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【自分の武器で生き抜いていけるか(「パラサイト」を見て20代OLが思ったこと)】

※ネタバレを含みます※


私が大好きなJames Brown(あれです。ゲロッパの人。ファンクの帝王です崇めてます)がこんな事を言っていた。
「自分の子供には教育を受けさせたい。教育さえあれば可能性は無限大だ」と。
私の場合、幸せな事に両親の多大なご無理のおかげで幼稚園から大学まで浪人までさせてもらって(お父さんお母さんごめんなさい)教育を受けさせてもらった。
そして今、(せっかく入ったホワイト大企業を営業が辛いとかなめた事をほざいて泣きながら退職、プー太郎を経験して無職の大変さを学ぶという世間知らずのクソガキルートを経て)ありがたく定職につけているという現状が、どれだけありがたいことなのか、本作を観て改めて感じさせられたように思う。
(非常に陳腐な感想であるけど)


転職活動期間も、新卒就活期間も、働いている間も、企業様の、「学歴は気にしないよ」という建前のもと、実際学歴は大いに私の味方をしてくれたと心から感じている。
もちろん、学歴至上主義なんてもういつの時代の話だよ化石かよお前という感じなのは重々承知なのだけど、特別な資格も、職歴も、秀でた能力があることを証明する武器が何も無い私にとっては、学歴は、弱い私の唯一のれっきとした武器だったのである。
(なので学歴が人生の中で全くの無駄かと言われたら、そうではないと否定したい)


さて、やっと話をパラサイトに戻すが、本作は「貧富の差」という、今まさに韓国で起こっている(そう、今まさに起こっている)社会問題を、コメディという軽やかさと殺人という底冷えするような重々しさで強烈に表現した作品だったと思う。
韓国といえばアイドル、グルメ、コスメ(ワイは韓国コスメが大好きなので韓国コスメまとめ書いてくれてる人本当にいつもありがとうございます)など様々な分野で注目を浴びている国といイメージが強く、外から見れば景気が良さそうだが、実際就職は非常に困難と聞く。
(有名大学を卒業しても、警備員の仕事に募集が殺到するほどだって映画内でパパが言ってた)
本作は、ギリギリ外の地面が見える程の小さな窓のある、半地下に住む無職の4人家族の物語だ。
ある日長男が友達に金持ち一家の娘の家庭教師を頼まれた事から物語が動き出す。
長男は受験に何度も失敗した経験を生かして家庭教師の職を勝ち取る事が出来るのだが、この細かい描写でも韓国の現状がよく描かれていると感じた。
日本では受験の失敗は非常に大きな心の傷を残すだけで済むが、他に武器を身につければいくらでも活躍していける。
だが、韓国は一度失敗したらもう終わりなのだ。チャンスは無いようなものなのだという事がひしひしと伝わってくる。
長男の就職という最高のチャンスを生かして、家族は悪知恵を生かしてみるみるうちに全員で金持ち家族のもとに雇われる事に成功、安泰な未来が待っているように見えた。

が、誰かが職を手にするという事は、誰かが失うという事である。
家族が職を奪いとったのは、雇い主の屋敷の地下にある隠し部屋で密かに夫を匿っていた元家政婦の女だった。
無職ながら、なんとか陽の光の見える半地下で暮らしている家族もいれば、完全に光の無い地下で世間から存在を消した人間がいたのだ。
大きな屋敷に住み、裕福な生活を送る家族、半地下に住み、他人から職を奪いながらなんとか生き抜く家族、完全な地下から出てこられず、この世から姿を消した人間の存在があらわとなった。

金持ち家族は、半地下一家に対して、耐えられない臭いを感じるという。
不潔で、薄暗さを感じるような生乾きの嫌な臭い。
その臭いこそが、最終的に大きなカギとなるのだが、監督は非常に巧みにこの臭いを表現してみせた。
後半から、その臭いが、強烈に立ち込めて、染み付いて、仕方がないのだ。
思わず鼻をつまみたくなるような、強烈な、重たく暗い臭いが、怖くて、怖くて仕方なくなってくるのだ。
何か少しの失敗を犯せば、奈落の底に落下して、もう二度と陽の光を拝めない。
受験も、就職も、その後の人生も、失敗出来ない。絶対に。
そんな韓国の情勢がひしひしと伝わってくるようだった。

韓国だろうが日本だろうが、どこにいてもただぼーっと生きていく事はできない。
生き物として、人間として、生き抜いていくための術を身に着けなくてはいけない。
そのためには小さな事でも、自分の武器を明確にしていく事が大切なんだ。
半地下の家族達も、相当な知恵を絞って、自身の知識をフルに活かして職を勝ち取った。
水道管が破裂して、下水で家が浸水しても、惨めな思いをしても、それでも生き抜いていく力を、知恵という武器を振り絞って発揮出来ていたのだと、私は感じた。
もし武器が無ければ、武器を活かしきれていなければ、弱々しくこれが運命だと受け入れて死んでいっただろう。
貧しいときも、辛いときも、悪知恵でもなんでも、知識が自分の味方をしてくれる。
解決策を与えてくれる。
知識なら、努力で誰でも身につける事が出来るし、誰にも奪われない最高の財産だ。
そうやって少しずつ武器を身に着けて、生き抜いていきたい。
人生のどのイベントも自分の糧にして、成長していきたい。
強くなりたい。
せっかく人間に生まれてきたんだから、出来れば夢を見て生きていきたい。
夢をみる力も、明るく生き抜く力も、自分で勝ち取っていくものだ。
勝ち取るために、武器が必要なのだ、それをいかなる時も忘れたくない。
この映画を見て、人生からもっと学びたい、そして武器を持って強く生きていきたいと、強く思った。

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