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シャーペンの恋

ねぇねぇ、知ってる?恋愛のおまじない!シャーペンを好きな人の名前の数だけノックするでしょ。そして、ハートを書いて、芯がなくなる最後の最後まで、綺麗に塗り潰せたら両想いになれるんだって!

そんな話を聞いた日。授業開始のチャイムと同時にシャーペンを7回ノックする。少しでも力を入れると、折れてしまう。そのドキドキ感が心地よかった。

シャーペンの芯が折れるような恋がしたい、のに、
折れるその一瞬、息が止まって、刹那―――。
何度も何度もシャーペンをノックしては、折れないよう丁寧に丁寧に書く。

シャーペンの芯が折れるような恋をしたかった、のに、社会人になった私の手にはボールペン。
消えない、消せない。もう後戻りはできないらしい。
修正テープじゃ跡が残るし、元のノートよりも白々としていて戸惑う。

「マーマー、鉛筆の芯折れちゃった〜。」

シャーペンの芯が折れるような恋はできなかった。
手には鉛筆、娘の名前が刻まれている。
力を入れすぎて、芯が折れた鉛筆を削って並べる。


もしもし、少女時代の私、聞こえていますか。
鉛筆の芯が折れるような恋をした私は今、とても幸せです。

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