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圧倒的な虚無

2022年12月31日。とにかくヘトヘトだった。

30日夜から31日未明にかけて随分お酒を飲んだが、二日酔いではなく、たんに疲労と眠気で吐きそうになる朝は初めてだった。電車に乗って作業場を目指す。自宅ではなくて作業場を目指すのは、作業場のほうがいくらか都心に近いためである。

できるだけ早く横になる必要があった。手には500mLペットボトル。気休めに水を飲もうとボトルに口をつけたらすごいめまいがした。


それからずっと眠っていた。起きたのは18時くらいだった(と記憶している)。

シャワーを浴びると、お腹が減っていたので茶碗一杯の白米を食べた。テレビを点けると画面の右上に「もうすぐ紅白」って書かれていた。

もうすぐ紅白か……

それに対してなんら面白いレスポンスもアイロニーも思い浮かばないまま、僕はテレビを消してまたベッドに戻った。いちおう年越しは起床した状態で迎えようとして23時にアラームをかける。自分のそういうところがたまに愛おしい。なんて馬鹿馬鹿しいんだ、って思う。でもそのアラームは鳴らなかった。鳴ったけれど、気づかないくらい深く眠っていたのだろうか。

結局、僕が目を覚ましたのは2023年1月5日午前2時、それくらいの時間だった。どれだけ長く眠っていたのだろう。ここ数週間、いくら睡眠不足だったとはいえ、これだけ長い時間眠りこけるとは……

半分死んでいたんじゃないか。死んでもいい。って思っていた。『斗起夫』のゲネプロが終わったあと。他人からの評価はともかく、僕は、僕が納得のいくものをつくれた、と思った。これだけのものをつくれたのならもう死んでもいい、と思っていた。

こんな感覚はひさびさだった。こんな感覚になれる演劇をつくることができたのは(これまで何作もつくってきたけれど)片手で数えられるくらいしかない。今作『斗起夫』はとくに自分を犠牲にして創作を進めていた。脚本においても。演出においても。

だから、もう死んでもいい、と思ってしまった。べつに、死にたいわけじゃない。でも、もしも自分で自分の命を絶つ、絶ってしまうようなことがあるとしたら、こういう心境に漂着する僕のみたいな人もいるのだろうな、と思った。

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