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詩「ポルトガル牡蠣ⅡL'Œuvre de Dieu」

「ポルトガル牡蠣ⅡL'Œuvre de Dieu」
黒実 音子


アルカションに嵐が来る。
アルカションに嵐が来る。

ご覧。
ジロンド川は搔き乱され、
ラフィド藻類達の
臓物(イン・ビボ)を破壊し、
死のカナリオを踊らせる。

生活排水の養分で育った
決して食用にはされない
銅を食べる[幸運な!!]牡蠣達を
舞い上がる泥底の中から
好塩性の細菌達が舞踏(カナリオ)に誘う。

ご覧。
嵐とは、
疫病を運ぶ悪霊なのだ。

腰椎を圧し折られるカナリーヤシ・・
整頓したカイガラムシ達の
美しさは蹂躙され、
公衆便所は破裂して
惨めな腸を嘔吐する。

海岸には
「環境傾度が!!
環境傾度が!!」
と叫ぶフジツボ達の悲鳴や、
「剥がされる(dé patelle)・・」
と呟く傘貝(ペテーレ)の声がこだまする。

ああ、つまり・・
命は瞬く間に死骸(シャルニエ)になるのだ。

打ち上げられた魚・・
船上で腐り始めた牡蠣・・
酒場で不貞腐れる
ル・モルレジャン号の船乗り達・・

ああ、それでも
バッハの変奏曲の様に
病んだ頑迷な対位法の先に
希望と信仰が見えるのか?
大天使は悪霊を踏みつけ、
裏切った傲慢と盲目を睨みつけ、
それを望むか?

アルカションの嵐が去る。
アルカションの嵐が去る。

命は再びジロンド河を覆う・・
死のカナリオの舞踏会は解散した。
貴族(ビブリオ)や、
憲兵(テナシバクラム)達は散り散りに
暗い汚水(ウォズゥジ)と泥の中へ・・
カナリーヤシが
作っていた日陰には光が差し、
公衆便所は
業者達によって修理される。

ああ、いいとも!!
それがお望みならば
そこから物語を始めるがいい。

だからキャプテン・パトワゾーよ。
船上の腐った
ポルトガルの牡蠣を
海に捨てるのだ。

死と再生・・
破壊と奇跡の物語は
人の子の手によっては
決して行われない・・

それは神の御業(ラ・ボ・ド・ジュ)だ。

安っぽい悲劇(ラ・トラジェディ)などでは満足しない
神の御心(ラ・ボ・ド・ジュ)なのだ。




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