ブラームス/6つの小品 Op.118
ヨハネス・ブラームス(1833‐97)によって 60 歳頃に完成された作品。
創作活動の長年の支えとなった恩人のクララ・シューマンへ贈られている。
ブラームスが最も多く作品を残したのは歌曲だった。
この Op.118 には言葉こそないが、やはり様々な歌とドラマがある。
第1曲 間奏曲 イ短調
光のような明るい響きの中で、随所に影を落とす短調の響きがにがい。
第2曲 間奏曲 イ長調
歌曲のような一曲。
懐かしさや慈しみのような空気が全体を包む中、1 つのメロディーが色や形を変えながら何度も登場する。
言葉をひとつづつ確かめながら、誰に歌っているのだろうか。
第3曲 バラード ト短調
歴史や架空の物語を扱う音楽はしばしばバラードと題される。
この小品集においてブラームスは、演奏者と聴衆の想像を妨げないためにほとんどの曲を一律に『間奏曲』と名付けたが、第 3 曲と第 5 曲には敢えて具体的なタイトルを与えた。
若く痛々しく邁進するエネルギーがほとばしるが、メロディーに託される歌心は第 2 曲から忘れられていない。
途中には浮遊感のある幸せな音楽が差し込まれ、この曲の物語に想像が膨らむ。
第4曲 間奏曲 ヘ短調
歌がほどけてしまうような不安な表情をもつ。
中間部では問いがこだまし静かに波紋が広がる。
第5曲 ロマンス ヘ長調
優しい歌に包み込まれる一曲。いくつもの歌声が呼応しながら流れていく。
泉が湧き、花の香りが漂うような中間部も絶品。
第6曲 間奏曲 変ホ短調
一瞬にして霧に包まれた世界へと変貌する。
ブラームスの淵を覗くようなこの曲には、一つの偉大な終焉を目の当たりにする凄みがある。
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