「ボイスレコーダー」
声の調子を整えないといけない。
「あー」「おー」「うー」「えー」「をー」
「えへん、えへん」「あちょー」「わーっ、はーっ」
「今日も、大丈夫そうだな。」
声を使う仕事をしていた真也は、朝早くから奇声を上げていた。
男性だけど、ハイトーンボイスが特徴の真也は、
声優・歌手・ナレーターで、大忙しの日々を過ごしていた。
今住んでいるのは、20階建てマンションの最上階。
偶然にも、彼女が同じマンションの12階に住んでいた。
喉のケアは怠らずに、うがいに始まりうがいに終わる。
外に出掛ける時は、必ずマスクをして保湿、
花梨飴を、常にバッグに忍ばせていた。
明日は、大事な声優オーディションの日。
いつになく緊張しているが、彼女に事前に連絡して、
ボイスレコーダーで、チェックしてもらうように、
お願いをしていた。
マネージャーのような役割を、彼女が担っていた。
前日の今日の調整がとても大切。
ボイスレコーダーを使って、20階で行われる事前チェック。
録音ボタンを押して、ストップ。直ぐに、再生して聞いてみる。
彼女のダメ出しが出た。
せっかくのハイトーンボイスが、全く生かされていない。
もう一度、録音。再生してみる。まだだめだ。
その後、20回ぐらい行ったが全くだめだった。
諦めて、その夜は寝ることにした。
翌朝、オーディーション開催が午後だったので、
再度ボイスレコーダーでチェックをお願いしようと、
真也は、彼女の携帯に連絡を入れた。
その時、彼女の都合が悪かったみたいで、
20階までいけないとのこと。
仕方なく、真也は電話越しに録音指示を出して、
電話越しにセリフを言ってみることにした。
すると彼女が、一発O Kサインを出してくれた。
意外だったので、再生ボタンを押してもらうことにした。
電話口で、自分の声を聞く。
不思議な感覚が、真也を襲った。
その声が、有名な声優さんの声にそっくりだった。
自分の声が、電話を通して変化して聞こえてきた。
その声が、とても綺麗なハイトーンボイスになっていた。
午後開催された、
オーディションには、合格することが出来なかった。
しかし、電話口で変化して聞こえてくる自分自身の声を、
生かす形で録音、S N S拡散してファンを獲得していく、
真也の明るい未来が見えたのは、言うまでもない。
電話口で変化した声が、真也を救った。
まさかの出来事。
デジタル音声が、真也を救ったのであった。
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