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体のトリセツ #8~スポーツにおけるユース期の戦略的な育成について<その1>引き出したい体の力

こんにちは、パフォーマンスビルダーの三浦千紗子です。
今日はスポーツにおけるユース期の育成方法について私の考えをお話したいと思います。スポーツを楽しむ全ての子どもが前向きに、より楽しく、スポーツから何かを享受できたら良いなあと考えているからです。
スポーツは体を最大限使って行うパフォーマンスですが、当然のことながら体は子どもから大人へと成長する過程で大きく変化します。その変化を上手にものにできるかどうかが、子どもの時だけではなく長きに渡りスポーツを楽しみ、より豊かな時間を過ごすためには必要な視点です。
私は今まで20年に及ぶキャリアの中で、ユース選手の育成に長く関わっており、中にはオリンピックのメダリストになった選手もいます。この経験がまた次の世代に繋がるよう記事を書きたいと思います。

<ユース期の定義>
一般的に小学生世代をジュニア期、中学生世代をジュニアユース期、高校生世代から20歳までをユース期というように様々なカテゴライズがありますが、ここでは子ども(生まれてから)から20歳に至るまでを幅広く「ユース育成」というように定義し話を進めていきたいと思います。

※記事の内容
<その1>
こちらの記事ではユース期のうちに獲得したい体の力と、その引き出し方について述べるため、どちらかというと生まれてから小学生になるくらいまでのイメージで話を述べています。
<その2>
<その1>を踏まえた上で成長期の乗り越え方やその年代のパフォーマンス構築のポイントについて述べています。


1.一番のミッション「良い姿勢づくり」

ユース期を考えた時にまず何を置いても欠かせない視点は体(骨格)の配列を整えることです。
簡単に言えば良い姿勢をつくること。
昨今姿勢の大切さはあらゆるところで目にするようになりましたが、子どもから大人へと体が発達する中で、いかにその姿勢を構築するかという点が最も重要です。
良い姿勢を持っていることで、怪我や疲労に悩まず、各種スポーツパフォーマンスの向上を楽しめるようになります。また成長期という一大イベントを前向きに過ごしやすくなります。

では良い姿勢とはどういうことか。
体を構成する骨格(骨や関節)の配列が整っている状態を指します。


整っていると良い姿勢


整っていないといわゆる猫背や反り腰に

いわゆる「良い姿勢」を構築できるかどうかが、スポーツをする上で土台となると言っても過言ではありません。
大切なことは「意識して良い姿勢でいる」ことではありません、ここ重要。
子ども自身が良い姿勢にしようとしてそうするのではなく、「自然といつも姿勢が良い状態にしてあげること」が大事な点です。
意識して良い姿勢をつくってしまうとその代償で体のどこかに負担がかかっているため、機能的に見ると実は良い姿勢から遠ざかっているということがしばしば起こります。

〇良い姿勢のメリット
・怪我や疲労に悩まずスポーツを楽しめる
・どんなスポーツであっても、常に進歩していきやすくなるため、楽しみや達成感を得やすい

〇姿勢不良のデメリット
例として、猫背、反り腰、O脚やX脚が挙げられます
・とにかく怪我が増える(満足にスポーツを楽しめない)
・得手不得手がはっきりし、上達する歓びを感じにくい
・成長期の壁やパフォーマンス向上の壁を越えるのに大きなストレスがある


2.スポーツと姿勢の関係

特にスポーツという視点で考えた時に大事な点は「いかに全身の繋がりを引き出すか、高めていくか」という点にあります。
「体の連動性」という言葉でも表現されますね。
どんなスポーツをするにしても、体は各部位が単発で働くものではなく、必ず全身を連動させてパフォーマンスを生み出しているからです。その全身の繋がりや連動性が高いことが怪我を予防し、パフォーマンスが頭打ちにならず半永久的に発展しつづけられることに繋がるからです。
その連動性が高まりやすい状態というのが、「良い姿勢」ということです。
何かしらの姿勢不良があると体の各機能は合理的に連動しません。

<テスト>
ひとつだけ簡単なテストを。
わざと猫背になって手をバンザイする、次に良い姿勢になってバンザイする。
これを体感すればイメージしやすいですね!
これでボールを投げたら…、これではジャンプしても上に跳べず…。
これは一つの例に過ぎませんが、このように体は連動しており、良い姿勢であることがその連動性を引き出すための大切な条件になります。

詳細はこちらの記事もご覧ください。


3.引き出したい体の機能:だるま落とし

ではどうしたらいつも無意識で良い姿勢でいられる状態になるのか。
子どもの体が発達する過程の中で何をすることが大切なのか。
ここでは主に2つの点に絞ってお伝えします。

①足の機能を高める

皆さんだるま落としってご存知ですか?
人間の体の構造もだるま落としのようになっています。


これですね

体の中で一番下のコマになるのが「足」です。

体を支える上で一番基点となるのが地面と接している足のコマで、その足のコマが不安定であれば当然上のコマも不安定になります。
また足のコマが安定することにより、体の仕組み上骨盤の安定性も高まり、体全体の安定性を獲得し、上半身と下半身の繋がりも良くなるため、効率よく力を使えるようになります。

<テストしてみましょう>
そのためまず何を置いても重要視するのは、「足の機能」です。
足の裏の三角形(親指の付け根、小指の付け根、踵の真ん中をついないだ三角形)と足の指が地面についていることを確認しましょう。
その状態でスクワットができるかどうか。
ここが全ての基点です。
足の裏が正しく機能している状態で股関節と連動していることを確認しましょう。

②体全身を繋げる

① と並行して体全身を繋げる作業をたくさん行えると尚良いです。
ポイントは「上半身を使うこと」「様々なスポーツや遊びを行うこと」です。
0歳児の頃のハイハイから始まり、ジャングルジムにうんてい、鉄棒、最近では子ども向けのクライミングウォールも目にする機会が増えました。
特に小学生になる前の期間に上記のようなさまざまな動きをする機会を多くもつことが重要です。

どうしても人間は歩行が動きの基本になるため、下半身をたくさん使う傾向になりがちです。ただ全身のバランスを考えた時には、日々の遊びの中で意識して上半身の動きや全身を繋げる動きを取り入れるくらいでちょうど体のバランスも整います。
そして小学生になってからも球技やバトミントン、アスレチックなど遊びの中で体に多様な動きを取り入れられると良いです。


4.そのためのポイント:体の旬を活かす

人間の体には元来必要な機能が十分に備わっています。
ここで述べているように「良い姿勢」を体現できるだけの力も十分に備えています。
であれば、どうしたらその力を引き出していけるのか。
その一つのポイントが「体の旬を活かすこと」要は、それぞれの年代で引き出すべき力を引き出し続けてあげることです。

●0歳児
寝返りやハイハイなど体を繋げる基本の運動を習得する
●1歳児(歩き始め)
歩行を覚え、歩く中で自然と立ったりしゃがんだりもするのでスクワット動作も習得する
●1歳児~2歳児
ここ重要、併せて簡単な遊具を使いながら全身の連動性を高めたり、ぶら下がる、全身を使う遊びを積極的に取り入れる
●3歳児~
全身を使う遊びの幅を広げる
●小学校低学年
球技や水泳、アスレチックなど全身の動きの多様性を重視する

とても大まかですがこのように人間の体の発達には各段階があります。
その時その時に引き出せる力を引きだすためのアプローチをすることが本当に一番大切なことです。

ではこのタイミングを逃してしまったらもう終わりなのか?
ベストなのはこの体の旬を活かすことですが、仮にベストでなくともまだまだ小学生や中学生のうちは体にも変化は出やすく適切なアプローチで挽回できる印象は多分にあります。
できれば男女共に筋肉がしっかり発達する前にこれらの姿勢を獲得できることが理想的だと思いますが、筋肉が発達した後、また成人し大人の体になった後も、アプローチ次第で体は十分に変化をもたらす余地があります。
ただ、後からアプローチする際には多少の(いや、わりと)手間がかかるので、できればその時その時の旬で体の力を引き出しておいてあげることが理想的ですね。


5.専門的な競技との付き合い方

子どもがスポーツをするとびっくりするくらいの吸収力を発揮することがあります。
やったらやった分だけ、もしくはそれ以上に上達する、成果が出る。
そして本人もそのスポーツが好きであればなおさら一つの競技に特化して取り組みたくなる、取り組ませたくなるものだと思いますが、ここにユース育成の大事なポイントがあります。早くから専門的な競技のみ取り組み続けることで下記のようなデメリットが生じます。

・体の使い方が偏ることで怪我をしやすくなる
・競技を楽しむだけの体の土台ができておらず、パフォーマンスが頭打ちになりやすい(早めのピーク設定になってしまう)

図にするとこんな感じです。

一見パフォーマンスは向上しているように見えますが、ぽきっと折れやすい諸刃の剣。怪我に悩まず、そしていつまでも発展し続けるためには、体力の土台を構築することが重要だということがイメージしやすいと思います。
ではどうすることが良いのか。
「多様な動きを経験し、益々体の繋がりを高めること」が重要です。

・全身を使う多様な運動を取り入れる
 (例えば水泳や体操、アスレチック、クライミング、各種球技など)
・専門的な競技な競技も行いつつ、週のうち半分くらいは他の運動も行う

特に将来長きに渡りそのスポーツを楽しみたいのであればこの多様性の部分が欠かせません。日本ではずっと一つの競技を行い続けるという慣習の方が強いと思いますが、昨今少しずつその考え方も変わってきているように思います。


6.おわりに

まずはユース期のうちに引き出したい体の力、そしてその構築のポイントを述べました。
次の<その2>では成長期に関してお話したいと思います。



※パフォーマンスビルディングに関するご相談はお問合せはこちらまで
performancebuilder.miura@gmail.com
マネージャー(朴香美)より返信させていただきます 

画像引用:イラストAC


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