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セーラー服を着た男

遡ること平成90年代頃、私が住む街ではセーラー服を着た某美少女アニメキャラになりきった男が街にいると有名になった。

なんでもその男を見ると何かが起こると噂になり、とうとう教師も話に加わるほどになっていったのです。

都市伝説が好きな方は、この噂をご存知でしょうか。

噂話

平成の90年代、私は当時小学生でした。
小学校低学年頃のクラスの女子といえばウワサ話が好きで、今日はまた何の話をしているのだろうと思ったらこんな話でした。

「最近この辺で、アニメキャラになりきったセーラー服を着た男が出るらしい。その男と目が合うと『殺される』と言われているから、絶対目を合わせちゃいけないよ」。

とのことだった。

その頃はまだ男性が女性の服を着るということにイメージが湧かず、
「ふーん」。といったところだったが、内心「殺される」という言葉にはそれなりに恐怖心を持った。


学校内に広がる

クラスで友達が少し話していた程度であり、このような噂話なんてすぐに消えると思っていたのに、1ヵ月経っても2ヵ月経ってもまだセーラー服を着た男の話は流れていた。

クラスの女の子はそのことについて教師にまで話したのか、教師も話に加わり彼女たちの話を熱心に聞いてあげている。

規模が拡大し学年単位で噂は広まるものの、
実際には誰もセーラー服を着た男を見たことが無いらしい。

まだ誰も見たことがない嘘の話。
そろそろ別の話題に変えてほしいと思うほど、私は飽きてしまっていた。


1年後

約一年ほど経った頃のある日、私は一人で外へ出かけていた。
何をしに出かけたのかは、はっきりとは覚えていない。

家からすぐ近く、踏切り前で電車待ちをしていた時に向かいにいる異様な人間が視界に入った。

セーラー服を着た男がいたのである。

身長は180cmを超えるほど高く、某美少女アニメキャラクターのセーラー服を着て、おなじみの金髪のツインテールのウィッグを被っている。
プリーツのミニスカートを履いており、身体は異様に細く不気味さが漂っていた。
横顔を薄っすらと一瞬しか見ていないが、髭を剃った青い口周りが見えた。

逃げなければ!

と本能的に思い、今来た道を全速力で走った。
運動が嫌いな私としては人生で初めてではないかと思うほどの速さで走り、無我夢中で家まで戻ったのを覚えている。

逃げることしか頭に無かったのと、後ろから追いかけて来るかもしれないという恐怖で、家に着いて自分の顔を見たら真っ青になっていた。

「髭のような顔は少し見たけれど、目は合わせていない...」。と自分に言い聞かせた。
恐怖心が勝ってしまい、当時は友達にも見たことを話せなかった。

大人からしてみれば何ら小さな出来事に思えるかもしれないけれど、小学生女児当時の出来事としては、怖かった話のひとつになった。


母親の職場

令和二年。
母親が職場で聞いてきた話があると、20年ぶりにあの話題が上った。

「私の職場の店で、某美少女アニメキャラクターのセーラー服を着た男を同僚が見かけたらしいよ」。

衝撃が走った。
今この歳で思ったことは「やはりあの男は実在していた」。ということであった。
なんでも当時はあまりの恐怖心から、自分の思い込みだったのではとさえ思ったから。

母親の職場の同僚の間では、「あの人昔からこの辺にいるよね」。とのことらしい。
やはり大人の間でもあの噂は間違いなく広まっていたのだ。


目を合わせる

母親の職場で話題に上った約一週間後、いよいよその時はやってきた。

母親がいる時間帯の店。
母親が会計をするレジカウンターに、セーラー服を着た男はやってきた。

いわゆる、
目を合わせて、お会計をしたそうだ。

母親も緊張してしまい、いつもよりも最低限のことしか喋ることができず、口数が減ってしまったらしい。

お会計の際には個人情報がわかるカードを提示したが、はっきりと男性の名前が記されていたそうです。

地元で有名だったあの都市伝説は、令和になるとあっけなく消え去りました。


その後

この件ついて仕事から帰ってきた母親は「ただならぬ恐怖」。と話していましたが、私も恐怖しかありません。
小学生女児が聞いたら、「お母さんが目を合わせちゃった!」と言って号泣していたのではないかと思います。

ちょっと話を壮大にしてしまいましたが、もちろん目を合わせた母親は今も元気です。

その後もセーラー服を着た男が店に出入りしている姿をよく見かけるそうですが
「背が非常に高く、異様に細い。髭剃り跡が目立つ顔。年齢不詳。セーラー服の日とは別に、ミニスカートを履いてくる日もある」。とのこと。
20年前とまったく同じではありませんか。

今も変わらずあのキャラクターやアニメを愛しているのだと思うと胸が熱くなるものですが、今回ばかりは長年感じてきたあの恐怖の思い出があるので、そうもいきません。

今この歳になっても小学生の頃に逃げた記憶があるので、想像しただけで怖いです。


セーラー服男とは関係無い話ですが、今思えば小学生女児でありながら既に一人で出かける傾向があったことが、私自身の問題として少々引っかかるところがありました。

今の時代であれば女児が事件に巻き込まれるニュースが流れることも多いので、小さな子どもが一人で出かける機会は減っているのではないかと思います。

都市伝説といえばつくり話がほとんどであると思っていたのですが、この件については実在する人物であったことに非常に驚かされた出来事でした。


世に出ている都市伝説も、案外実在する話も多いものなのかもしれません。




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