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#詩

靄と棘

靄と棘

ビー玉のような夜
夢が重なり
白木蓮が花開く

水鳥の一斉に飛び立つように咲き乱れても
そういう花はすぐに忘れてしまう

こっくりとした白は鈴の音をはこぶ
風鈴屋の騒音 戸を揺らす鐘
あの子に聞けるだろうか
お前に分かるだろうか

椿に演じ
梅に気取り
桜にうつつを抜かして春を聞けるか

胎動をこばみ
色めく埃をこばみ
まるで人肌の馴れ馴れしい春風に吐き気をもよおし
春からぽつんと取り残されること

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3. 花火

3. 花火

音は消え 灯は消え
地に火が降り 海に星降る

へその緒は切れ
皮膚は未だ溶け合うことを知らず
ひとは孤独な部屋をなだめて眠る

道を示す者さえ諦めた土地で
これからも生きるのだろうか
汚れた自分はどうすれば
伸ばされた手も 後ろめたい

夢の中でも私はうなされている
渦巻く罪悪感に出口はない
時折よみがえるのは母の記憶
甘く満たされていた香りの記憶
ごめんなさいと 今さら思う

汚れた私は何者

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2. 永劫

2. 永劫

悪い夢をみたときはあなたのところにもぐりこむ
やわらかい毛布と体
クリーム色と おしろいの香り
むんわりする あたたかい肌
くるまれて つつまれて

毛布の中はもうだいじょうぶ
しあわせは
あなたのぬくもりでまもられている

天使のホルンがきこえて
あたまが ぼうっとして
耳をあてた あなたのおなかの奥 痛みがうごいてる
わたしにだってわかるよ
わたしも ちょっと痛い
わたしも なでてあげるね

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1. 祝福

1. 祝福

真っ白な部屋に光が差す

私たちはきっと大丈夫
さみしさのなかで
混沌をいきてきた
長かった
ずっと 怖かった

遠くの窓にあかりが灯る
つかれた帰路を 急ぐ人を見る

道を示す
ここに勇気があるよと
みんなが気がつくように
道しるべをつくる
あなたと私の間に美しい星空を敷こう
きっと大丈夫だからね

栞

永遠に続けと願った時間がとうとう永遠に変わり
私たちは暗いお店で乾杯し、微笑み、
クリームパスタの一口目の感動に体を揺らした。

もう何回目だろう。

何杯もお酒を飲んだのに私はほろ酔いのままだし
あなたの顔は見飽きるほど見たのに素敵だし、
クリームパスタはいつまでも最初の感動をくれる。

朝は来ない。
新しい場所には行けない。
ほかの誰にも会えない。

「ここで二人なら、それでもいっか」
とあな

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ひるのひ

ひるのひ

こぎれいにして まちをあるく昼下がり
ひるの日と影をみつめる
前をあるく女のひとからいい香り
歩道橋をおりたら排気ガスのにおい
日焼け止めを塗ったのに首をきにする

おとしものが帰ってきた

大停電

大停電

大停電が起こったら線路の上をあるこう

たいしたことない
4日もあればじゅうぶんな距離よ

あなたも歩くのよ
ちょうど真ん中で落ち合いましょ

いや、でも、
あなたの方が歩幅は大きいだろうから
ちょっとこっち寄りにしようかな

ああ、でも、
あなたがつらいのはいやだな
ちょっとそっち寄りにしよう

なによ、わかったわかった、
真ん中にしましょうね、はいはい
#詩

光

ふたつだけもらったこの手
ひとつは心臓を握りしめている
もうひとつはお花をそっと持っている

わたしがわらうとふわっと香るの
それが嬉しくて笑っちゃうの

あなたにも
あなたのお花がありますように

探しておいで。
#詩

土曜日

土曜日

すりガラス越しに外を見やる
モザイクに手を当てて
冷たさを覚える

幸せをたべている
おぼつかない手で
味のよく分からない舌で

隣の部屋は
酔った大人たちの楽しげな笑い声

明け方の青い部屋
ひとりぼっちの畳の部屋
窓の外で鈴が鳴って
自分の瞳が見えた気がして
「おやすみ」って言うしかなかった
#詩

無題

無題

花を集めるように
好きな人も
自分も幸せになって

美味しいものをたべて
落ち着く場所を見つけて

素敵な言葉に出会って
よく眠って

そのままずっと
#令和 #詩

浴槽

浴槽

彼女は細くて死にそうで
目は泣き腫らして赤くなって
疲れた顔は朝よりも痩せていて
分からないことがたくさんあって
歯ブラシについた血も落ちた髪の毛も
吐き気がする

治らない唇の荒れも
ニキビも
鼻水をかみすぎて皮の剥けた赤い鼻も
日が沈むといびつになる心も
気持ちが悪いのだろう
ひとつ分かったの、
誰にも言えない
大きな大きな恥
気づいてしまったの
彼女はそのまま静かに顔を歪ませて
残ったジャス

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スローバラード 3.11

スローバラード 3.11

その日は星が綺麗でした
壊れた町の唯一の癒しでした
寒い車の中で毛布にくるまって
けたたましい速報に何度も起こされ
普段書かない日記に思いを綴りました
その日記もどこかへ行ってしまい
12歳が何を思っていたのか
今ではぼんやりしてしまいました

なかなか家に帰れなかったこと
小学校のグラウンドで家族を待ったこと
みんなで丸くなって座ったこと

やっと家に帰って
大好きだったモーツァルトの楽譜が

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東京は絶景

東京は絶景

雨が降る夜の町、キラキラしていて、雨の懐かしい香りがして、人通りが少なくて、静かで、優しい

夜が自分を守ってくれるような、肯定してくれるような、私だけに秘密を打ち明けてくれるような、特別感

いいよ、みんなは家に帰したよ、今日の夜は君のものだよ、君だけに見せてあげるよって
そんな感じ

だから今夜はバスタオルをかぶって、濡れたベランダから町の雨を堪能する

私だけの景色、誰も見られない、今ここに

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