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体のトリセツ #8~スポーツにおけるユース期の戦略的な育成について<その2>成長期の乗り越え方

こんにちは、パフォーマンスビルダーの三浦千紗子です。
今日はユース期の育成についての続きを述べたいと思います。
ユース期を考えた時に一つの山になる「成長期」の乗り越え方です。

<ユース期の定義>
一般的に小学生世代をジュニア期、中学生世代をジュニアユース期、高校生世代から20歳までをユース期というように様々なカテゴライズがありますが、ここでは子ども(生まれてから)から20歳に至るまでを幅広く「ユース育成」というように定義し話を進めていきたいと思います。

※詳しくはこちらも参照ください


1.成長期の体の変化

スポーツにおけるユース期の育成を考えた時に、間違いなく一つのポイントになるであろう成長期。個人差はあれど体の変化が激しいこの時期をどう乗り越えるか。
男子であれば身長が伸びる、体が硬くなる、筋量がつく、女子であれば女性らいし体つきになり月経も始まる。これだけ体を使うスポーツですので、その土台となる体が変化するということは当然パフォーマンスにも変化が出やすい時期です。もちろん悪い変化ばかりではありませんが、一方で良い変化ばかりでもないのが成長期の特徴だと思います。

ちなみに、図にするとこんなイメージですね。
<その1>でお話しただるま落としのコマの話です。


体の変化により、今までバランスが取れていたコマが急にバランスを崩してしまったり、コマに遊びが無くなることで様々なパフォーマンスの変化が現れます。私の個人的な印象ですが、特に女子の方がその影響を受けやすい選手が多いように思います。

この体の変化を乗り越えやすくするためにも、良い姿勢を獲得しておけるとベストです。

〇良い姿勢
つまり体のバランスが良いものに対しては、多少バランスが崩れても元に戻しやすく、成長期の不安定さを乗り越えやすい

〇姿勢不良
(例として、猫背、反り腰、O脚やX脚が挙げられます)
元々バランスが崩れているものに更にバランスが崩れてしまうことで、パフォーマンスの下降が激しくなり、成長期の不安定さを抜けられない場合もある(みんながみんなそうではありませんが、体をつくるのにとにかく手間もかかりますし、何よりも過去の自分の方がパフォーマンスが良かったという現実に向き合うことがとても大変だと思います)


2.成長期の乗り越え方

と、ユース期の育成を考えた時に成長期をどのように乗り越えるか。
ここで大切になることが、その後のキャリアも見据えた育成です。

<男子>
男子は成長期に差し掛かると身長が伸びたり、筋量が発達することでぐっとパフォーマンスが向上することもあります。
その時にその力に任せてスポーツを継続していくだけでなく、柔軟性や体の各機能のブラシュアップにもアプローチするなど全身のバランスを見ながら体づくりをすることが大事です。成長期を越えて、例えば18歳、20歳と成人していく中でも伸び続けていくためには、結局のところ体のバランスが整っていることが重要になるからです。
元々だるま落としのコマがキレイに配列されていたはずなのに、偏った筋力アップにより自らそのコマのバランスを崩していることが男子あるあるだと私は思います。
目先の利益に囚われず、合理的にパフォーマンスを構築することがポイントです。
ちなみに、良い姿勢、適切な骨格の配列を手に入れて運動するということはそれだけで体の力を隅々まで使え、体のあらゆる細かい筋肉が協調し働く状態になります。
言葉が適切はわかりませんが、体のあらゆるインナーマッスルが高まりアウターマッスルに頼らなくてもハイパフォーマンスを発揮することができます。その力を引き出せることもだるま落としのコマのポイントですがここで書くと長くなってしまうので、また別の機会に書かせていただきますね。

<女子>
成長期に体が重くなることで、怪我も増えパフォーマンスもふるわないなど多様な変化が起こります。
そこで大切なのは、その次のステージのための準備として何をどうするかということ。起きてしまうネガティブな変化は最低限に抑え、次のステージへと繋いでいくこと。
そのために重要なのがこの次に述べる「羽」の力です。
簡単に述べるといかに「上半身の力をつくるか」です。
先ほどだるま落としのコマの例で述べたように、女子は元来上半身の力が弱いことに加えて、成長期に差し掛かると益々その傾向は強くなります。
コマのバランスを整えるために、上半身の力を開拓することで、その成長期の変化を乗り越えやすくなります。

男女共に、スポーツシーンにおいて、小学生の頃の顔ぶれと成人時の顔ぶれが異なることがありませんか? 「昔あの子すごかったよね」という選手、いませんか??
もちろん、これは体の変化だけでなく、様々なことに理由があるとは思いますが、ここに「成長期による体の変化」は様々な形で影響をもたらしていることは否定できないと思います。
本来もっとパフォーマンス向上できたであろう選手のパフォーマンスが頭打ちになってしまう。そこは「成長期をどう乗り越えるかを知っているか知っていないか」、「そのための環境があったかどうか」が大きいのではないでしょうか。

日本においては、この成長期の適切なサポートがまだまだ手薄だなと感じています。大人の体に関しては、以前に比べて「健康」の重要性も認知され、パーソナルトレーニングやフィットネスジム、各種ケアのサービスも広まってきました。
また大人(成人してから)のスポーツやアスリートに関しても以前より多様なアプローチが増えていると思いますが、いかんせん小学校高学年から中学生、そして高校生と一番体が変化する時期のサポート、もっと言えば計画的なサポートが不足している現状は否めません。
選手はただ純粋にそのスポーツを楽しみたい、うまくなりたい、勝ちたい、そう思って頑張っている一方で、怪我や体の変化によるパフォーマンスの変化を相談する場所が乏しい。親御さんも熱心にサポートしていてもどこにお願いして良いのかがわからない。ましてやこの大切な時期に計画的に、意図的にパフォーマンスを構築できている選手はほんの数パーセントにも満たないのではないでしょうか。
この時期をどう計画的に乗り越えるか、そして次のカテゴリを見据えて強化していくか、ここに日本のスポーツの大きな伸びしろがあるような気がしています。


3.羽が与える影響

その戦略的なサポートという視点も持ち合わせた中で、成長期のうちに身に着けたい武器があります。
それは「羽」の力を磨くことです。

「羽」とは、手から腕を介し肩甲骨、肋骨・鎖骨・胸骨周辺までの繋がりの部分を指す「肩甲帯」のことです。
<その1>で、人間の体の配列を整える際に「全身の力」を高めることが重要だと書きましたが、この成長期のタイミングで今一度この全身を見直すために、「羽」を磨いていくことでまた全身の力を呼び起こし、成長期を乗り越えやすくなります。

【羽の力がスポーツにもたらす力の一例】

「背中のあたりでグッと体を支えてくれる力」
・ジャンプ時の耐空時間の向上
・コンタクトスポーツにおける当たりの強さ
・フットワークの強さやスピードの改善
・足のあげやすさ、使いやすさの向上
・下半身の負担の軽減
・下半身の機能の向上~蹴り出す力の活かしやすさ
・ボールやシューズなど各種ギアの操作性の向上や機能の活かしやすさ

詳細はこちらもご覧ください

【羽の力を磨くメリット】

<男子>
「強い羽」ではなく「柔らかい羽」をつくることにより、体全身の柔軟性も向上しやすくなり、その結果体全体の爆発力も高まりやすくなり、全身のパワーも向上します。
成長期のこの時期に成人と同様のウェイトトレーニング等を行い筋力強化するのではなく、この羽の力を高めることで、全身の連動性は益々向上し、大きな筋肉に頼らなくてもより高いレベルでパフォーマンスを行うことができます。そうやって体の隅々までの力を総動員して動けるパフォーマンスを手に入れた上で、体の成長が落ちついてきた成人以降に必要であれば各種ウェイトトレーニング等を行うことで、更にパフォーマンスは向上しいくつになってもそのスポーツを楽しめる道をつくることができます(ウェイトトレーニングの取り入れ方に関してはまた何か別のnoteが必要ですね!書きます笑)。

<女子>
男子とは逆に、女子は羽に強さを出すことがポイントです。
だるま落としのコマの図を見てもわかるように、女子は上半身のコマが小さく弱いので、そのコマ(羽)の強化を行うことで全身のバランスが良くなり、体の状態も安定します。
どうしても下半身の力が優位な中で動き続けることで疲労がたまり、下半身の怪我の元になったり、質の良い練習を繰り返せないという現実が起きます。また上半身のコマが小さく弱くなってしまうことで、全身の繋がりが乏しくなってしまうため、ジャンプ力に制限が出たり、足があがりにくい、効率よくパワーを発揮できないという問題も起きます。
成長期に悩めるあらゆる女子選手にこのノウハウを活用してもらいたいくらい、大きな大きなポイントになります。

※注釈1
この女子の例ですが、クライミングのように普段から上半身を多用するスポーツの場合はまた別ですね。クライミングを始め上半身系のスポーツは私の十八番の一つですので、またこれも別の記事を書きます。

※注釈2
ここで「男子・女子」というワードを出していますが、あくまで一般的な傾向として、男子の傾向、女子の傾向という表現にすぎません。男子、女子ということも踏まえて体には個人差がある「個別性の原則」に則って戦略を考えることが大切です。

私は縁あってクライミングの世界にどっぷり浸ってきましたが、そこで得たノウハウがこのように成長期を乗り越える戦略に多分に貢献することができます。


4.終わりに

パフォーマンスビルダーの視点でユース期の戦略的なサポートについて述べました。
とにかく、根底にあることはその子が、その選手がいくつになってもそのスポーツを楽しんで欲しいということです。
何でもそうですが物事には波があり良い時と悪い時があると思います。
体というギアの性質を考慮して、戦略的に、計画的に体の力を引き出していくことで、その波を乗り越え更なる飛躍の糧にすることができます。

「知っているか知っていないか」その差が大きな違い。
このノウハウや視点を周りの人にシェアすることで、人生においてスポーツからたくさんの歓びを享受できる人が増えますよう!

さて、そのために私は何をすればいいんだ?笑
私もまた頑張ります笑。

※パフォーマンスビルディングに関するご相談はお問合せはこちらまで
performancebuilder.miura@gmail.com
マネージャー(朴香美)より返信させていただきます 


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