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首を傾げると世の中が斜めに見える

同一人物に薦められた映画と小説が二つ。

『荒れ野(スペイン)』

と『灰の劇場(恩田 陸 著)』。

小説の方は大分前に読んだことがあるので「うん、読んだよ。」と答え、映画の方は昨夜観た。

で、どの辺が良くて薦めたの?と訊いてみた。

「えー?!面白かったでしょ?!深いでしょ?」と言うのだが、具体的にどこが良かったのか言ってくれない。

これがクライアントさんならば、共感するために多少なりとも粘ったのだけど、これ、普通の友達だからして。

「全然。」と正直に答える。

『荒れ野』の方は、観始めは期待したのだけど、何度も言ってるだろう。ただ恐怖してパニックになってギャーギャー叫んでいるだけのやつは嫌いだって。何故、謎を解き明かさない。あとは、そんな危険な事柄だったら、何故子供に秘密にするんだ。子供は、ちゃんと分かるし、勇敢だし、賢いんだよ。人間として扱えば結末も違ったろうに。

『でも、抗えない運命って、あるじゃん。』

・・・・。どこに?

『灰の劇場』の方は、この著者の文体が凄く好きなんだけど、一生懸命推察している思考の流れを辿って行くと、途中で『はい?』となる。

まずは『一つの可能性』という表現を回りくどく描写している。要するに”LGBTだから絶望して心中した”という推察なんだけど、何故回りくどくなるのか?と言うと、多分考えることすらタブーな世界扱いなんだろう。

『なんかさあ、抗えない運命とか、世知辛さを感じなかった?なんか、私ね、薦めたあと、なーんか、悪かったかな?と思っちゃった。』というこの人の上目使い。

無意識なんだろうけど、誰かと絡むときに、いちいち水をさしたくなる人っているものだ。もう長年やり過ぎて、もはや水をさすことでしか他者と関われない状態の人すら居る。

いやあ、感じなかった。ごめんって、何で謝ってるんだろ、私。

そして、ガッカリしている相手の顔にもビックリ。何故、こちらが落ち込んでいないことにガッカリする。

全然違う話なんだけど、私の中での似たようなことを感じた感覚を探すと、元旦那さんが、離婚する時に『女の人が一人で生きて行くのは大変だよ。絶対ダメだよ。今から考え直して。まだ親戚とかには言ってないから。今なら間に合うから。』と言っているのを聴いた時。

ほんとに良い人だったんだけど、突っ込みどころ満載な台詞と空気だった。その困るという意味が経済的なことならば、相手より稼いでいた私に言うことではないし。では、仕事のことだろうか?いや、世の中には、やろうと思えば色んな仕事が溢れている。

結婚している者が社会的な信用が重いから、独身だと軽んじられますか?いや、ごめん。どの線で行ってもおかしい。

『だって、もう、その年齢だよ。』

・・・・。はい。あなたは、その+4歳ですが。

ただ、彼が言っていたのは世間一般でもよく言われている。強く思い込まれているある種の固い宗教や迷信のようなものだ。絶対そうでなくてはならないと。

で、私も私の親しき人々も、その宗派の人たちと付き合うと息苦しくなるので、深くは関わりたくない。色々と疑問符が浮かんで来て面倒だし、かと言って論破するほど強い情熱も感じない。

迷いに迷った末、本当に心を込めて『ありがとう。男も女も、家族がある人も、独身の人も、何歳でも、皆、生きて行くのは大変。頑張ってね。』と答えておいた。

話は現代に戻る。

『もしも辛いことがあっても、この小説の人たちのようにならないでね。』

この人たちのようにとは?

『先が見えなくて自殺するとか。』

LGBTだと先が無くて自殺するというルールが、彼女の中にあるらしい。他にも何かそういうモデルに触れたのかも知れない。

あと、あの素晴らしい文体の作品で、拾ったのがそこだけってのにもドン引きした。

人生、先は何があるか分からないし、何をするかは分からない。しかし、それを差し引いても、傾げた首が元に戻らないほどだった。

気が付いたら、ムッとさせるほど傾げてしまっていたのだろう。『人の言うことは、ちゃんと聞いた方が良いよ!』と怒られた。

ああ、その言葉、ほんと子供の頃からよく言われる。でも、私、ほんと、子供の頃からよく人の話は聴いているの。傾聴力の鬼なの。しかも、凄くよく見ているの。もはや、録音や録画のレベル。

その結果『ありがとう。とりあえず生きてみるよ。』と答えるしか術がない。(と、今まで通り首を伸ばす)

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今日は、新鮮な牡蠣をゲットした。

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