「からんころん」


痺れた右手だけが、今夜も私に触れている。

感覚を断絶した他者がそばに居るだけで、もう十分なのだ。

余分に嵩張る錠剤が、
空いた小瓶を満たしていく。

からんころんの音だけで、もう十分なのだ。

私という存在を、私が認識しなくとも、
そこに朽ち果てる物語が私の耳をくすぐれば、
もう十分なのだ。

もう十分なのに、
落ちる場所が見つからない。
落ちていい場所が見つからない。

だから、今日も呆れるほどに満ち満ちている。
もう十分だというのに。

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