアゼル」などの商業写真のほか、1966 年にジョージイーストマンミュージアムで開催され、その後の写真家達にも影響を残した写