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詩集
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2018年9月の記事一覧

思い出散歩

思い出散歩

思い出は 突然私に会いに来る

手紙も出さず 忘れた頃に

変わらぬ顔で 会いに来る

あの時と 同じ香りと あなたが言うから

手を繋ぎたくなるけれど

私のほうは 変わっちゃったよ 寂しいね。

光の記憶

光の記憶

電車が光だけを運んでいく

山からずうっと降りてきた線路は

田園から田園へ続く

暗い車体には 記憶がある

苦しみや安らぎ 虫の音や人の声

町の歴史を 覚えている

そして その光もまた 車掌の体温や 山の空気を吸い込んで

どこかへ運んでいくのだ。

私の性欲

私の性欲

絵の具を ぐちゃぐちゃにしたような液体が

潮の満ち引きのように かさを増したり 減らしたりしながら

心をざわつかせる

混沌とした色の中で それが紫であると 言えるときもあれば

黄のときもあり また 赤のときもあり 

或いは やはり何とも言えぬときがある

その色とりどりが 血流に乗って

私を支配する

すべての人は キャンパス上にあり

知らぬものこそ 汚れを見たいと。