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短編小説 | 哲学談義「君たちはこのウ○コ💩を食べるか」

 ここにつづる物語は、詩「友よ!さようなら」の前段にあたる物語である。


 ずっ~と昔の大学生の頃の話。夏休みの頃、帰省せずに寮に残っていた連中と部屋で朝まで酒を飲んだことがあった。

 その時、どういう経緯だったか忘れたが、友人の1人がこんなことを言った。

 曰く、
「例えばここにウンコ💩があったとする。完食したら1000万円もらえるとしたら、食うか?」と。

 皆、口々にこたえて曰く、
「『いただきます!』じゃないか?ふつう😄。1000万だぞ!」
「いや、人間の尊厳にかかわるから、1億円積まれてもオレは食べない」と。

 亦た或る者曰く、
「乾燥させて、粉末にして、何か他の味付けをして良いのか、否か」と。

「いや、この議論の本質は、おいしく食べられるか否かということにあらず。カネのために、ウンコという汚いものを食べることは倫理的かどうか、ということではないのか」と。

「ウンコを粉末にするとか、しないとか、『形而上的』な議論を『形而下的』な議論に落とすのは、良くないのではないか?」

「いや、ウンコのような話のことを『形而下の話』と言うのであって、今のような場面で『形而上』とか『形而下』とか言うことは、いたずらに議論を混乱させるだけではないだろうか?」

亦た別の者曰く、
「カネもウンコも汚いことには変わりがない。問題の本質は、まったく性質の違うカネとウンコに、なぜ同じ『汚い』という言葉を使うのかということではないだろうか?」と。

「いや、現実的にそのような状況は起こり得ない。どこにウンコを食ったらカネがもらえる世界があるのか」と。

「哲学の議論とは、実際に起こるとか、起こらないということとは関係ない。あくまで、究極の状況を設定した上で、君ならどのような行動をとるのかと、議論を戦わせることに意義があるのだ」と。

或る優秀な先輩、ボソリと曰く、
「議論が深まってきたようだな。ところで、もう1本、『八海山』が残ってるけど、みんなで飲むか?」

「飲みましょう!」
「飲みあかしましょう!」

 みんな次の日には、『形而上学的な話』などまったく覚えておらず、ただ二日酔いに苦しんだとかいう話である。


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