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海外生活振り返り日記-ニュージーランド前編-#26

2度目のベイ・オブ・アイランズ-後編-
四日目(最終日)

スカイダイビング

 この日が来た。真っ青に晴れたスカイダイビング日和。朝食を軽く済ませ集合場所に行くと、スカイダイビングショップの人が車で迎えに来てくれていた。付き添いの子と車に乗ってお店を目指す。しかし話をする余裕は無く、車内でドキドキしながら音楽を聴いて気持ちを高めていた。山道を通り約1時間くらいで店に着いた。
 店内に入るとまず体重を量り、2〜3分くらいの短い動画を見て自主講習。飛行機からおちる時の姿勢、おちている時の姿勢、着陸時の姿勢が流れている。その間英語で色々と説明しているが、知っている単語だけ聞き取りながらなんとなくで聞いていた。こんなので大丈夫か?と心配になったが、タンデムジャンプと言って、ちゃんとインストラクターと一緒に飛ぶのでそこはお店を信頼した。
 動画を見た後同意書の様な紙にサインして、お金を払う。追加料金を払えば、ダイビング中にインストラクターが空中でビデオや写真撮影してくれるらしい。記念にとそのオプションを付ける人は結構いたが、テレビでよく見るスカイダイビングの映像を思い出し、絶対にひどい顔になるだろうと思ったので、それはやめた。
 その後別室に行き、つなぎのジャンプスーツを着て、インストラクターにハーネスをつけてもらい、外で待機。広場には白い小型飛行機のセスナが待機していた。大きなエンジン音、空にはパラシュートが次々と広がっている。
 私たちのツアーからは私を含め4人飛ぶらしい。この時まで全然気がつかなかったのだが、その4人の中にもう一人日本人がいた。しかも70歳を超える男性。この方も初スカイダイビングで、いろいろなことに挑戦したいという思いで参加したそうだ。私と同じ学校らしいが最終日の今日まで、同じバスに日本人が乗っていたことすら気がつかなかった。私は年を重ねるにつれて絶叫マシーンが苦手になってきているのに、70歳でスカイダイビングなんて本当にすごいなと思う。


吊り橋効果にかかる

 スカイダイビング全体の所要時間は約30分間。一緒に飛ぶインストラクターはキーウィのジミー。私はこの人に命を託すのだ。
 時間になりセスナに乗り込む。一回に4組み乗り込んだ。飛行機の中は狭く、皆インストラクターに抱えられ床に座っていた。
 窓から下を見ていると上へ上へとどんどん昇っていくのが分かる。どれくらいの時間昇り続けたか分からないが、まだ上に行くの?と途中で思う程高く、雲の上を飛行していた。
 昇っている途中ジミーに今まで何回飛んだか聞くと、「3000回位は飛んでるし、1日3〜10回は飛んで今日は8回目だ」と言っていた。こんなに経験があるのなら大丈夫か。と安心した。安心はしているがめちゃくちゃドキドキしていた。それから、怖くないか聞くと、「君が怖いと思えば僕も怖いし、君が楽しいと思えば僕も楽しい」と海外ドラマで聞く様な回答。そしてこの時自分でも自覚するほどの完璧な吊り橋効果にかかっていた。思わず、「これが吊り橋効果ってやつか…」と思ったほどだ。

 ダイビングは、約40秒間のフリーフォール(飛行機から落ちてパラシュートを開くまでの落下時間)、その後パラシュートを開き3分くらいかけて地上に降りると説明された。

 既にドアが開いていたか忘れたが、そこに架かっていた厚手のビニールカーテンをぐるぐると上に巻き上げるともう準備完了。すごく寒い。冷たく鋭い空気を吸ってより緊張する。
 カーテンが上がったら間も無く3、2、1とカウントが始まり誰か飛んだ。早い…。心の準備が…と思っていたが、私はドア付近に座っていたので、その後私の番となりジミーに抱えられながら足を外に出した。その瞬間物凄い力で足が後ろに持って行かれた。靴が吹っ飛びそうな位の風だ。もう自力では引っ張り戻せない。そしてジミーも両足を外に出すと、私のお尻はもう飛行機の外、あとはジミーのタイミングでおちるのみ。
 3、2、1とカウントされ、全て託し、もう終わりだ!どうにでもなれ!と心で叫びながら覚悟した。覚悟したというか、怖いとか死ぬとか思う気持ちを諦めた感じだった。
 そしてジミーは手を離し私たちはおちた。
 一瞬、ジェットコースターでおちる時の様に心臓がヒュッとなったが、その後おちている時は、びっくりするほど気持ちがよかった。恐怖を全く感じない。
 目の前には水色と真っ青に透き通った海が広がり、まさに海に向かって落ちていく様だった。横目にベイ・オブ・アイランズの小さな島々が点々と見え、全てが最高に美しい。
 ジミーがデジタルの時計を指差しながらフリーフォールの時間をカウントしている。めちゃくちゃ余裕である。
 そしてパラシュートを開くとグッと持って行かれ、その後で気流に乗ると左右のハンドルを引っ張って、ぐるぐる回って遊ぶように浮遊していた。パラシュートで降りている途中、ジミーが指さした方を見ると円形の虹が下に見えた。凄いものを見た!とこれにも感動。
 操縦してみる?と聞かれ、ハンドルを持たせてもらい左右に引っ張ってみる。ゆったりと飛行しながら遠く見える島々を眺め、今度パラグライダーもやりたいなと思った。
 あっという間に目標地点に近づき、足を前に出して着陸態勢に入る。
 芝生の上に降り立ち無事に終了。もっと飛んでいたかった。
 これをきっかけにニュージーランドに居る間にライセンスコースを受講したいと本気で思っていた。そして吊り橋効果のせいですっかりジミーに心奪われた。最後にジミーと記念写真を撮ってこの日のメインイベントは終了。
 パイヒアに戻って昼食をとり、帰りのバスに乗り込む。初めは渋っていた旅だったが、新しい友達もできたし、ニュージーランドの旅行の中でも中々濃い、いい思い出となった。

つづく

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