ICT・AIの進歩と学校のセンセイ
2020年2月27日という日。覚えていますか?
全国すべての小中高校と特別支援学校について、3月2日から春休みに入るまで臨時休校する要請が出されました。(法的根拠はないのですが・・・)
それから大混乱。オンラインで授業を続けることの出来た学校と、大量の紙の宿題を生徒に渡しただけの学校。
文科省の調べによるとこんな感じ。
同期・非同期問わず、のオンライン授業を展開した学校は本当に少なかったみたいです。回答数が少ないので、恐らく割合的にはもっと低いと思われます。
しかし、PISA(2018)の結果をみると、日本の子供たちのICTスキルが低いわけではないのです。
注:Iインターネット・Cコミュニケーション・Tテクノロジー
https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/01\_point.pdf
問題はICT機器が学びのための道具ではなく余暇のため
となっていることなのです。
現在、世界的に見てもICT活用に遅れを取っている日本の教育を何とかしようと、霞ヶ関の2大事業が動き始めているのは多くの方がご存じでしょう。
GIGAスクール(文科省)
未来の教室事業(経産省)
これらの動きをみると、日本も行くぜ、といった感じを受けますが、
日本全国の教育現場では阿鼻叫喚の世界が広がっていたりします。
ここら辺を書くとかなり生々しいので、割愛し、なぜこのような問題が起こるのか少し考えてゆきたいと思います。
いきなり結論ですが、
とりあえずICT機器をいれればOKなんでしょ
というめちゃくちゃ安易な考えがはびこっているからだったりします。
そもそもICT機器はどのように使うのか
Edtech(Education x Technologyの略)界隈では、生徒がICT機器を使うのは次の様なことだと良く言われています。
1 情報を入手する
2 情報を検索する
3 情報を整理し、提示する
4 疑似世界を探索する
5 スキルを練習し、進捗状況フィードバックを受ける
6 認知スキルのサポート
7 真正の学びの場に参加する
8 他の生徒と協働作業をする
昨今、AI(機械学習)技術の進歩によって5のところがかなりの勢いで注目を浴びています。
例えば、英単語を覚えるだけだったらミカンという素敵なアプリがありますし、数学だったatama+というサービスがあったりします。どれも学びたい知識をAIのアルゴリズムが効果的にサポートし、フィードバックを与えてくれます。
しかし、知識を効率よく覚えれば学びにつながるかというと、そういうわけではないのです。
意味のある学び
1999年頃、John Swellerという研究者が認知負荷理論(cognitive load theory)というものを提唱しました。この理論をざっくりと解説すると、人は情報処理の負荷を避けるため必要な情報を選別して覚える、というものです。つまり、
学びはその人にとって「意味のあること」しか脳のフィルターを通らないわけですね。
さらに、以前から紹介していますが、知識を蓄えるというのは自分の脳内で完結するものではありません。環境や人とのやりとりの中で、知識を体系化していくのです。(social cognitive theory)
ICT・AI技術の進歩によってどんなに素敵な学習アプリやサービスが誕生しようとも、
学びとは、周りの環境や人とのやりとりのなかで自分にとって意味のある事柄(知識)を作り上げていく作業
なので、アナログであろうとデジタルであろうとそこには本質的な変化はないのです。
「先生」はいらなくなるは間違いである
「ICT・AI技術が進んで学校の先生がいらなくなる」と良く言われるようになりました。
これに対する反論は
決してそんなことはない
そして、これにある程度同意した回答は
これまでの知識を伝えるだけの先生はいらなくなる。けれども、学びに対する明確なビジョンを持ち、時代の流れに敏感で、教える技術の高い先生はますます必要になる
です。
ICT機器をとりあえず入れればいいのでしょ
ではダメなんです。
ICT機器やAIそのものには学習効果がありません。Macを使えば学習効果が高まる!このアプリを使えば英語を爆速で覚えることが出来る!そんなことありません。
「どのような授業を展開したいのか」
学びに対する具体的なビジョンを持ち、使う機器を選定し、授業(または学校の活動)の中で効果的展開することによって初めて学習効果が生まれるのです。
昨年、「学びを止めるな」というフレーズがネット上で流行ったが,実はこれは先生に向けたものなのかも知れませんね。
センセイは学びを止めてはいけないのです。
【ICT機器導入の際に考えて欲しいこと】
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