「当たり前」ってなんだろう? 〜便利の隣にある不便さ〜
はじめまして。PILOTでエンジニアをしているイッチーです!
ある日、弊社代表が「SDGsに取り組むぞ!」と言い出しました。急に。SDGsってプラスチックゴミや二酸化炭素を減らすやつだよね?リサイクル?エコ?でしょ?と。でもそれって、大手企業や製造業がやるやつなのでは?という認識でした。お恥ずかしながら。
正直なところ、小さな会社のWEB制作の現場には無縁なモノと感じてしまったのが本音です。
そんな僕がプライベートでの “ある出来事” をキッカケに、少し考え方が変わったお話を書いてみようと思います。よろしくお願いします。
人や国の不平等をなくそう
SDGsの目標の中で、僕が一番興味のある事は「10. 人や国の不平等をなくそう」です。
社内で開催されたSDGsの勉強会で、17の目標について教えて貰ったのですが、その中にこの目標を見つけて、こういう事もSDGsなのかと知りました。
僕は子供の頃から、障害者に対しての不平等を感じる事が多くあるのですが、「人や国の不平等をなくそう」の中に障害者の不平等が書かれているのを見つけて、これだ!と思いました。
改めて意識してみると、日常にはたくさんの「不便」が存在している事に気が付いたんです。
一番身近な障害者
僕の両親は障害者です。
父は右腕に障害があります。右腕単体で動かすことはほぼできません。
母は左手に軽度の障害、左耳は聞こえておらず、右耳も聞こえが悪くて補聴器をつけています。
父が重たいものを持つ時にはサポートするし、母と話す時は少し大きな声で話す。そうやって育ってきました。
僕にとってこれは「当たり前」です。
でも、この話を誰かにすると、ちょっとだけ「えっ・・・」って反応をされる事が多くありました。
多少のサポートや工夫が必要とは言え、健常者と変わらない生活や仕事をしているのに。
そこには、障害者への偏見や誤解があるのではないか?と子供の頃から感じていました。
母の異変と手術
そんな両親と接していく中で、ある異変が起こります。
実家に帰った時、いつも通り少し大きな声で母に話しかけても、返事がありませんでした。どうやら聞こえていない様なのです。補聴器を外しているのかな?と思いましたが、耳を見るとつけているので、不思議に思いました。
父に聞くと、
聞こえていた右耳も聞こえが悪くなってきていて反応しない時も増えた事。耳鼻科で検査をしたところ、鼓膜の変形と耳骨(耳の中にある音を伝達する骨だそうです)が溶けてしまっている事。
手術をする必要があり、術後は数ヶ月間、右耳も全く聞こえなくなってしまう事。
暫くの間は、筆談での会話になるだろうと教えてくれました。
父からも、母からも、ショックと不安が入り混じった感情が溢れ出ていて、それが手に取るようにわかりました。もちろん僕も少しだけ不安がありましたが、そうなってしまったものは仕方ないし、今までと変わらず、必要な時に必要なサポートしていけばいいと、すぐに受け入れる事ができました。
不安だらけの両親を和らげながら、手術と筆談生活がスタートするのです。
音のない世界と日常にある不便さ
手術前から、術後を考慮した筆談生活が始まりました。
使っていた補聴器も外した方がいいとの事で、ほぼ術後と同じ「聞こえない」生活です。
母はリュックにヘルプマークをぶら下げ、筆談ボードと一緒に「私は耳が聞こえません。筆談での会話をお願いします。」と書かれたメモを持って出かけるようになります。
母が出かける時は、父か僕が付き添う様にしていますが、いざ一緒に行動すると、たくさんの不便や問題が見つかりました。
病院の待合室で名前を呼ばれても、呼ばれたことが分からない。
電車で移動中、事故や遅延が発生しても、すぐにそれに気づけない。
生放送のテレビ番組は、テレビの字幕機能を使っても字幕が出ずに、テレビの内容がわからない。
いずれも、音声によって情報が補完されて、初めて状況が把握できるのです。
サービスやコンテンツが、聴覚障害者の事を考慮しきれていないのではないか?と感じました。
買い物をするために入った店では、こんな事もありました。
スーパーのレジでは、筆談に応じてくれない。
多少の筆談は受け入れてくれるものの、母本人ではなく付き添いの人とだけ会話をするようになる
これは、企業や店舗のイレギュラー接客対応に改善が必要だと感じます。
逆に、いい発見もありました。
バラエティ番組はテロップが表示されるので字幕機能を使わなくても大体の内容がわかる。
外国語のドラマや映画は、字幕が全て出るので内容がわかる。
これは、番組演出や言葉の理解を目的としたものですが、文字が出ている事で聴覚障害者も助かる事に気づきました。
僕たちWEB制作者に出来ること
母の術後経過は、予定より少し遅いものの、少しずつ回復に向かってきています。
でも、「あー、よかった」で終わらせてはいけないように思いました。
今回感じた不便や問題は、みんなが意識していくことで改善出来るように思います。
自分の仕事でも出来ることがあるんじゃないか?と思ったので、WEB制作の「アクセシビリティ」について調べてみることにしました。
知識として知っているものとしては、読み上げブラウザに向けた対応として、
画像に代替テキストを付ける。
見出しレベルが分かるようにHTML構造をしっかりと書く。
キーボードで操作できるようにする。
一定以上のコントラストを保つ。
など、視覚障害者向けの対応が多い印象です。
両親の手と耳をカバー出来ることはないかと思い、上肢運動障害と聴覚障害への対応にフォーカスしてみます。
【上肢運動障害】
マウスなどのポインティングデバイスの細かな操作が難しいので、マウスホバーやドラッグアンドドロップを使わなくても操作が出来るようにする。
ポインティングデバイスが使えないので、キーボードだけで操作できるようにする。
【聴覚障害】
電話での問い合わせが出来ないので、フォームやメールで問い合わせが出来るようにする。
キー入力が出来ない人に向けてFAX番号を載せる。
動画と合わせて書き起こしのテキストを提供する。
動画では字幕や手話など音声以外の方法で情報を伝える。
過去の案件を振り返ってみると、マウスホバーで出てくるメニューのサイトがあったり、FAX番号が記載されていなかったりと、対応が足りていないところが見つかりました。
逆に、問い合わせフォームはほぼ全ての案件で対応されていたり、動画にはテロップがついていたりと、自然と出来ている事も見つかりました。
こうやって一つ一つ見ていくと、WEB制作者に出来ることはまだまだたくさんありそうです。
SDGsに向けて、みんなが出来ること
いつもの「当たり前」は、少し視点を変えるだけで、見え方が変わってきます。
普段、便利だと思っている事でも、誰かにとっては不便に感じる事があるかもしれません。
それは、障害者に限った話ではなく、事故や病気で障害者と同じ状況は生まれてしまうし、体格や利き手(左利きの妻は不便を感じるシーンが多いようです)の様な個人差にも言える事なんじゃないかと。
SDGsは、何も難しい話ではなく、いつもの「当たり前」に疑問を感じ、人の事を考える優しさを持って、行動に移そうよって事なんじゃないかと思いました。
2030年まであと8年。多分あっという間に過ぎ去ります。
何も出来なかったね、で終わらないように、少しでも行動に移していきたいと思いました。
最後に、この記事を書くにあたり、障害の事や家族に起きた出来事を公表する事を快く受け入れてくれた父に感謝。
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