しあわせの音を さがそう
私には、苦手な音がたくさんある。本当にたくさん。
つい耳を塞ぎたくなる音が、私の生きる世界にはいつも溢れている。
ドアのバタン、食器のガシャン。机の上にコップを置くときは、できれば、もっと、そっと、置いてほしい。
かみなり、サイレン、大きなバイクのブオーン。
ひそひそ声、罵声、ため息。
電車が迫りくる時と目の前を通り過ぎる時の音。
他にも、きっと、まだあるかな。
私には、好きな音がある。それは、ショートケーキの下に敷かれた銀紙が織りなす音。
1ピースにカットされた状態で売られているショートケーキを買って帰って、それを箱から取り出す時。片手で三角形の方を摘んで取り出そうとすると、その銀紙は音を奏でる。その銀紙のことをボタンホイルと呼ぶらしい。気になって調べた。
環境の為なのかな、今では銀紙を見かけることも減ってきた気がする。もちろん、環境優先にしてほしいなと思うけれど、ボタンホイルに包まれたケーキを見かけると、心がほくほくしてしまう。
文字で伝えられるかな。クシャでも、クシュでも、カシャでも、カシュでも、カサでもないような。
でもどうしても文字で伝えたくて、妹にも聞いてみた。
カシャでもカチャでもない。だから、間をとってパキャかな。ってアイデアが出てきたけれど、うーん。それは違うかなと思った。聞いておいてごめんね。でも、さすが。新しい感性がおもしろい。
悩み抜いた末、おそらくカとクの間、サとシャの間、それらを組み合わせたような音かなと思う。
その音がなんとも心地よいと同時に、しずかな高揚感を与えてくれる。
きっと、その音にはケーキがつきものだと分かっているからなんだけれども。それでも、好きな音であることには変わりない。
私には、好きな風景がたくさんある。
雲ひとつない青い空、水彩画のような雲が広がる空、ほぼ平行に伸びていく2本の飛行機雲、パン屋さんに剥き出しで並べられたパンたち、冬の池に丸まって浮かぶ鴨たち、ほわっと咲いた桜並木、そよそよ揺れる木々の影、石畳みの街並み、ふたつの色で織りなされる空、満天の星空、、なんか空ばっかりだな。もう、キリがない。
私には、好きな香りがある。
冬の朝の匂い、春のはじまりの匂い、焼きたてパンの小麦の香り、蝋梅の香り、ピオニーの香り、コーヒーの焙煎の香り、ケーキ屋さんの店内に漂うあまい香り、お出汁、お気に入りのハンドクリーム、キャンプの朝の匂い、誰かのお家から漂ってくる夕ご飯支度中のおいしい匂い、とかとか。
私の生きる世界には、私の好きなものがいつも溢れている。
だけど、好きな音だけは、ショートケーキの銀紙以外、あまり浮かんでこなくって。音楽は大好きなのだけれど。歌のない生活は私には想像つかないのだけれど。好きな音って、なんだろう。
と書いていたら、たった今、焚き火のパチパチも好きだなって、思い出した。
もっと、耳から、音を通して、しあわせになれたら、いいかも。
みなさんはどんな音が好きなのか、あなたにとってしあわせの音ってどんな音なのか、興味がある。聞いてみたい。
もし良かったら、聞かせてください。音だけじゃなくても。あなたの心がほくほくしたり、穏やかになったり、きゅんとしたり、懐かしくなったり、しあわせで泣きたくなったり、そういうもの。聞かせてください。
しあわせの音のヒントを、分けてもらえたら、嬉しいです。
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