港屋 港

あづま路の道の果てよりも、なほ奥つ方に生ひ出でたる脳筋型文系。 Bluesky→ h…

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あづま路の道の果てよりも、なほ奥つ方に生ひ出でたる脳筋型文系。 Bluesky→ https://bsky.app/profile/leport.bsky.social booth→ https://leport.booth.pm/

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    自分で書き散らしたあれやこれやのまとめです。ごった煮です。

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    読書記録をまとめたマガジンです。所々本へのパッションが迸り気味です。暑苦しいやもしれませんが、お付き合いください。  更新は不定期です。

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    作者が本で読んだり、聞きかじったりした、100%実生活では役に立たない知識の数々をまとめた、この世で最も使えない百科事典です。 更新頻度:不定期

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    自分の創作物をまとめたマガジンです。  小説、詩、写真、イラストなどがまとまっています。

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Shirokanipe ranran pishkan/銀の滴降る降るまわりに【読書記録:知里幸惠『アイヌ神謡集』】

 先月、岩波文庫から補訂新版として『アイヌ神謡集』が出版された。1923年8月に初めて刊行されてから、100年の節目である。  以前から手元に置いておきたいと思っていた本だったので、この機会に購入した。  さほど厚みのない200頁少々の文庫本なので、早い方は一日もあれば読んでしまうだろう。そのうち四分の三ほどが『アイヌ神謡集』本編であり、見開きに横書きで、左側にローマ字表記のアイヌ語、右側に日本語訳が配置されている。  アイヌ語がさっぱりな私は右側を中心に読んでいくことにな

    • 石油王ジャハル

      「今からでも世界線が改変されて、私に石油王の幼馴染がいたことにならんかな」  友人ととりとめのない話に興じていたその日、私がそんなことを言い始めたのには理由がある。  近頃、使っているパソコンの性能の限界を感じており、新しいマシンの導入を考えているのだ。パソコンの購入には先立つものが必要となる。それも、少なからず。  故に、数多くのひとびとが夢見たであろう石油王のスポンサーを、私も夢想するに至ったのだった。 「石油王の幼馴染がいたら、きっとパソコンくらいぽんと買ってくれる

      • 名古屋旅中覚書

         私は今、名古屋にいる。  新宿から夜行バスに乗車し、揺られることおよそ6時間。名古屋駅周辺の某喫茶店にて名古屋名物モーニングをいただいている。ドリンクを頼んだら軽食が勝手についてくるだなんて、誰が最初に考えたのだろうか。惜しげもなくバターが塗られた厚切りトーストと、ゆで卵。卓上塩の容器には湿気防止のためか、乾燥した小豆が入っている。これが名古屋の洗礼か。  徹夜に近い睡眠時間に悲鳴をあげる身体を、アールグレイを燃料に叩き起こし、次の予定までの時間調整中にこの記事を書いてい

        • 昭和たぬき合戦どいなか

           以前、私の曾祖母が化物を「もんもん」と呼ぶことについて覚書を書いた(詳細はリンク参照)。  まさしく柳田国男が採集した民俗語彙と、その傾向に合致する一例であり、そんなものが令和の世までも生き残っている事実は、存外我々の身近にある不思議な「過去」を思い起こさせてくれる。  そんな感傷に浸りながら記事を書き終えた私は、ふと、別の事を思い出した。  よく考えれば我が曾祖母は、隣人が狸に化かされていた話さえ、私にしてくれたのである。しかも、昔語りの伝え聞きなどではなく、「隣家の

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        Shirokanipe ranran pishkan/銀の滴降る降るまわりに【読書記録:知里幸惠『アイヌ神謡集』】

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          マヤ文字覚書

           メソアメリカ、今日でいうメキシコ南東部やグアテマラを含むマヤ地域で栄えた、マヤ文明。マヤ暦をもち、高度な建築技術と特異な文化で栄えたことが知られている。  マヤ文明は生贄の風習でもって知られ、いささかエキセントリックな遺構・遺物を残したことでも有名だ。セノーテと呼ばれる泉の周辺で繁栄した彼らは、水源であり神聖な場所であったセノーテに、絢爛な装いの人身御供を捧げた。  近年では水中考古学の発展により、セノーテの底部の調査が行われ、数百年前の人身御供と思しき人骨も調査されてい

          マヤ文字覚書

          おばけの声と名前【読書記録:柳田國男『妖怪談義』】

           いわゆる古典をつまみ食いで済ませてしまった不詳私だが、反省を込めてここ暫くは古典的名著の繙読に勤しんでいる。  新年度に入って生活リズムが変わり、今まではなかった2時間の電車通勤をするようになって、読書時間がぐんと増えたのは僥倖であった。ここぞとばかりに貪るように、ここ数年ぶんの積読を消費中だ。  その積読のひとつが、今回取り上げる柳田國男『妖怪談義』である。『古典』というには変化球気味だが、日本民俗学の黎明期を考える上で避けられない古典であることは間違いない。  私が

          おばけの声と名前【読書記録:柳田國男『妖怪談義』】

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          2024年、辰年

          2024年、辰年

          宙ぶらりんの含羞――或いは自己診断という羞恥心との戦いについて

           自動車免許をお持ちの方ならば、運転適性検査を受けたことがおありだろう。免許がなくても、就職活動に伴う自己診断などで、あるいは単なる暇潰しに、似たようなことをなさった方もいるかもしれない。  私も例に漏れず、かなり詳細な設問に答え、機械的に己の性質を分析されるという、腑分けでもされているような仕打ちを幾度も乗りきっている。  その度に私は、傍目にはわからないだろうが、ひとり鉛筆を片手に葛藤し、恥じらいを覚え、憤慨し、妥協している。  本記事は今まで私が、「自己診断」を受けな

          宙ぶらりんの含羞――或いは自己診断という羞恥心との戦いについて

          不信心者と戒名

           昨年、母方の大叔父が亡くなった。  私から見るとだいぶ遠縁になる方なので、ご時世もあって葬儀には行かなかったのだが、母親や祖父母は参列した。  大叔父の奥様と私の祖母は、お嫁さんと小姑の関係に当たる。嫁姑問題の亜種として、不仲になりがちな立ち位置のふたりなのだが、妙に共通項が多く仲がとても良い。  大叔父が亡くなってから、葬儀が行われるまで、諸事情があって二週間ほどかかったのだが、その間にも奥様は私の祖父母宅を訪れ、あれこれと葬儀に関する愚痴を零していたらしい。主に、葬

          不信心者と戒名

          次はこんな絵を描きたい

          次はこんな絵を描きたい

          蔵書印で遊ぼう

           築ウン十年の安借間をねぐらとする筆者なのだが、近頃蔵書の増加が著しく、人間の生息域を侵犯するまでに至っている。  会う人ごとに力説しているのだが、この増え方は異常としか言いようがない。間違いなく、私の家の本は繁殖している。私の知らないところで子供を産んでいるに違いないのだ。そうでなければ、部屋の主である私が寝床と机回り以外を生活に使えていない理由が説明できない。  ……そんなことを言っても、すべての本に買った覚えがあるのだから悩ましい。いや、私の記憶すら改変されている可能

          蔵書印で遊ぼう

          長編伝奇小説を読もう【読書記録:駒田信二訳『水滸伝(一)』

           ひょんなことから、講談社文庫版の『水滸伝』全八巻を譲り受けた。『封神演義』『三国志演義』『西遊記』など、中国で生まれた著名な長編小説は好んで読んできたのだが、『水滸伝』は未読であったので、楽しんで読み始めた。  なお、私が今回読んでいるものは1984年に初版が出たもので、少々読みにくい部分もある。これはこれで古典を読んでいる感覚があって乙なものだが、2017年に新訳版が講談社学術文庫より刊行されているようなので、今から読まれる方はこちらのほうがとっつきやすいかもしれない。

          長編伝奇小説を読もう【読書記録:駒田信二訳『水滸伝(一)』

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          らくがき

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          【詩】はじまりの夜【歌詞】

          夜半、遠くに不如帰 街角は月明りに凍え 春の修羅さえ大気に溶けて 瞬きほどの暗闇に憩う 夜半、近くに仏法僧 窓辺は星明りを帯びて ぬすびとすら近寄らぬ場所に 世界の秘密を置いてきた 夜をのみほせ あまねくひとしく覆いくる夜を 太陽の光線に眩んで さがしていた答えを忘れる前に 夜を貪れ 無窮の彼方、インドラの網の果て 青い孔雀が虚空を駆けて はじまりの秘技が隠される前に 夜半、路傍に仏法僧 ひとびとは夜のしじまに怯え 透明な夜明けとともに来る 南の風を待ちわびる 夜半

          【詩】はじまりの夜【歌詞】