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ガイドを辞めた我らがリーダー🇰🇭【スーパースターを目指すカンボジアの若者たち】第6話


🇰🇭コン

しつこいですが、ケンがカンボジアに設立した芸能事務所には、たくさんの「スーパースターになりたい」若者たちが集まって来たものの、ケンの昭和な厳しいトレーニングについていける子は少なくて、どんどん辞めていきました。

定着したメンバーは、生意気娘のタタと、爆裂オネェのソヒャップだけ。

そこでケンたちは自ら、スーパースターの原石はいねぇか~!と、街中にハンティングへ出向くことに。

「そういえば、北の方にダンスを練習している男の子たちがいるって聞いたことあるよ!」
と、タタ。
みんなでバイクを走らせ、その場所に向かいました。

「はぁ~!あいあいあいあい~♪」

レナは、謎の歌を歌い続けるソヒャップのバイクに相乗り。

「あのー…随分、みんなから遅れをとってるけど、道はわかるんでしょうね?」

「大丈夫よ、レナさん。アタシに任せて。・・・あっ!ホットガイ発見よッ!!

「ちょっと!危ない危ない!前見て運転して!」

レナは移動中ずっと、ソヒャップの頭を後ろからホールドよ。

一同が辿り着いたのは、古びた建物の中の古びた鏡の前で、ダンスを練習する青年たちでした。

青年たちのリーダーの名前は、コン

「初めまして。君たちはいつもここでダンスの練習をしているの?」

「うん、そうだよ。ダンスの練習をして、ビデオで撮ったりしてるんだ!」

自分たちで好きなことを練習し追求しているその姿に感動したケンは、彼らをスカウトすることにしました。

「君たち、スーパースターになりたくない?
良かったらウチの事務所でダンスや歌なんかも練習して、デビューを目指そうよ!」

「うん!行く!デビューする!」

コンは目をキラキラさせて、あっさり、迷うことなく事務所に所属することを決めました。

コンは中国語が堪能で、中国人のツアーガイドが彼の本業でした。
アンコールワットがあるカンボジアの街・シェムリアップでは、ツアーガイドは華型職業です。
中国人観光客の方々は羽振りが良いらしく、コンはチップとして最新型のiPhoneをもらったりしてたんですよ!

コンは幼い頃に事故に遭い、背中の骨が大きく湾曲しています。そのためびっこを引いて歩いていましたが、ダンスとなると水を得た魚のように、鳥のように、フロアを舞うのでした。

コンのお母さんは、コンがダンスをすることに反対でした。
コンの身体と、コンの将来が心配だからです。ダンスや歌では、食っていけないと。
コンのお母さんは、コンがツアーガイドに専念することを望んでいました。

カンボジアの若者たちは、お母さんが大好きです。
コンも、世界で一番に美しいのはお母さんだと言っていたし、スマホの待ち受け画面もお母さん。
そんな大好きなお母さんの反対を押し切って、コンはツアーガイドを辞め、スーパースターになる道のりを選びました。

どんな苦しいトレーニングにもへこたれない姿がその本気を表現するかのよう。
トレーニングの途中で手を抜いてしまう他の子たちを厳しく叱責したり、みんなでトレーニングをやりきった時には笑顔でハイタッチをしたり。

コンは事務所に所属するメンバーたちに慕われる良きリーダーとなって、自主練、トレーニングを引っ張っていくことになりました。

頼もしいリーダーの出現に、ケンもレナもほんの少しだけ、前進したような気持ちになったのでした。


チームリーダーのコン


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