短編小説(813字)|お手々を突き出す女の子
こんな夢を見た。
クリスマスが間もなくやってくる頃のことである。異常に寒い仕事帰りの夜、私は1人で路地裏を歩いていた。
今日のお客さんは、とても優しいおじさんだった。不馴れな私の仕事にも関わらず、お金をはずんでくれた。これでお父さんもお母さんもきっと喜んでくれるに違いない。それにしても、今夜は異常に寒い。私は家路へ急いでいた。
そのときである。こんなに雪が舞っているのに、まるで夏のような服装をして、お手々を突き出している1人の少女が視界に入った。
「お嬢ちゃん、そんな格好していたら死んじゃうよ。これ上げるから、早くオウチに帰ったほうがいいよ」
私は首に巻いていたマフラーを少女のお手々の上にのせた。
「お姉さん、どうもありがとう。でもね、あたし、マフラーなんかもらってもオウチに帰れないの」
私は驚きながら少女に尋ねた。
「えっ?なんで?どうしてオウチに帰れないの?」
少女はニッコリとしながらこう言った。
「う~んとね。お父さんはあたしが1万円以上もらって来ないと、帰ってきちゃダメだよって言ってたから」
私はその言葉を聞いてピンときた。なぜこんなに寒い夜に、こんなに薄着の少女がこんなところで、お手々を突き出して立っているのかということが。。。
きっと、この少女のオウチは、私とおんなじで、生活が厳しいのだろう。
「お嬢ちゃん。今日ね、お姉さん、お仕事して、優しいおじさんから10万円もらったの。全部、お嬢ちゃんにあげるからさ、早くオウチに帰りなさい。きっと、お嬢ちゃんのお父さんは、あなたをオウチに入れてくれるでしょう」
私は今日もらったばかりの10万円を、少女のお手々の上に置いた。
そのとき、私は遠くで、何か大きな音が鳴るのを聞いた。
明くる日、爆心地を訪れた兵士はこう言った。
「かわいそうにね。関係のない二人が、砲撃の犠牲になるなんて。けれど、即死だったみたいだし、心なしか、二人ともニッコリ笑っているみたいだ…」
(813字)
AIによる翻訳
I had a dream like this.
It was around the time Christmas was approaching. It was an unusually cold night after work, and I was walking alone in the alley.
Today's customer was a very kind old man. Despite being unfamiliar with my work, he gave me extra money. Surely, my father and mother will be happy with this. But tonight is unusually cold. I hurried on my way home.
And then it happened. There was a girl, dressed as if it were summer, with her hands sticking out, even though it was snowing heavily.
"Little girl, if you dress like that, you'll catch a cold. I'll give you this, so it's better to go home quickly." I put the scarf I had around my neck on the girl's hands.
"Thank you, big sister. But, you see, even if I receive a scarf, I can't go home."
Surprised, I asked the girl.
"Huh? Why? Why can't you go home?"
The girl smiled and said.
"Well, you know. My father said I can't come home unless I bring back more than 10,000 yen."
I immediately understood those words. Why is a girl dressed so lightly, with her hands out, standing here on such a cold night... Surely, her home is just like mine, and they are living a tough life.
"Little girl. Today, I worked and received 100,000 yen from a kind old man. I'll give it all to you, so go home quickly. I'm sure your father will let you in."
I placed the 100,000 yen I had just received on the girl's hands. At that moment, I heard a loud noise in the distance.
The next day, the soldier who visited the epicenter said this.
"It's a shame. Two unrelated people became victims of the shelling. But it seems they died instantly, and oddly enough, they both seemed to be smiling..."
⚠️
ドストエフスキー(小沼文彦[訳])
「作家の日記 2」、ちくま学芸文庫、pp.40--43をもとにした創作です。
1876年1月「お手々を突き出す男の子」。有名な「キリストのヨールカに召された少年」の直前に置かれた物語です。
創作のため、話の内容は大幅に変更しています。
#創作大賞2023
#オールカテゴリ部門
#ドストエフスキー
#作家の日記
#お手々を突き出す男の子
#キリストのヨールカに召された少年
#英語がすき
#私の作品紹介
#短編小説
#戦争反対
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします