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【第3章】猫に飼われたヒト 教育実習

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『猫に飼われたヒト』第3章をここからまとめて読むことができます。あらすじ→小学校の先生になるため、教育実習に挑むアド。そこでは子どもたちにまで人間への偏見が広まっていた。なんとか…
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#教育実習

【創作小説】猫に飼われたヒト 第28回 授業を終えて

【創作小説】猫に飼われたヒト 第28回 授業を終えて

「初授業はどうだった?」

小学校の廊下。初授業を終えほっと胸を撫で下ろすアドに、レックスが尋ねた。

アドは苦笑いをした。

「途中、アクシデントが起きてしまってどうなるかと思いましたけど…先生がカバーをしてくれて助かりました」

「ああ…あれは予想外だった。すまなかった。せっかく教案通りにいっていたのにな」

「いえ!それはまあ、そうですけど…」

「だが、授業が必ずしも教案通りに行くわけでは

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【創作小説】猫に飼われたヒト 第25回 無理なお願い

【創作小説】猫に飼われたヒト 第25回 無理なお願い

「この子を、私の初授業に参加させてくれませんか?!」

「「え?!」」

アドは悲しそうな、しかし決意のこもった表情で話し始めた。

「私、ずっと授業に何か足りないなって思ってたんです。人間は怖くないよってことを伝えたいのに、いまいち説得力がない…でもこの子を子猫たちに実際に見て貰えば、人間が安全な生き物だって伝わるはずです!」

レックスは真面目な表情で語った。

「…ダメだ。いきなり子猫たちに

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【創作小説】猫に飼われたヒト 第24回 新たな出会い

【創作小説】猫に飼われたヒト 第24回 新たな出会い

その日の夕方。

アドはふらふらになりながら大学へ向かった。
教育実習の最終日に控えている、初授業の練習をするためだ。

レックスが教室で学生の席に座って言った。
「では、模擬授業を始めようか」

アドは緊張の面持ちで背筋を正した。
「よろしくお願いします…!」

右手に指導案を持ち、アドは大きく息を吸った。

「…では、授業を始めます!今日は、人間の言葉について学びましょう。私たちの会話に欠かせ

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【創作小説】猫に飼われたヒト 第23回 教育実習

【創作小説】猫に飼われたヒト 第23回 教育実習

市立アニマーリア東小学校。

アドが教室の戸を開ける。
緊張しつつも教壇の前に立った。

「今日からこのクラスで教育実習をすることになった、アドです!精一杯頑張りますので、よろしくお願いします!」

黒いスーツをまとい自己紹介を終えたアドに、小学生の子猫たちからの拍手が送られる。

担任の先生も拍手をした。

「はい。ありがとうアド先生。アド先生は、アニマーリア大学から来た人間学部の先生です。とっ

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