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レ・ミゼラブル




英語だけでは英文学は読めない


 英語で小説を読むためには、英語を知らなくてはならないが、英語だけでは作品全体を読むことができないことはザラにある。

 「1984」で有名なジョージ・オーウェルの「Down and Out in Paris and London」をPenguinの英訳で読んでいたときも、文中にフランス語が多かった。フランス語の部分は、フランス語のまま。フランス語の部分はわからないから邦訳で確認したことがある。


 トルストイの「戦争と平和」は、大部分はロシア語で書かれているが、フランス語も所々使われている。英訳で読んでみようと思ったことがあるが、縮約版でもかなり分厚い。フランス語が読めないことも、断念した理由のひとつである。

 英文学も英語だけで書かれているわけではないから、ちゃんと理解するには、ある程度フランス語も読めなくてはならない。


⚠️邦訳の場合、外国語(英文学だったら英語以外で書かれた箇所、例えばフランス語とか古代ギリシア)の箇所も、ほぼ例外なく日本語に訳されているが、英訳の場合は外国語で書かれた箇所がフランス語ならフランス語のまま訳されていない場合が多い。


「レ・ミゼラブル」は読んだことがない


 そういうわけで、(別にフランス語会話をしたいわけではないが)英文学を理解するために、フランス語を学んでみようと思ったことがある。
 フランス語の入門書(文法解説書)、辞書  (語彙数が少なくて薄い)  を買った。
 そのときに、フランス文学の作品を耳で聞いてみたいと思って買ったのが、ヘッダーに掲げた「『レ・ミゼラブル』を読みなおす」(稲垣直樹[編著]、白水社)だった。

 誤解のないように書いておくと、結局私はいまだにちゃんとフランス語を学習したことがない。とりあえず、日本語訳を読んで対応する箇所のフランス語がわかればよいので、仏和辞典があればなんとかなる。ただ、フランス語にはリエゾンやアンシェヌマンがあるから、発音は良くわからない。あ、でもそれなりにきちんと理解したいなら、基本的な文法や語彙はいつか覚えたいとは思っている。英文学の中に登場するフランス語が理解できるように。


「レ・ミゼラブル」引用(仏日対訳)


 結局「『レ・ミゼラブル』を読みなおす」は、付属のCDをテキストを追いながら何度か「聴読」しただけに終わっている。もったいないので、前掲書の一部分(pp52-55)を入力してみます😊。
 「レ・ミゼラブル」第1部第2編第12章のフランス語原文と日本語訳です。


Puis se tournant vers la gendarmerie : 
--- Messieurs, vous pouvez vous retirer. 
Les gendarmes s'éloignèrent. 
Jean Valjean était comme un homme qui va s'évanouir. 

それから司教は憲兵たちのほうを振り向くと、
「もうお引きとりいただいてけっこうです」
憲兵たちは引きさがった。
ジャン・ヴァルジャンはいまにも気が遠くなりそうだった。

L'évêque s'approcha de lui, et lui dit à voix basse : 
--- N'oubliez pas, n'oubliez jamais que vous m'avez promis d'employer cet argent à devenir honnête homme. 

司教はジャン・ヴァルジャンのすぐそばに寄ると、小声で言った。
「忘れないでくださいよ、絶対に忘れないでください。さしあげた銀を使って真人間になるとこの私に約束してくださったことを」

Jean Valjean, qui n'avait aucun souvenir d'avoir rien promis, resta interdit. L'évêque avait appuyé sur ces paroles en les prononçant. Il reprit avec solennité : 
--- Jean Valjean, mon frère, vous n'appartenez plus au mal, mais au bien. C'est votre âme que je vous achète ; je la retire aux pensées noires et à l'esprit de perdition, et je la donne à Dieu. 

なにか約束したなどと、まるで身に覚えのないジャン・ヴァルジャンは度を失ってしまった。司教が口にした一言一句に迫力がこもっていたからだった。司教は厳かな面もちで言葉を続けた。

「ジャン・ヴァルジャン、わが兄弟よ、あなたは悪の道を出て、もう善の道に入りました。私が購うのはあなたの魂なのです。あなたの魂を邪悪な考えと破滅の悪霊から引き離し、私は神に引き渡します」


長編小説を読むのは時間がかかる


 長編小説を読むときには時間がかかります。長いものだと数ヶ月かかります。だから、なかなか手が出しにくいものです。他の本が読めなくなります。

 器用な人は、数冊の本を同時並行で読めるのでしょうが、私は苦手です。
 
 数学の本と小説のように、ぜんぜん異なるジャンルなら並行して読めますが、複数の小説を同時に読むことは私にはできない。だから、長編小説を読むときは、慎重に選びます。

 長編小説。読み終わったあとは爽快感で満たされるのでしょうね。私も「レ・ミゼラブル」を読んでみようかな。

 読んだことのない長編小説を読むときは、読む前にいろいろ逡巡してしまうんです。




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