暴食 妻が死にました。(14)

薬を飲み始めて1か月ほど経った頃、ぼくはまた新たな自分に気が付いた。

薬が効いて意識や記憶が軽くとんでいる時間帯に、どうやら暴食をしているようなのだ。朝起きると机の上にジャンボモナカの空き袋が5つ転がっていたり、普段は10粒程度で食べるのをやめるピスタチオの殻が200粒分くらい散らかっていたり。

飲んですぐに薬の効果がでて眠りにつけるように2時間ほど前から何も食べずにいることで空腹を少し感じ始めた状態で、薬が効いてくると感情の抑制が効かずに食欲のまま目の前にあるものを食べ続けているようだった。

料理どころか電子レンジで温める事すらできなくなっていたぼくは、アイスやナッツなどの、食べるのになにも手間がかからない食べ物を大量に買い込んでいた。食欲を止める自制心が全くない状態で、目の前にすぐに口に放り込める食べ物があれば、限界まで詰め込んでしまうのだろうか。

朝起きた時に感じる胃のあたりのもたれ感と、後片付けを全くしていない凄惨な状態のダイニングテーブルは、せっかくの朝の目覚めの時間をどんよりとしたものに変えていた。

それでも、やることがあるのは気が紛れるもので。リビングの片づけから流れるように部屋の掃除をするようになり、だんだんと朝の習慣になっていった。

太り始めたおなかを見ながら、それでも朝の掃除は軽い運動をしているつもりではあったけれど、そんなものは自己満足にしかすぎず、毎晩のように高カロリーのおやつを暴食していれば必然のことが起きていた。ぼくの身体はかなりのスピードで肥満度を増していき、70㎏強だった体重はついに80kgを超えてしまっていた。

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