佐伯日菜子

演奏会のために書いてきた曲目解説のアーカイブ。 本番のまとめ記録も更新したい。 詩も書くことも稀にあるかもしれない。 東京藝大ピアノ科修士課程

佐伯日菜子

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  • プログラムノート

    今まで書いてきた曲目解説です ぼちぼち増やしたい

  • 祝祭

    3つの連作詩。フランク《前奏曲、アリアと終曲》に寄せたメモを形にしたものです。

  • 演奏の記録

    年ごとにまとめています。

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2023年 演奏の記録 〜順次更新していきます〜

更新が追いつかない! 5月5/16 口笛奏者 加藤万里奈さんの講演会 千葉市民会館にて、世界一の口笛奏者 加藤万里奈さんの講演会にお邪魔してきました♪ 中学の同級生で、節目節目で何かと一緒に演奏してきましたが、今回はなんと4年ぶりの共演🫶 大ホールいっぱいのお客様と、音楽だけじゃなくて笑顔も共有できる万里奈ステキでした! ソロのコーナーも作ってくれて感謝です🎹 ありがとうございました♪ 5/2 ユーフォニアムおさらい会 同期のユーフォニアム専攻 太田彩香(おおたさ

    • ブーレーズ/《12のノタシオン》

      ブーレーズ(1925-2016)はフランスを代表する作曲家で、指揮者、音楽教育者、音楽行政官としても活動していた。 この小品集が書かれた1945年は第二次世界大戦が終結し、音楽界にも大きな変化が起きた年だ。戦時中ナチスによって禁止されていた前衛的な音楽が解放され、各地で現代音楽の演奏会が積極的に開催されるようになった。 一般に現代音楽は難解とされるが、効果音や環境音のような響きは映画や魔法を"聴いて"いるかのようだ。また、音素材の相互に影響したり反発したりする様は、幾何学

      • ブラームス/4つの小品 Op.119

        ブラームス(1833~1897)の最後のピアノ独奏作品で、彼はこの小品集を「自らの苦悩の子守歌」と呼び、生涯を静かに見つめたものとなっています。 第1曲:間奏曲 ロ短調 人の間でもがく苦しみを受け入れ、抗わず、孤独を引き受けた穏やかな境地が感じられる作品。集が心をつたうような柔らかな憂いに包まれています。彼は敬愛してやまなかったクララ・シューマンに「あなたがきっと喜んでくださると思い、あなたのためにピアノの小品を書こうとしていました。(中路)全ての音から愛鬱が吸い込まれる

        • ブラームス/6つの小品 Op.118

          ヨハネス・ブラームス(1833‐97)によって 60 歳頃に完成された作品。 創作活動の長年の支えとなった恩人のクララ・シューマンへ贈られている。 ブラームスが最も多く作品を残したのは歌曲だった。 この Op.118 には言葉こそないが、やはり様々な歌とドラマがある。 第1曲 間奏曲 イ短調 光のような明るい響きの中で、随所に影を落とす短調の響きがにがい。 第2曲 間奏曲 イ長調 歌曲のような一曲。 懐かしさや慈しみのような空気が全体を包む中、1 つのメロディ

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          J.S.バッハ/トッカータ 嬰ヘ短調 BWV910

          ワイマール宮廷オルガニスト/楽師長の職を退き、ケーテン宮廷楽長に就任した後の1717年の作品とされる。32歳のバッハは作曲活動も精力的に行ない、多くの曲を書き上げた。 深遠で哲学的な精神世界にあるこの曲は5つの部分で構成される。 愛いをおびた幻想的な導入。 穏やかな悲しみをたたえながら言葉を紡ぐ緩徐部。 エネルギーをもった下降のテーマに現実を突きつけられる第1フーガ。 束の間の夢を見る、救いの推移部。 そして半音階の不吉な下降をテーマにもち、苦しみを背負うかのような第2フー

          J.S.バッハ/トッカータ 嬰ヘ短調 BWV910

          エネスク/ピアノ組曲第1番〈古いスタイルで〉 ト短調 Op.3

          エネスク(1881-1955)はルーマニアで生まれたヴァイオリニストで、その腕前は20世紀前半の三大ヴァイオリニストに数えられるほどであった。 第二次世界大戦によって祖国が共産圏の支配下 に入ったことでフランスに亡命し、その後戻ることはなかった。 《ピアノ組曲第1番》は弱冠16歳で書かれた最初のピアノ曲で、副題〈古いスタイルで〉のとおり、 バロック時代に栄えた組曲形式と音使いを特徴に持つ。 この頃エネスクは、ブラームスやワーグナーなどドイツロマン派音楽からも影響を受けてい

          エネスク/ピアノ組曲第1番〈古いスタイルで〉 ト短調 Op.3

          ヤナーチェク/《1905年10月1日 街頭にて》(ピアノ・ソナタ)

          ヤナーチェク(1854-1928)はチェコの作曲家。 自国の民族音楽や言葉の抑揚を研究し、語るような旋律語法を築いた。 彼はこの作品に次のような言葉を遺した。 ヤナーチェクの故郷チェコは、当時ドイツとの対立が高まっており、教育や一部の会話がドイツ語に制限されていた。 そのためチェコ語大学の設立を目指してデモが行なわれたのだが、1905年、 デモ隊はドイツ軍と衝突し、とうとう庶民の若者が命を落としてしまったのである。 この事件を知ったヤナーチェクは直ぐに筆を取り、わず

          ヤナーチェク/《1905年10月1日 街頭にて》(ピアノ・ソナタ)

          ラヴェル/《クープランの墓》

          モーリス・ラヴェル(1875-1937)はフランスを代表する作曲家で、こちらは40歳頃の作品である。 ラヴェルの時代よりもおよそ200年前、作曲家 F. クープランはフランス鍵盤音楽の礎を築いた。 当時はいくつかの舞曲や小曲を組み合わせて一作品とする「組曲」の形式が栄えており、その古の形式を借りて書き上げられたのが、この『クープランの墓』である。   「墓」という言葉から想像できるように、この作品には追悼曲の側面がある。 一つ一つの曲は、 ラヴェルと親交が深かった、そし

          ラヴェル/《クープランの墓》

          フランク=バウアー編/前奏曲、フーガと変奏曲

          セザール・フランク(1822-1890)はベルギーで生まれ、フランスで活躍した作曲家・オルガニストである。 この作品は『大オルガンのための6曲集』のうちの一曲で、40歳頃に完成した。 それまでの彼の作品は、当時流行した超絶技巧を取り込もうとしたものの、アイデンティティーに欠けると評され ることが多い。 しかしこの作品では、過度な装飾は取り払われ、その代わりにフランクの内的で深遠な世界が十分な魅力を持って現れている。 この頃の彼に多大なインスピレーションを与えたものの一

          フランク=バウアー編/前奏曲、フーガと変奏曲

          メトネル/6つのおとぎ話 Op.51より 第3曲 イ長調

          メトネル(1880-1951)はロシアの作曲家・ピアニストである。 ラフマニノフと仲が良く、互いを高く評価し、尊敬し合っていた。 当時ロシアは革命によって社会主義国家となり、作曲家たちは次々に他国へ亡命した。 メトネルもその1人で、40歳過ぎにドイツに渡り、その後各地を経てイギリスで成功を収め、そのまま定住した。 余談ではあるが「ニコライ・メトネル」という星があり、これは2003年に彼にちなんで名付けられた。 音楽史の時代区分においては近代に属するメトネルだが、音楽

          メトネル/6つのおとぎ話 Op.51より 第3曲 イ長調

          J.S.Bach/パルティータ第6番 ホ短調 BWV830より〈トッカータ〉

          1725〜31年、J.S.バッハが46歳になる時までおよそ6年にわたって推敲を重ねながら書かれた。 パルティータとは変奏曲の一種であり、舞曲を中心にまとめられた組曲のことを指す。 その中で 各小曲は全て同じ調で書かれ、統一感が図られる。 バッハは鍵盤楽器のために6つのパルティータを書いた。それぞれキャラクターは異なるが、その全てに綿密な構成と展開が用意されており、非常に充実した内容を持つ。 第6番は強い芯と孤高さを感じさせる、シリアスでドラマチックな作品である。 そ

          J.S.Bach/パルティータ第6番 ホ短調 BWV830より〈トッカータ〉

          靄と棘

          ビー玉のような夜 夢が重なり 白木蓮が花開く 水鳥の一斉に飛び立つように咲き乱れても そういう花はすぐに忘れてしまう こっくりとした白は鈴の音をはこぶ 風鈴屋の騒音 戸を揺らす鐘 あの子に聞けるだろうか お前に分かるだろうか 椿に演じ 梅に気取り 桜にうつつを抜かして春を聞けるか 胎動をこばみ 色めく埃をこばみ まるで人肌の馴れ馴れしい春風に吐き気をもよおし 春からぽつんと取り残されることに 耐えてこその春だ

          2022年 演奏の記録

          2022年もありがとうございました。 結びあがったご縁がたくさんあり、活動の幅が広がった充実の1年でした! 12月12/19 長野県高遠高校アウトリーチ 大学同期にお声がけいただき、雪の長野県にアウトリーチに伺いました。 演奏曲 ダマーズ:フルート、オーボエ、クラリネットとピアノのためのカルテット クリスマスメドレー🎄 フルート 宮城薫(かおる)さん オーボエ 上條晴翔(はると)さん クラリネット 木寺沙都さん 12/17 取手市長賞受賞者による記念演奏会 同期の

          2022年 演奏の記録

          2021年 演奏の記録

          自分がやったことを一気に見返せる場所があるといいなと思い、ひとまず2021年をまとめてみました。 12/26 有森門下の恒例行事になりつつあるベヒシュタイン汐留でのコンサート。今回のテーマは2021年にアニヴァーサリーイヤーを迎えた作曲家でした。 ファリャ:交響的印象的『スペインの庭の夜』 (サマズイユ編 2台6手版) ブルックナー:交響曲第3番 ニ短調 (マーラー編 1台4手版) の2曲に参加しました。 誰かと一緒に音楽をすると、自然に音楽に向かっていく勇気がもらえ

          2021年 演奏の記録

          3. 花火

          音は消え 灯は消え 地に火が降り 海に星降る へその緒は切れ 皮膚は未だ溶け合うことを知らず ひとは孤独な部屋をなだめて眠る 道を示す者さえ諦めた土地で これからも生きるのだろうか 汚れた自分はどうすれば 伸ばされた手も 後ろめたい 夢の中でも私はうなされている 渦巻く罪悪感に出口はない 時折よみがえるのは母の記憶 甘く満たされていた香りの記憶 ごめんなさいと 今さら思う 汚れた私は何者か それでも生きなくてはいけないのだろうか ゆるしてと天に叫び 自分に叫び 何を

          2. 永劫

          悪い夢をみたときはあなたのところにもぐりこむ やわらかい毛布と体 クリーム色と おしろいの香り むんわりする あたたかい肌 くるまれて つつまれて 毛布の中はもうだいじょうぶ しあわせは あなたのぬくもりでまもられている 天使のホルンがきこえて あたまが ぼうっとして 耳をあてた あなたのおなかの奥 痛みがうごいてる わたしにだってわかるよ わたしも ちょっと痛い わたしも なでてあげるね ねえ ママ あたたかく やわらかく とかして しあわせはもろいなんて おしえな