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エッセイ

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#言葉

言葉が喚起する / エッセイ

言葉が喚起する / エッセイ

 昨夜は祝日前ということもあって繁華街には人が溢れかえっていた。まだ遅くはない時間にも関わらず、酔いの赤ら顔をパンパンにしてシャシャシャ(勝俣や蛇ではない)と仲間と笑っている。黒いトレーナーを着た男が道端にしゃがみ込み、そこにどこからともなく明るい髪の女がやって来て隣に落ち着いた。あっちからもこっちからも人が湧いてきては錯綜している。どぎついネオンにアルコールと食い物が混じり合って軒を連ねて口をあ

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喋るのが下手になった / エッセイ

喋るのが下手になった / エッセイ

 「吉本入ったらええわ」

 僕の生まれ育った大阪では、ひょうきんな子供を捕まえて大人はこう言いました。大阪だけということはなく、近隣もそうだったのではと思います。ひょうきんと書きましたが、関西では「ちょけ」と言います。「ちょける」という動詞の名詞形でちょける人を表す。ちょけるというのは、ふざけるという意味といってよいと思います。

 僕はちょけでした。人見知りのちょけだからややこしい。隠れちょけ

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文章を書くためのポイント / エッセイ

文章を書くためのポイント / エッセイ

 文章を上手く書きたいという欲求がある。しかし、ではなぜ「上手く書きたい」のか。その目的が「いいね」である場合がSNS全盛の現代では多いのだろうが、僕はまずこの「いいね」のことは忘れるほうがよいと思う。どのような動機であってもよい、という見方もあるにはあるが、こと「いいね」についてはそうではない。なぜなら「いいね」を動機にしながら、これに振り回されずに書ける人間など類い稀で、まずもってそれが自分だ

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「思っていて」って何や / エッセイ

「思っていて」って何や / エッセイ

「僕はそれはちょっと違うと思っていて、云々」
「私は優先順位を見直すべきだと思っていて、云々」

 この「思っていて」という言葉が僕は嫌いである。一見するとこれといった特徴のない言葉だが実はそうではない。この言葉には自尊心と承認欲求が潜んでいるのである。自尊心と承認欲求から生じ出た言葉とも言える。「思うのですが」でも
「思います」でもなく、「思って『いて』」なのである。既に、なのである。既に思って

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書くことについて / エッセイ

書くことについて / エッセイ

 なるべく毎日書くようにしている。この「なるべく」というところが我ながら甘いのであるが、まあ書いている。とりとめのないエッセイであったり、何らかの考察による論文調のものであったり、描写のための文章によるスケッチなどである。創作は今年の二月頃に百枚程度のものを書いた。そのときはいつになく疲弊した。書き上げるまでに一年程掛かった。推敲のために冷却期間としてトータル二ヶ月は寝かせていたが。納得出来ない描

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