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《歯を使う》必要のない方向に進化した日本製品と、そうでもない欧米製品について考えてみた(旅で★深読み)

昨日投稿した下記のエッセイですが、前半がほぼ「蛇足」という、蛇の頭から足が生えているような記事でした。

子供の頃にお菓子の袋を開ける時など、《歯を道具として使う》場面が多かったのに、包装がどんどん進化して、今では手で簡単に開けることができるものばかりになりました。

切れ目がある袋は、必ず、手で簡単に開けられる!
液体の入った詰め替え袋は、さらに「凝った」親切設計!

でも、米国に住んでいた頃、あちらの製品にはこうした「行き届いた配慮」は無かったなあ、と思っていたら……

イギリス在住の吉隠さん、カナダ在住のアリエルさん(おふたりとも、記事のみならず、イラスト&マンガがとっても素敵デス!)からコメントをいただきました。

どうやら欧米の製品パッケージは、

今でも《歯》を使って開けねばならぬものが結構ある!

ようです。

この理由についてコメント返しにいくらか書いたのですが、ここは一番、整理してみる必要がある、と決心しました。

1.企業がどちらを向いているか

日本製品の「日々進化」はおそらく、多くの企業にある「従業員のカイゼン提案制度」「顧客からのアンケートフィードバック」が大きな源泉だと思います。

私が働いていた企業でも「カイゼン提案制度」があり、《実行に移した(ここが重要!)提案》は、その「カイゼン」によってどれほどのメリット(効率や収益の向上)があったかの試算結果により、提案者に「報奨金」が出るだけでなく、部署ごとの提案(質・量)を競ったりしていました。

消費者を直接顧客とする企業は、どこも何らかの形でアンケートを実施し、「これは!」という意見はサービスや製品の「カイゼン」へと繋げているようです。

日本企業がかなり「従業員」「顧客」を気にかけているのに対して、欧米企業は「株主」重視がはっきりしている。
従って彼らは、「株主還元」や「(M&Aや新製品開発などの)巨額投資」には金を使うが、チビチビした「カイゼン」なんかやらねーよ、という考え方なのではないでしょうか。

つまり、『同じ資本主義ながら価値観の差異』の結果ではないかと。

2.常にナイフを持つ狩猟文化かどうか

ニューハンプシャーに住む私の友人は、子供の頃、銃を持って学校に行き、帰り道でウサギを撃って夕食に持ち帰った、そうです(↓)。

彼は今もナイフを持ち歩き、何かあるとポケットから出して、ロープや枝を切ったり、それこそ菓子の袋を切って開けたりします。

狩猟文化社会では、ほとんどの人、特に男性は常時ナイフを持ち歩き、獲物の皮を剥いだり肉を切り分けたりしていました。
彼らは狩猟をやめた今も、さすがに持ち歩いてはいなくても、身近に必ずナイフがある。
パッケージを作る側がそんな面倒なことをしなくても、これを使えばいいじゃん、というわけです。

一方の農耕民族が使う刃物は「かま」でした。しかし、鎌で菓子袋を開けるのは難しい!
しかも、農耕生活をやめた後も鎌を持ち歩く人って、いませんよね(いたら、かなりヤバい!)。

「開けやすいパッケージ」は、日常的にナイフを持たない農耕民族だからこその《課題発見!》だったのかもしれません。

3.商品の扱い方と《フェイルセーフ》の考え方

これは、ふたつのコメント返しをした後に思ったのですが、欧米で、例えば空港でトランクを放り投げる場面など目にすると、
「うわーっ、やめてくれ!」
と思ったりします。
実際、トランクが壊れることもしばしばのようです。

この後は想像ですが、おそらく、日米の物流の現場では、商品取り扱いの丁寧さ/乱暴さにかなりの差があるのではないでしょうか。

一方で、「安全管理」における《フェイルセーフ》という考え方があります。
これは、

なんらかの装置・システムにおいて、誤操作・誤動作による障害が発生した場合、常に設計時に想定した安全側に動作するようにすること。またはそう仕向けるような設計手法で信頼性設計のひとつ。これは装置やシステムが『必ず故障する』ということを前提にしたものである。

Wikipedia 《フェイルセーフ》

この考え方に立てば、「容易に開けられる」パッケージよりも、「容易には開けられない」パッケージの方が、《フェイルセーフ》というわけです。

物流現場での商品取り扱いの乱暴さの違いだけでなく、「責任の所在」についての考え方の違いもあるのでしょうね。

スーパーマーケットで、顧客が上記に写真を挙げたような詰め替え用シャンプーをいじっていて、うっかり袋の切り口が開いてシャンプー液が漏れてしまったとします。
日本国内で日本人が引き起こした案件ならば、おそらく客が店側に謝ることでしょう。責任を取ってその商品を購入するかもしれません。
しかし、米国ならば、間違いなく客側が店に怒り、下手すると服が汚れたと損害賠償を要求されるかもしれません。

その意味でも、

「容易に開けられる」パッケージよりも、「容易には開けられない」パッケージの方が安全!

なんだと思います。


この3つの理由のどれがどれほど強いのかはわかりません。
専門家ではないので、いずれの理由も自分のアタマで考えた「個人的意見」です。

みなさまのご意見を頂戴できれば幸いです。


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