Tsutomu Saito

京都芸術大学大学院 社会人向けコースで現代アートを研究。 外資系ソフトウェア企業勤務、…

Tsutomu Saito

京都芸術大学大学院 社会人向けコースで現代アートを研究。 外資系ソフトウェア企業勤務、現代アート研究者(MFA)、現代アートギャラリー aaploit を主催。 https://aaploit.com https://note.com/aaploit

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    コンテンポラリーアート、現代写真の研究者たちによる若手作家の作品、展覧会を紹介するレビューマガジンです。※執筆者随時募集 執筆者/ ・斉藤勉 京都芸術大学 大学院修士課程卒(MFA)、aaploit代表 ・中澤賢 京都芸術大学 大学院修士課程卒(MFA)、PHOTO GALLLERY FLOW NAGOYA代表 ・北桂樹 京都芸術大学 大学院博士課程卒(PhD)、現代写真研究者

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    現代アートを学び始めた外資系IT企業のプリセールス。 難解な現代アートを探求する学びの記録。

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    アートとファッション・アパレル・ビジネスの関係性について探る。

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最近の記事

《月白の城》来夢

創作人形作家の三人展が開催されている。ひびきさんとKahoさんと来夢さんの三人展であり、来夢さんは三点の創作人形を提示していた。そのうちの一点は東京造形大学の卒展で見た作品だった。ひびきさんの作品も卒展で見た。 東京造形大学で見たときのことを思い出す。2023年のZOKEI展では、彫刻棟の一番奥のスペースに座っていた《月白の城》を見たとき、他の彫刻とは明らかに違う凛とした空気を感じた。 東京造形大学の彫刻棟はバスの停車場からみて一番奥にある。いくつかの倉庫のようなアトリエ

    • 《偶像》片口南

      五美大展で女子美術大学の片口南さんの作品を見た。片口さんの作品を初めて見たのは第11回前田寛治大賞展「写実表現の現在(いま)」だった。日本橋高島屋の美術画廊で提示されていた作品は五角形の変形キャンバスに描かれた静物画だった。 五美大展で提示されていた作品は、アーチ型キャンバスが三連結されており、外側に木でフレームが施されている。連結されたアーチ型キャンバスの形、それを取り囲むフレーム、キリスト教絵画の祭壇画を参照していると思われるが、モチーフはアンティークのような静物である

      • 《My Soul Train》小林由

        東北芸術工科大学の東京選抜展で小林由さんの《My Soul Train》は、ダイナミズムがあった。 当初はキャンバスを木枠からも拡張させたと捉えていたが、キャンバスは縫い合わされている。 ストリートのような空気感、キャンバスを構築しているというよりも、ストリートで遊ぶうちに、この形になった。というような印象を受けた。 グラフィティは、大学院の友人の研究テーマだった。 小林さんの作品は、ヒップホップのサンプリングから絵画制作をし、それを裁断して、ミシンでソーイングしてい

        • 《虚の秘密は私のみぞ知る》石黒光

          東北芸工大の東京選抜展、石黒光さんの作品は出口近くに提示されていた。大きな画面、絵画ではあるが、その大きさから壁のように感じる。 画面の右下にある格子は土壁の中の小舞を想起させ、すると画面に前景と後景が立ち上がる。画面中央から左手は穴と見立てることになるだろう。すると、はがれた土壁とは別次元の穴、そこに浮かぶ二つの顔、穴の中央下寄りの一段暗い黒、様々なレイヤーが立ち上がってくる。 浮かび上がる二つの顔は生と死を暗喩しているのだろうか。開いた眼と白い顔、閉じた眼と薄暗い顔、閉

        《月白の城》来夢

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          東北芸術工科大学美術科東京選抜展の萩中茉優の展示

          萩中茉優さんの展示は球体関節人形と版画作品を提示していた。 二体の球体関節人形が木の椅子に座って向き合っている。頭部は鳥であり、奥の人形は足が鳥のようにかぎ爪がある。問答をしているかのような向き合い方、人型をしているが、その頭部から人とは遠い存在に見えてしまう。しかしながら、骨格標本のような白色から、見ているうちに人形と対峙している際の距離感がバグってしまう。 ステートメントには、思考の際に一人二役で自問自答をするとあった。この人形は、討論の際にでてきたモノを現実に取り出

          東北芸術工科大学美術科東京選抜展の萩中茉優の展示

          《少女信仰》鹿野真亜朱

          東北芸工大学の東京選抜展、何年前から見ているだろうか。恐らく2019年から見ていると思うが、記憶が定かではない。今年こそは山形に見に行こうと思っていたが日程の関係で無理だった。 鹿野真亜朱さんは、版画を提示していた。 パネルにシルクスクリーン、細い線による書き込み、荘厳な雰囲気を漂わせているのはミューグランドで下地を作っているからだろう。画面に盛り込まれた様々な要素、キリスト教における宗教画の物語を示している。 少女信仰とは、パパ活、トー横キッズを引き合いに出して推しの

          《少女信仰》鹿野真亜朱

          《Observing Variation in Sliced Loin Hams》森田明日香

          IAMAS の修了展は昨年と比べると規模が小さい感じがした。ソフトピアジャパンセンタービルとワークショップ24と、二つのビルにわたって展示されていた。 森田明日香さんの修士研究「差異の観測」は、日常の中にある同一に見えるものの差異を示すもの。ロースハムの差異について着目したインスタレーションを提示していた。 円のスクリーンに映し出される何かの表面、氷床のようにも見えるが、大きさと形から、天体観測だろうかと推定する。ただ、円に映し出されたテクスチャは、フリッカリングしており

          《Observing Variation in Sliced Loin Hams》森田明日香

          名古屋芸術大学の村瀬ひよりの展示

          名古屋芸術大学の西キャンパスは、フラットな敷地なので歩きやすい。油画が展示されるZ棟は、飛び地になっていて、道路を渡っていく。それまで見ていた展示とは気持ちを切り替えて作品と向き合うことができる。 そんなZ棟で最初に見た村瀬ひよりさんの作品、「さかいめ」と書かれたステートメントがあったが、展示空間は、村瀬さんの様々な作品によって構成されており、さながらポートフォリオのようであった。 モノクロで描かれた作品は木炭で描かれている。《さかいめ》は、自身の日常と日本の他の地域や、

          名古屋芸術大学の村瀬ひよりの展示

          《陳列》森崎萌黄

          名古屋芸術大学の卒業・修了制作展はスタンプラリーを実施していた。スタンプを集めるための順路は、そのまま展示を見る順路として重宝した。 森崎萌黄さんの《陳列》は展示スペースの部屋全体にシルクスクリーンの肉が文字通り陳列されていた。 印刷された肉、形のバリエーションはいくつかあるが、版画であり、複製されている肉である。すぐさま、3Dプリント肉に思考が飛ぶ。工業製品として工場で肉が生産される。よい霜降り具合をプリントすることで、食味もよくなる。原材料は大豆などの代替肉や、培養し

          《陳列》森崎萌黄

          《目覚めの挨拶》平石はるな

          京都市立芸術大学の作品展、平石はるなさんの作品が圧巻だった。 大きな画面にピンクの花と鳥、手前にいるのはオカメインコとセキセイインコだろうか。インコと花が同化し密度のある画面下部から視線を上げていくと空に抜ける。青と緑のセキセイインコが相まって飛び、青いインコの背景の雲によって視線の誘導がなされていく。 何かの名画を参照しているだろうと思ったが、何だろうか。かなり昔に見たジョルジュ・ロシュグロスの《花の騎士》を連想したが、果たしてそうだろうか。アトリビュートで読み解こうと

          《目覚めの挨拶》平石はるな

          《echo-typing》遠藤梨夏

          佐賀大学の卒業・修了制作の期間にあわせてSAGA ART WEEKが開催されている。佐賀市内のアートスポットが連携して、様々な展示やイベントを提示する企画、歩いて回るには距離があるのでレンタル自転車などを活用するといいと思う。 旧枝梅酒造で展示されていた佐賀大学修士一年生のグループ展「ザ・9」を見にきた。この世代は、CAF賞優秀賞、Idemitsu Art Award 2023(旧シェル美術賞)入選、FACE2024のグランプリなどを受賞している。結束力のある学年らしい。遠

          《echo-typing》遠藤梨夏

          《美少女戦士私》岩崎佑香

          佐賀大学は有田にもキャンパスがあり、毎年の卒業制作ではセラミックの作品が多く展示されている。他の大学でも工芸系でセラミックの展示があるが、有田焼の窯元にキャンパスを構えているからだろうか、レベルの高さに毎年楽しみにしている。 岩崎佑香さんは有田セラミックだけれども、巨大なサイの編み物を提示していた。テキスタイルではないかと勘違いして、キャプションを二度見してしまった。 大きな胴体のボーダー、足の付け根には花のようなモチーフがあり、足のボーダーの向きの変化を自然に接続してい

          《美少女戦士私》岩崎佑香

          《無題》埜口さくら

          佐賀大学の日本画は面白い。近藤恵介さんに依る所が大きいと思う。昨年は武蔵美市谷キャンパスのαMや、LOKO GALLERYなど東京でも展示していた。埜口さくらさんは大学院・日本画とあった。 佐賀大学の美術館、1階から2階への吹き抜け空間に展示されている埜口さんの無題、遠くから作品を認めたときには、モノクロ写真だと思った。 一行に八つの正方形が並ぶ。墨でグリッドを描いている。いや結果としてグリッドが浮かび上がるということで、どちらが主なのか曖昧にさせているように見える。 墨

          《無題》埜口さくら

          《無題》坂本紗菜

          佐賀大学の卒業・修了制作展、坂本紗菜さんの作品はひときわ目を引いた。 カオスであるが、きちんと壁に陳列されており、矛盾を感じさせる。 これは何か? 陳列されているような展示はお店を連想するし、現に値札らしきものも掲出されている。 どうやらグミの販売棚を表現しているのでしょう。マテリアルはミクスとメディアとだけ記載されており、何でできているのかは想像するしかない。まさか、本当にグミを作っているとは思えない。 人の顔(口と鼻の間に目がある)のパッケージから溢れているグミは

          《無題》坂本紗菜

          《月桂》, 松延怜亜

          佐賀大学の卒業・修了制作展を見に来た。京都から始まった卒展巡りも佐賀で一段落になる。佐賀大学との縁は4年にもなり、キャンパスも(芸術系に限れば)どこに何があるのかも把握できた。 松延怜亜さんの作品《月桂》は、暗転したギャラリースペースで展示されていた。プロジェクターで映像を投影するが、プロジェクターの前には根巻き苗の金木犀が置かれている。金木犀に金木犀の映像を投影している。風に揺れる金木犀、手前にある金木犀もそうだが、花はなく匂いはしない。これが何の木なのか、最初にステート

          《月桂》, 松延怜亜

          《君ありて幸せ》, 川口紅葉

          広島市立大学はコンパクトに卒業・修了制作展を見ることができる。やや迷路のようであるが、友人が案内してくれたので助かった。 川口紅葉さんの《君ありて幸せ》が展示されているアトリエスペースに入ると、土の匂いがした。土を作品に用いていることがすぐに分かった。 本物の土を使っているようだが、花は一目で造花と分かる。そこに赤い点が見え、奥の方は白い花が赤に染まっている。 この造花はゼラニウムであり、白のゼラニウムの花言葉は「あなたの愛を信じない」という。そこに、てんとう虫が集まり

          《君ありて幸せ》, 川口紅葉