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詩「サルデーニャで食されるSpondylus gaederopus(脊椎炎の牡蠣)についての詩」

「サルデーニャで食される
Spondylus gaederopus(脊椎炎の牡蠣)についての詩」
黒実 音子

朱くねじくれた骨は、
人生の苦悩を物語っている。

おお、歪な二枚貝、
脊椎炎の牡蠣(スポンディルス・ガエデロプス)の骸よ。
岩にしがみつく
頑なな貝だった骨よ。

繰り返されていた時間・・
紛失されていく力・・
消費される命について語ろう。

揺るがない冷水の中で、
お前がどんな夢を見ていたのか?

ああ、
嵐の日、
舞い上がった
深い海底の泥(ごう)の中に
お前を殺す
[粘り強い骨(テナシ・バクラム)]がいたのか?
暗い泥干潟(ジャヌラ・デ・マレア)から流れ込み、
何百年もの間、積み重ねられ、
貯め込まれていた
光の見えぬ泥の奥に
一体、何が埋葬されていた?

古代から眠っていた
様々な忌まわしさが・・
[暗がりの風土病の密葬(エンフェルメダド・エンデミカ・エンテラーダ)]が・・
お前を殺したのだ。

そう。
誰も制御出来ない命の奔流の中で
魚も貝も褐藻も殺害され、
埋葬されるのだ。

ああ、
それがサルデーニャの海だ!!

どんなに美しい日差しが
照り付けようと、
透き通った海水に
聖骸布の様な
紅藻(スフェルコックス)が繁ろうと、
光の届かない底に
置いて来たものが消え去る事はない。

原初には悪意のない
清潔だった窪みが、
今では
無限の時間の嘔吐物と、
日差しの糞尿(エクスクレメントス・デ・ルス・ソラ)と、
棺桶の錆びた釘を遺棄されてきた
[神も忘れた悲惨]
という名の地なのだ。

いつか、そこに沈む遺棄物達は
お前らを捕まえ、
想い出させるだろう。

自分が捨ててきたものを・・
忘れてきたものを・・
暗闇の中に置き去りにしてきた
屍衣に包まれた罪悪感を・・
貽貝(メヒジョン)に殺された
傘貝(ラパス)のミサを・・
陽気な太陽ばかり見つめ、
泥を見ようともしなかった
日に焼けた逞しい者達の無知を・・

おお、歪な二枚貝、
脊椎炎の牡蠣(スポンディルス・ガエデロプス)の骸よ。
夜の海の暗闇に迷う
汝の魂に平安を。

だからこそ我々は
キリストに祈らねばならぬ。
真夜中にミゼレーレを歌い、
どんなに美しい日差しが
石灰藻(リトタムニオン)に照り付ける中でも、
青褪めた礼拝堂で、
腫瘍の痛みを伴に、
常に魂の行先に
永遠の慈悲を乞わねばならぬ。

生きるという事は
血を流す
歪な放射肋を持つ事と同義故に・・







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