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「とりあえずやってみる」はなぜ効果的か

失敗・・・

この単語は誰もが避けたいと願っていることです。しかし、実は使い方によってはこの「失敗」が成長への手がかりとなることがわかっています。さらに、上手い先生が失敗を意図的にデザインすることで、学びが加速するという報告も成されています。

そして、アメリカのスタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学を始め、世界中の企業や研究機関が「失敗」を「学びの手段」として考え始めているのです。

生産的な失敗

M. カプールという研究者がシンガポールの小学生と中学生を対象に行った研究を紹介します。

子供たちが「速度」や「分散」について学ぶとましょう。その際、以下の2つの方法があります。

先生がこれらの概念や計算の仕方を教えてから、グループ活動

グループ活動してから、先生が概念や計算を教える

皆さんはどちらが学習効果高いと思いますか?誘導しているようですが、実は後者の方が学習効果が高いとされています。研究では、「マイケル・オーウェンなどサッカー選手の過去20年間分のゴール数を使って、最も安定した成績を残したのは?」という課題で、表をつくる課題をだしたのです。

研究の結果,課題に取り組み悩んでから教わるクラスでは,教わってから課題に取り組んだクラスより,概念を深く理解し,応用問題で優秀な成績を収めました。そして,グループ活動時に多様な解法を試行錯誤していた生徒ほど,より優秀な成績を示しましたようです。

つまり、新しいことを教わる前に、あらかじめ自分の知っている知識をフル活用して「自分なりの仮説」が上手くいかないことを体感した生徒ほど、新しいことを習うと腑に落ちるということですね。

この研究を通じてカプール氏は、「失敗」が「成功」につながることを「生産的失敗」と名付けました。

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これに関しては以前ご紹介した研究論文も合わせてどうぞ。

---追記

友人のマーリット(フィンランドの数学教師)は「身近にあるもの」から数学的概念を教える取り組みをしています。

Tinkering「いじくりまわす」が重要

さらに、失敗好きになれとは言いませんが、お友達になった方がいいとう感覚で研究を進めている研究大学があります。近年日本でも脚光を浴びましたが、スタンフォード大学のd.schoolです。

日本に紹介されたのが、2000年後半なのですが、このデザインスクールは90年代から活動していました。バーナード・ロス、ロジャー・マーティン、現在IDEO社を率いるトムとデイビッド、そしてティムらが、共同で「デザイン思考」というこれまた画期的なプロダクト開発プロセスを考案しました。

詳しくは上記の本などを読んだり、googleで検索していただきたいのですが、コアとなる概念が”tinkering(いじくりまわす)”です。どういうことかというと、何かゴールを決めたら、細々としたプロセスを通じて何かを作り上げるのではなく、いきなりモック(仮のゴール)を作ってしまい、改良して、さらに改良して最終プロダクトを作り上げるという考え方です。

つまり、いつも通りざっくりというと、「とりあえず何か作ろう」という感じです。これも先ほどの「生産的失敗」と同様に「失敗を前提に」取り組むことを重要視しているのです。

失敗の捉え方を変える

ノーベル文学賞受賞者で、20世紀を代表する作家であるサミュエル・ベケットは『いざ最悪の方へ』というこれまた、微妙なタイトルの作品の中で次のような名言を残しています。

Ever tried. Ever failed. No matter. Try Again. Fail again. Fail better.

(なんども挑戦した。失敗ばかりした。気にしない。また挑戦。また失敗。よりいい失敗をするんだ。)

皮肉屋のベケットらしく、最後がポイントです。「よりいい失敗」

失敗をすることは大切ですが、同じ失敗ばかりでは効果がありません。先に紹介したカプール氏も「生産的失敗が失敗するとき」という論文を書いて、失敗から学ぶ方法を上手くデザインすることの大切さを語っています。

失敗と友達になるためには、子供のころからこのような考え方を身につけることが大切です。私はクラシエフーズさんの「知育菓子」プロジェクトに関わらせております。

「お菓子作りを通じて対話し、好奇心を育てること」

ただお菓子を食べるのではなく、作り、時には失敗し、対話を通じて「自分のなんでだろう」を育てていく。

失敗は大切です。とりあえずやって、どんどん失敗しましょう。

だからこそ上手くいかなった時、友達、家族、そして先生からアドバイスをもらい、つぎに「よりいい失敗」するための準備をすることが重要なんですね。

それでは良い1日を

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