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クリスマスにこだわりはない

いつの頃からか、クリスマスはどうでもよくなった。むしろ早く終わればいいのにと思うこともあった。世の中がクリスマスムードに包まれる。クリスマスのプレゼント、料理、ケーキを買い求める人々。誰かと楽しく過ごす日。私だけ世の中の流れに逆らっているような気がして、クリスマスの頃になると旅に出ることもあった。クリスマスからの逃避行。

ある時はフランスでクリスマスを迎えた。海外では、日本にいる時の疎外感、孤独感のようなものを感じなくてすむ。そもそも自分の存在がよそ者であるから、はずれていることが当たり前という感覚。それにヨーロッパの方が、個でいることの自由や、個人の違いに寛大であるような気がするから。日本では、異質なものは受け入れられなかったり、皆と同じようにすることがよしとされることもあり、それを窮屈に思っていた。

クリスマスイブはパリ。ひとりお店で夕食をとり、ホテルへの帰り道、教会ではミサが行われていた。誰でもご自由に、というので中へ入った。聖書の朗読、何言っているか全然わからない。そのあと讃美歌、聞いたことがあるメロディ。美しい旋律。聖堂を埋め尽くす大勢の人たちの声が心に響く。この夜、キリストと信者がひとつになる。この夜、神へ祈りを捧げて一体となる。共鳴っていうのかな? 自然と涙がでた。ひとりっていう感じがしなかった。

会社員でばりばり働いていたある年のクリスマスは、部内の皆と一緒に遅くまで残業していた。デリバリーの夜食を食べながら、皆黙々と仕事した。

去年のクリスマスは入院していた。看護師さんが言った「私たちにはクリスマスとかお正月とか関係ないから」
クリスマスに、誰かを助けるために働く人もいる。

いつからか、クリスマスから逃げたいと思うことはなくなった。どうでもいい、というのは投げやりになったのではなくて、どう過ごしてもいい、こだわらないっていう思い。

ケーキはいらないって思っていたけど、ケーキをプレゼントしてもらったからありがたくいただいた。年内会うのが最後になる人から、今年もありがとうってプレゼントをもらった。クリスマスプレゼントってことにしよう。
クリスマスは普段通りのはずだったけど、ケーキとプレゼントがそろって、自然とクリスマスらしい形になっていた。

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