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ひとりごと

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読まずに売った本の話

わたしの実家の本棚には、池波正太郎などの歴史小説が溜まっていた。
溜まっていたと過去形にしたのは、9冊のうち4冊ほどしか読めなかったから。

大学卒業時に、まとめて売ってしまった。
厳密には、自分で売った覚えがないので、
恐らく家族に要否を聞かれて
「もう、必要ない」と答えてしまった。

「きっと、読みたくなったらまた買うだろう」という表向きの理由で、歴史小説たちを手放した。

でも、読まないだけ

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独り言「萩原朔太郎展 感想」

独り言「萩原朔太郎展 感想」

世田谷文学館の萩原朔太郎展。
言葉の空間が、想像以上に心地良くて。
孤独の位置付けをした個人の憂いを感じられる素敵な空間でした。孤独でありながら、もはや孤独ではない。それを身に沁みて感じられた。
私の贔屓目もあるかもしれませんが、それにしたって、展示の仕方が素晴らしすぎる。空間を工夫した、本を読み進めるような展示。そして、言葉を様々に遊ぶ企画。楽しすぎる…!!

 表象の裏側の主観の世界に夢を見る

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「からんころん」

痺れた右手だけが、今夜も私に触れている。

感覚を断絶した他者がそばに居るだけで、もう十分なのだ。

余分に嵩張る錠剤が、
空いた小瓶を満たしていく。

からんころんの音だけで、もう十分なのだ。

私という存在を、私が認識しなくとも、
そこに朽ち果てる物語が私の耳をくすぐれば、
もう十分なのだ。

もう十分なのに、
落ちる場所が見つからない。
落ちていい場所が見つからない。

だから、今日も呆れる

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「ソメイヨシノ」ひとりごと

 ソメイヨシノが怖いのは、多分、綺麗であることに違和感を覚えない景色、空気感への忌避。

 花の大群が空を隠し、大地を丸呑みする。
 
 近づけば、唸る幹に人は巻き込まれてしまうのではないか。巻き込まれた人が、潰された下半身の苦痛から逃れようと腕を伸ばし、助けを乞う。

 吉野の桜が色づいて道を浮かべるのには表情があった。ぼんやりとした表情があった。
 ソメイヨシノ。どうか人のために咲いてくれるな

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夢の話(ひとりごと)

冷たいフローリングの上で
横になって涼むきみがいた。
きみに気づいて欲しくて、
きみの鼻先に顔を当てるように
私は寝転んだ。

いつもの息に触れて、
目を閉じて、
きみが私に反応してにおいを嗅ぐ音。
一瞬にして懐かしさを覚えた。

懐かしさが仇となり、
空間が、時間が、間も無く
崩壊してしまいそうな不安が過ぎる。

すぐにでもきみの姿を
永遠に収めるべく
目を開けば、
そこは既に現であった。

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