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戯言感想帖

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購入した本をなんとなく紹介したり、読んだ本の感想を自由気ままに書いたりしています。漫画も含みます。
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2022年7月の記事一覧

田山花袋『少女病』を読んで

田山花袋『少女病』を読んで

「すっかり夢中になること」のたとえとして「うれしさに魂天外を飛ぶ」という表現があるらしい。

それほどまでに夢中になれる対象があることをうらやましく感じる反面、生きている動物の、生命の原動力とされる「魂」がぽーんとどこかに行ってしまうのは比喩表現とは言え、いささか恐怖を覚える。

さて、作中の主人公の男は表題の通り「少女」に夢中であり、彼にとって通勤時というのは少女を愛でる至福の時間であった。

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お気に入り漫画を紹介してみる①

お気に入り漫画を紹介してみる①

今日はスマホ内の漫画の本棚にある、お気に入り作品3つを思うままに紹介してみようと思う。
尚、さわやか王道な「青春ラブロマンス☆」みたいなものは皆無である。

『可愛想にね、元気くん』暴懲愛之助(ぼこりあいのすけ)という見るからに穏やかでないペンネームで同人活動をする主人公。彼は自らの描く漫画の中でクラスメイトの「やちみどりさん」を痛ぶっては興奮する、という秘密の趣味を持っていた——

メガネ+みつ

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夢野久作『けむりを吐かぬ煙突』を読んで

夢野久作『けむりを吐かぬ煙突』を読んで

些細な違和感を捨て置くことはできるだろうか?

人には誰しも「別の顔」がある。

本作の主人公と思しき男性は大手新聞社の外交部に勤めているが、何かしらの「スキャンダル」をネタに富裕層を恐喝する悪徳記者の顔も持つ。

さて、そんな彼が目をつけたのはさる伯爵の未亡人。果たして記者は彼女から上手く富を掠めとることができるのか?

未亡人となった南堂夫人。
彼女は自らの寝室を図書館に改造し、その部屋の屋根

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夢野久作『何んでも無い』を読んで

夢野久作『何んでも無い』を読んで

病的な虚言癖を持つヒロイン、姫草ユリ子が憎めない。

ひめくさ ゆりこ。
なんかもう名前からして可憐さが溢れている。

彼女は男女、老幼を超越して誰からも好かれる才能があるだけでなく絶え間なく嘘を繰り出す「虚構構築の天才」である。

ユリ子が看護師として働いていた耳鼻科の院長、臼杵(うすき)氏の手紙、という形をとって物語は始まる。

この手紙は、臼杵氏の大学の先輩にあたる白鷹(しらたか)氏宛てに書

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