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「ラクリファギア」
黒実 音子



糞蠅達が涙を舐め、
牛眼虫症にかかった牛が、
じっと荒野を見つめている。

線虫(テラジア)は楽譜を読み、
ファドを歌うか?
兵士の傷から落ちる蛆は
パシュコアイシュの詩を朗読するか?

それを知りもしない者が
涙を喰い物にする者(ラクリファギア)を名乗り、
神殿に市を開く。

ああ、私は
「喉は開いた墓・・」という
聖書の言葉を思い出す。

死人の様な青ざめた顔の男達・・
引き攣って笑う人買い・・

「喉は開いた墓・・」

穢れてしまった
遺跡の松明を灯し、
照らせない暗闇の
向こうに蠢くものや、
どうにもならない一方通行の、
この世界の老朽化について
私は考える。

ああ!!
目から蛆が溢れ出し、
悪臭を放ちながら死んだ
アンティオコスよ!!

そうだ!!
我々はいつも
地に這いつくばり、
手の届かない天を共に見ていた・・

痛みと、汚れと、
恐れだけが
確たるものであるこの低地(バイシャ)で、
感情の無い
リムナイ貝達が這い回る沼地の中を藻掻き、
塵の中の高挙(エキソルタチオ)を見つける・・

それは、
恐れながら成し遂げる
レジスタンスか?

かつてのキリストの卑賤(エキシナニチィオ・クリスティ)は
尚更、我らを孤独にし、
ギターラの音を
気高く空虚に響かせた。

己の内に光を宿せない我らは、
夜の路地の歩き方を知らず、
そこに永遠の王国の門を
今も見つけられていない。

ああ、
油注がれし者よ!!

貴方は遥か昔に
約束の地に行ってしまった・・
それ以来、
我らはファドの音の向こうに
楽園の影を見て泣く、
彷徨い人となった。

それにしても
罪の炎の中でしか
詩篇を読めぬ者もいる。
九十人の奴隷を
1タラントンで売り渡した愚行を・・
己の家を想うあまり
神を焼く罪を・・
キリストを十字架に架けた過去を・・

我ら詩人は何度も繰り返しながら、
苦痛の中の二次代謝(メタボリト・セクンダリオ)として
[救い]を知るのだ。

夜に大声で笑うヒキガエルを踏み潰し、
最早、生き返らない
ラザロの棺桶を見つめ、
サトイモの花に宿る
コロカシオミアに賛美(ハレオ)を贈る事が
この低き卑賤の地で
生きるという事か?

「喉は開いた墓・・」

ああ、その時、
線虫(テラジア)こそが楽譜を読み、
ファドを歌うのだろう。

そして、ユダを罵りながら、ユダと踊り、
最も低い墓穴から楽園を見上げる。
その行為をする者だけが
ファドの中に
悲しみと気高さを
見つけられるのだ。







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