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優しい社会を目指して【本:デジタルとAIの未来を語る】

台湾のデジタル担当の政務委員であるオードリー・タン氏は、とても優しい言葉で話す。「デジタルとAI」という言葉に埋もれる私たちにとって、それでも、「人々を繋げる」「インクルージョン」「多様性」が先にあるので、あくまでもツールとして、この2つを語っている。

大学院でオードリー・タン氏と「語る会」が開かれた。この機会自体も、タン氏は一方的に話すよりも、「皆さんのことが知りたい」といって、双方の座談会のような形を希望されていたのだそう。

タン氏については、ベトナムのニュース記事でも、少しだけだけど見ることがあった。日本では本も出版されていた。この、『デジタルとAIの未来を語る』という本は、約3か月に及ぶオンライン・インタビューによって作られたのだそうだ。タン氏は、8歳でプログラミングの独習を始め、約30年間、デジタルの世界に関わってきた。

ーーーーーーーーーーーーーー読書メモーーーーーーーーーーーーーーーー

テクノロジーの進化:便利だという反面、取り残されたり、仕事を奪われる危惧、個人情報が一部の起業や国家に蓄積されることについて嫌悪感

デジタルは国境や権威というものを超えて、様々な人々の意見を広く集めることに優れている。

台湾でも、コロナ感染初期の現場は、カオス状態だったと思う。
「中央政府と地方政府で言っていることが違う」
「誰に情報をもらえばよいのか」といった人々からの不満

基礎的な知識を持っている人が多ければ多いほど、情報をリマインド(再確認)し、お互いに意見を出し合ったり、対策を考えることができる。逆に、少数の人のみが高度な科学知識を持っているだけの状態では、何が起こっているか理解していない人が多いということ。

多くの教訓:例えば「仮に症状が出ていなくとも、ウイルスは感染する」

一つの部会では解決できない問題が生じた場合、部会間で異なる価値を調整する必要がある。こうした部会間を横断する問題をデジタル技術を使ってクリアにしていくことが、デジタル担当政務委員としての私の仕事。

#エンパワーメント
#イノベーション

マスクマップのきっかけは、台湾南部に住む一人の市民が、近隣店舗のマスク在庫状況を調べて地図アプリで公開したことから始まった。私は、それをチャットアプリのSlackで知った。

政府と民間の信頼関係の象徴となった全民保険制度
全民健康保険カードやクレジットカードによって本人確認を行い、さらに行政機関のデータとリンクさせるというやり方は、ITの活用によって実現したことですが、それは政府と人々との間に信頼関係があったからこそ実現した。このような相互信頼が、社会のデジタル化を推進していくときに不可欠な前提条件になると私は考えている。

デジタルによって、同じメッセージをより広く、より早く伝えること

台湾における新型コロナウイルス対策
Fun, Fair, Fast and Humor over rumor 
外部には例をきっちりとあげ、明確に説明できることを証明する必要がある

競争原理を捨てて、公共の課題を生み出すことを求める
AIに自分の仕事を奪われる、という心配ではなく、公共の利益に資するような方向を目指していけば、人間社会はより豊かなものになる

タン氏は、中学校を中退する前の時期に、ウーライというタイヤル族の集落に滞在していた。私が、政治的問題とは離れた事柄に関心を寄せるのは、単純な興味から出てくるもの。他人の話を聞くことへの興味は

1.自分自身の生活という角度から物事をみるという制限を取り払えること
2.相手の個人的な経験や背景から述べられたことを通じて「世界はこのような視点でも解釈できると理解できる」こと

未来を学習することができる
相手の経験を知ることから、自分の視点を学ぶことで、未来に同じようなことが起きたら、きっと自分なりの新しい話し方ができるはず

専門的な能力を持った人が縦方向の仕事をすることは理にかなっているが、本来必要なのは、各年齢層の人間が、私が提供しているような横の連携とコミュニケーションを図る仕事をすること

重要なのは、「どうすれば、各世代が一緒に政策を作っていくことができるか」を考えること

単純労働者の、その土地の状況に合わせて仕事のやり方を変えたり、地震や自然災害などを考慮して耐震構造を作るなど、むしろ創造力を必要とされる部分を数多く担っていると考えられる。作物に肥料や農薬を散布する仕事は、昔から最も機械化が進んだ分野。最近ではドローンやロボットがそれらを支援しているが、「何を植えるのか」「どういう栽培方法を目指しているのか」「自然農法・有機農法・環境に配慮した農業をするのかどうか」等は価値の選択であり、創造性を持つ農家の人たちでなければ考えることができない。

情報格差(デジタルディバイド)を埋めるためには、何か一つ二つを行えば良いということではない。誰も置き去りにしないインクルージョンの力を確保しなければならない。そして、インクルージョンが確立された後は、「持続可能性」、さらには「環境」という二つの価値観を確立するべきです。

台湾社会の利点は「社会そのものが強い」こと。地域の発展を支えているのは、協同組合やコミュニティカレッジ、NPOの存在で、何か社会に貢献したいと思えば、誰かのポストを奪い取る必要は無い。リタイアした高齢者は他人と競争したり比較したりすることを放棄するでしょう。

台湾の国民皆保険制度は「自分の健康は他の全ての人の共同責任である」という考えのもと

起業したり自分が追求したいことを行おうとすれば、当然リスクを伴うし、必ずうまくいくという保証はない。ただ、たとえ失敗しても、少なくとも自分の健康や子供の教育が犠牲になることは絶対にないというのが、現在の台湾社会。ここ15年は、こういった堅実な社会が定着している。

何事もそうですが、強いプレッシャーの下で競争を強いられると、相手に丁寧に接する余裕が無くなる。つまり、自分の精神の安定が失われてしまうのです。それは、資本主義社会における競争原理の弊害ともいえる。自分の精神が健全で安定していれば、自然とスマートで礼儀正しい人間になれる。そういう余裕のある社会を台湾は目指している。そのためにデジタルを積極的に有効活用していこうとしている。

両親から学んだクリティカルシンキングとクリエイティブシンキング

父からは「誰からも概念を植えつけられるな」という概念を学び、母からは「既存の型や分類にとらわれずに自分の方向性を見つけていく」思考法を学んだ。

「私の考えがたとえ個人的なものであっても、その内容を言語で明確に説明することができれば、同じ考えを持った人に必ず巡り会うことができる。すると、私が考えたり説明したりしたことは、単なる個人的な考えではなく、公共性のある考えになり、同じ考えや感覚を持つ人が「どうすれば、よりよい生活を送れるか」をもとに考えるきっかけになる」いわゆるアドボカシー(社会的弱者の権利や主張を擁護、代弁すること)に発展する。

タン氏は、学校での集団生活になじむことができず、小学生のときにはいじめに逢い、その都度転校を繰り返す日々。中学校には1年だけ通い、最終的には14歳で中退することに。14歳で学校を離れる前、家族の同意を得て台北市郊外のウーライへ行き、静かな環境で過ごした。

タン氏が強い影響を受けた、オーストリアの思想家ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインの『倫理哲学論考』

15歳で起業、18歳でアメリカへ

デジタル空間とは、そのような「未来のあらゆる可能性を考えるための実験場所」ではないかと思う

初めて政治と関わることになった「ひまわり学生運動」

保守的:日本で言う「保守」よりも、中国語の「持守」(じしゅ)
持守とは、自分の意志を堅持する、貫くという意味がある

自分が何をしたいかではなく、人々が何を望んでいるかを考える

「就業ゴールドカード制度」
台湾政府が実施しているビザ優遇措置で、特定の専門技術を持っている外国人にはビザが優遇して発酵される制度。このゴールドカードを取得すれば、3年間台湾に住むことができ、これらの人々は雇用主を探す必要が無い。自営業を始めるのもよし、外資系企業で働くもよし、と非常に自由な制度になっており、自分のもともとの国籍を放棄せずに台湾の国籍を取得できるという制度も。

投票という行為を習慣にしてほしい
中学校や高校の生徒会役員、大学の学生会の代表、町内会や身近な地域から

就任要請が来た際の条件
1.行政院に限らず、他の場所でも仕事をすることを認める
2.出席するすべての会議、イベント、メディア、納税者とのやりとりは、録音や録画をして公開すること
3.誰かに命じることも命じられることもなく、フラットな立場からアドバイスを行う

自主勉強をしていたときに自然と感じるようになったのは、「何事も独学が可能なのだ」ということ。ネット上には様々な意見があり、それを統合することが自分の学習領域となった。また、私は「より多くの時間をこうした勉強に費やしたい」と感じ、こうした勉強方法を「情報科学だけに限らず行いたい」と考えた。

より多くの問題について、お互いに顔も知らない人間、会ったこともない人間同士が一緒になって解決していくという「文化」に啓発された。

vTaiwanは、政策についてのパブリック・オピニオンを募る為に使われるプラットフォーム。政府と国民の間の境界線が無くなり、両者はオープンな協力関係を築くことが可能になる。

例:プラスチック製の皿とストローの段階的な使用禁止を求めたvTaiwanへの書き込みがきっかけとなった政策
2019年7月に店内飲食についてプラスチック製ストローの使用を法律で禁止した

この提案に対して、請願に必要な5000名の署名がすぐに集まった。この投稿人物は、あとになって16歳の女子高校生だったということが判明した

見えにくい問題を顕在化し、解決に導く

単一民主主義における基本的な問題点のひとつとして、実際に社会問題や環境問題の被害を受けている人たちの中には、政府関係者や委員とのコミュニケーションの取り方がわからない人も多く、そのため委員が有権者の意見を十分に反映していない危険性もあること。その為のPDIS(http://po.pdis.tw)のプラットフォーム。

1.何らかの被害を受けていて、立法委員に知り合いもいない人や何のツテも無い人に、問題を解決できるポストにいる人間との接点を作ることができる
2.発起人が提唱する考えを、より多くの人に知ってもらうことができる

また、その5000人の中から志願者を募り、彼らに私たちがまとめたマインドマップ(キーワードやイメージを中心に置いて、思考の過程を整理したもの)を見てもらい、事実と感情を分け、実現可能なアドバイスを行いながら、具体的な構成を一緒に考えて報告書を作成。完成した報告書はネット上で公開され、誰でも見ることができるようになっている。この方式のメリットは「問題の核心がどこにあるか」を誰でもすぐに知ることができる点。また、図式的思考や構造的思考が苦手な人のために、問題点を把握できる小冊子も作成。

一度共通の価値観を持ってしまえば、誰もが異なる革新的な解決策を提案できる。これこそが、民主主義の醍醐味。

物事を受け入れる「寛容」という価値
傾聴の民主主義

デジタル民主主義に潜む危険性はアナログ時代から続いている
1.インクルージョン
2.説明責任

例えば、中国にはバイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイという4大IT企業があり、全て中国共産党の支配下にある。この状況は、危険性があり、情報発信する力がある限り、インターネット環境をどのように調整していくかという話ではなく、そもそもこの問題が消えることが無い

「デジタル民主主義に危険がある」ということを認める一方で、「民主主義を前進させていくためにどのようにデジタルを役立てることができるか」を考え、活用していくことが大事。

民主主義には多様な意見が存在するのが前提だが、それが形式的なものにすぎない場合は大きな問題となる。上がいうことを庶民が忖度して「上がAといえば、みんながA」になっているような状態の社会では、選挙制度があっても投票は形式的なものにすぎない。

政府の仕事だ、ではなく自分の問題だと捉えて行動を起こすことができる社会。「自分に直接関係することではなくても、能動的に貢献したい」という心持ち。こういう精神こそが、民主主義では非常に重要な要素の一つ。こうした気質を、台湾ではジーボー(鶏婆)という。

みんなのことを、みんなが助け合う
ソーシャルイノベーションは、市民がテーマを決め、政府が市民のアイデアに協力することで完成する

政府が人々をまったく理解せず、政治に参加する必要もないと感じたならば、人々は最終的に政治に対する関心を失うでしょう

オープンガバメントを定着させるには、このように時間も必要で、何よりも人々に丁寧に説明し、理解してもらう姿勢が求められる

「このストーリーの状況下においては何が重要であるか、どの価値であれば、よりクオリティの高い精度で実現できるか」について考え続けなければならない。日々考え続けるということは、自分が今日達成したいものは何かを常に探るということ。それが確定すると、続いてそれを実現する方法を探る探索が始まる。「他人から学び、考える」という行為を謙虚に行っていく必要がある。

自分の価値観がすでに確立されているような場合は、自分と同じ価値観を持っている人を探すことになる。

マイノリティに属しているからこそ、提案できることがある。大事なのは、マイノリティかどうかに関係なく、その人の貢献を社会が認めるかどうか。

時代の経過とともに自然と片づく問題もある

各世代の人間が持っている価値観のどれも犠牲にしなかった

インクルージョンや寛容の精神は、イノベーションの基礎になる

#持続可能性
#自発性
#相互理解
#共同作業

台湾でイノベーションを進める場合、私が常に言い続けていることは「わずかな部分あるいは少人数のためのイノベーションによって、弱者を犠牲にしてはならない」ということ。私たちの社会には多種多様な人たちが生きていることを忘れてはいけません。

言葉が通じないことによって起こる他国の人たちとのトラブル。台湾はフィリピンやインドネシア、ベトナムなどからの出稼ぎ労働者を多数受け入れており、多くの場合、男性は工事現場や工場などでの仕事、女性は介護やメイドなどの仕事に従事している。

時代を経るにつれて、とくに私たちのような比較的新しい世代では「両親それぞれの母語が異なる」という子供も増えてきている。

デジタルには、企画段階で未来がどうなっているかをモデル化できること、そして、現実世界のロジックによって行われた結果よりも良くなること。

イノベーションを行えば行う程、人間の仕事はよりクリエイティブになっていく

都市と地方との教育格差を是正する「デジタル学習パートナー」
都市部の大学生が、デジタル機器を通じて、地方の生徒たちと一緒に学習するというシステム。「デジタル学習パートナー」となった大学生は、地方の子どもたちが知らない世界や様々な生活経験が存在することを教え、子どもたちの想像力を刺激する。プロの教師の代わりになるわけではないが、デジタルの力を活用して、地方に独特の問題を解消する手助けを行っている。先住民に対する教育も、政府から予算が出ている。

台湾の人たちは、政府が着手するのを待つのではなく、必要だと判断すれば民間で始めてしまうスピードとパワーを持っていること。

コロナ禍のオンライン授業は、それぞれの家から学校と繋ぐのではなく、小規模のクラスやグループに分かれ、衛星のように、それぞれ異なる場所から大きな教室空間につながるような形をとった。密を避けた。

大切なのは、子どもの関心がどこにあるかを大人が理解すること

学習の早い段階で、明確な研究の方向性が見つかっていないのに、オンラインを用いると、相手の研究の意味を理解できない可能性がある。この場合には、ある程度のレベルに達するまで、自宅や地域の学習で、自分の興味のあるものや解決したい問題を見つけるのが良い。そうした基礎的な学習は、逆にオンラインの画面を通してはできない場合もある。

大学は常に存在しているので、高校卒業のタイミングで無理して進学する必要は無い。高校へ行く意義は「自分がどんな問題を解決したいのか」という関心を探ること。「自分が社会の何に関心を持っているのか」「社会の要求をどう受け止めるのか」「どのようにして共通の価値観を生み出すのか」などと考えながら学ぶことができる。自分の興味のあることを探して、それについて学び、仕事としていかしていけばいい。

様々な学習ツールを利用して学ぶ、生涯にわたる「学習能力」が重要に
様々な分野を学ぶことに楽しみを見出すことができれば、人生の幅はもっと広がる。

台湾で1999年に発生した921大地震の後、日本の建築家である坂茂氏が、彼の作品である「紙の教会」を分解して台湾に送り、それを組み立て直して台湾中部の南投県に設置した。その地域は、非常にさびれた場所だったが、「紙の教会」ができたことがきっかけとなり、人気の観光スポットに。

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ちなみに、ニュージーランドのクライストチャーチにも、震災後に以下のような仮設の紙の教会が建てられた。

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台湾には仕事をしながら自分で起業するとか、早めにリタイアして創業するとか、いろいろな方法がある。私の父も、リタイア後は非営利の教育活動に携わり、台湾全土を駆け回っている。

デジタルに関するスキルよりも素養を重視する
素養:平素の学習で身につけた教養や技術
子どもたちが「自分が興味のある問題や公的な問題を解決する以外の目的で、プログラミング言語を学ぶ」というのは、外国語を学ぶときに辞書に載っていることを完璧に暗記するようなもの。そんなことをしても必ずしも役に立つとは限らない。自分の関心を脇においてプログラミング言語を学ぼうとすることも、それと同じ行為。

プログラミング思考:一つの問題をいくつかの小さなステップに分解し、多くの人たちが共同で解決するプロセスを学ぶことは大事
最初から最後まで一人の力で解決方法を考えるやり方とは異なる方法を学ぶことで、どの分野でも通用する「問題解決の方法」が身にでしょう

デザイン思考やアート思考
物事を見る方法や複雑な問題を分析する方法を訓練すること

相互理解
お互いの立場あるいは人生の経験がまったく異なる私たちが、いかにして相手と共通の価値を見つけ出して、それを共有できるかどうかということ。そのため、持続可能であるかどうかが非常に重要となる

まず同じ関心を持った人たちを見つけ、そこからみんなの役に立つものを一緒に作りだす。結局のところ、自分自身が行う価値があると思ったことを行うと、それをすることによって相互交流したり助け合ったりすることが、素養を育てる最良の方法となる。

科学技術では解決できない問題に対処するために美意識を養う
いくつもの展覧会へ出かけるよりも、作家と一緒に過ごす体験をするほうが、「美しさを創造する力」を感じることができる。

私がこのようなアート的な感覚、あるいはアート教育を重視するのは、既存の可能性にとらわれないようにするため。アートとは、自分の見た未来のある部分を他の人に見せることで、それにより未来の可能性を開こうとするもの。

サイエンスとテクノロジーのみで社会の構造的な問題を変えようとするのは、極めて難しい。サイエンスとテクノロジーは、「既存のプロセスを最適化する」とか「最適化の速度を上げる」とか「より低コストで実行できるようにする」といった部分には貢献するが、直面した問題が非常に大きかったり、複雑だったり、気候変動のような問題に対処する場合に、直線的な思考だけで問題を解決することは不可能。

「プログラムをどれだけ上手に書けるかどうかは、母国語の運用能力がどれだけ優れているかにかかっている」

創造力を培うためには、美意識とかアート思考、デザイン思考、文学的素養も大事

デジタルの時代になればなるほど、文学的素養は欠かせず、重要性を増す

普遍的価値を見つけるために異なる考え方をする人たちと交わる

日本の「RESAS」(地域経済分析システム)から学んだこと
エビデンスに基づいた政策立案を行っている点を学んだ
具体的な統計データに基づいて、現地の学校がその地方におけるシンクタンクのような役割を担い、探索的な研究を行っていること

失敗事例も含め、その試みが人口の還流に役立ったか、雇用率の上昇に役立ったかなど、どんな良い影響や悪い影響を与えたのかを知ることができる。

デジタル化成功の鍵は、デジタルネイティブ世代が握っている
とにかく若い人たちが意見を表明したり、政治に参加できる機会を積極的に設けて頂きたい。デジタルの分野において、若い彼らのほうが「先輩」。

日本では、社会を動かすのは政府の官僚や公務員の仕事だと考えられているのかもしれません。日本の官僚や公務員は間違いなく優秀。ただ、民間で働いている人たちや、まだ選挙権を持つ年齢になっていない若者たちも同じように重要。

ーーーーーーーーーーーーー読書後のノートーーーーーーーーーーーーーー

基本的なところだけれど、この本を読んでいて思い出した友人との会話で「日本では友達を作るのが難しい」というのがあって、今だからこそ「コロナ禍でオンラインになったから」ということだったけれど、本当は、もっと根本的な理由があると思っていて、それは、「個々人に余裕が無い」こと。

何事もそうですが、強いプレッシャーの下で競争を強いられると、相手に丁寧に接する余裕が無くなる

とタン氏も言っていたけれど、こういう心理的なことって人間の本質を理解していないとわからなくって、もっというと自分がマイノリティだという経験や想像力や好奇心を大事にする価値が無いと、おざなりになってしまっていく。

私自身は、あんまり友達を作ろうと思っていないし、今でこそ周りにどう思われたってイイやと思えるようになったけれど、何かしらある日本の競争社会は、本当のセーフティーネット(補助金とか制度とかっていうより、人間の尊厳が保たれる職場環境や多様性を受け入れる社会)を保てていない。

見えにくい問題を顕在化するプラットフォームを立ち上げ、実際にまだ選挙権を持たない人々のアイデアが5000人以上の賛同を集めて政策に反映される景色は、とても素敵な未来だと思うし、これこそが、若者が政治や政策に興味を持つきっかけだと思う。教育も大事なのかもしれないけれど、この「自分の声が反映された」って思う瞬間。それをデザインするのがデジタルだと思うし、自発性を促す仕組みなんだと思う。

グロービスMBAの飯田氏も以下のように言っていた。

私のゼミの学生の聞き取り調査によれば、学生達は友人関係に対して高い理想を持ち、「でも、そのような人はいないから寂しい」と感じています。ではそのために積極的に行動しているのかといえば「自分を晒すと拒絶されるかもしれない。だからできない」。しかしお互いに自己開示しないと何でも言い合える理想の関係は手に入らない――そんな厄介なジレンマの中にいる。

今では若者には将来像は不安定なものに映り、恋愛・仕事・友人……あらゆる人間関係を得るために何かしら「自分を磨け」と言われ、語学や資格の勉強からコミュニケーション能力、身だしなみまで、さまざまな場面で自分の実力を証明させられ続ける社会のなかにいます。そうなると弱い部分はとてもじゃないけど他人には見せられない。

今の日本社会。最新の統計や分析ツールは揃っているのかもしれないけれど、より人間味のある社会へ、その為には、世代を超えた対話が欠かせない。そして、「心に余裕のある」大人たちが必要。

創造の場所であるカフェ代のサポートを頂けると嬉しいです! 旅先で出会った料理、カフェ、空間、建築、熱帯植物を紹介していきます。 感性=知識×経験 மிக்க நன்றி