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孤独感への対処法

新型コロナウイルスの影響で,外出自粛になり,人との関わりが減った人が多いのではないだろうか?人との関わりが減ったことで,孤独感を感じている人は多いのではないだろうか?


孤独感は慢性的に経験すると,心身ともに良くない。

今回は,インターネットでのコミュニケーションと孤独感について考えてみることで,誰かと対面で会えなくて寂しい気持ちを解消するための方法について説明する。



孤独感とは何か

「孤独」という言葉を聞いたとき,ポジティブあるいはネガティブのどちらの意味を持つだろうか。

心理学の分野において主流な考え方では,孤独感とは,「自分の人間関係の達成レベルと,願望レベルのズレによって生じる主観的で不快な感情」と考えられている(Peplau & Perlman, 1982)。Peplau & Perlman(1982)の考え方は,孤独感を認知的アプローチに基づいて考える立場である。

つまり,孤独感とは,自分が理想とする関係を築けず,現実の関係において誰かとのつながりが感じられないと思うことである。

孤独感には,その人の「人間関係に対する願望」が関わっているのである。


孤独と孤立は違う

孤独感と類似した概念に,「社会的孤立」というものがある。孤独感が,自分の人間関係のネットワークに関する「主観的な」経験であることに対して,社会的孤立は,自分の人間関係のネットワークに関する「客観的な」状態を意味する。つまり,ある集団の中に知り合いがいない場合は,「社会的孤立」である。

社会的孤立は,孤独感を高める要因になる場合がある。ただし,人間関係のネットワークの大きさが必ずしも孤独感を高めることにつながるわけではない。例えば,「一匹狼」と言われる人は,他者とのコミュニケーションを必要以上に望んでいない。そのため,当人の願望レベルは低く,社会的に孤立していても,孤独感は高くないと考えられる。逆に,たくさんの人と交流があり,人間関係のネットワークが大きい人でも,当人の願望レベルが高いと,社会的に孤立していなくても孤独感は高くなると考えられる。


孤独感を測定する尺度

孤独感を測定する有名な尺度として,改訂版UCLA孤独感尺度(Russell, Peplau, & Cutrona, 1980)がある。改訂版UCLA孤独感尺度は,工藤・西川(1983)によって邦訳版が開発されている。

改訂版UCLA孤独感尺度の邦訳版(工藤・西川, 1983)の項目は以下の20項目である。20項目について,4件法(しばしば感じる,時々感じる,めったに感じない,決して感じない)で回答を求める。

1. 私は自分の周囲の人たちと調子よくいっている*
2. 私は人とのつきあいがない
3. 私には頼りにできる人がだれもいない
4. 私はひとりぼっちではない*
5. 私は親しい友だちの気心がわかる*
6. 私は自分の周囲の人たちと共通点が多い*
7. 私は今,だれとも親しくしていない
8. 私の興味や考えは、私の周囲の人たちとはちがう
9. 私は外出好きの人間である*
10. 私には親密感のもてる人たちがいる*
11. 私は疎外されている
12. 私の社会的なつながりはうわべだけのものである
13. 私をよく知っている人はだれもいない
14. 私はほかの人たちから孤立している
15. 私はその気になれば,人とつきあうことができる*
16. 私を本当に理解している人たちがいる*
17. 私は大変引込み思案なのでみじめである
18. 私には知人がいるが,気心の知れた人はいない
19. 私には話しあえる人たちがいる*
20. 私には頼れる人たちがいる*
*逆転項目

得点化の方法は,「しばしば感じる」が1点,「時々感じる」が2点,「めったに感じない」が3点,「決して感じない」が4点に得点化する。逆転項目は,得点も逆転処理して計算する。そうすれば,自分の現在の孤独感がわかる。


孤独感を慢性的に経験する人の特徴

孤独感を慢性的に経験する人は,精神的健康に問題を抱えている場合が多い。孤独感を慢性的に経験する人の特徴としては,過去の研究から以下のものが挙げられている(e.g., Horowitz et al., 1982; Jones et al., 1981; Jones et al., 1982; Russell et al., 1980)。

・自尊心が低い
・他者の行為や意図についての否定的に推測する
・他者を否定的に評価する
・不安や緊張が強い
・悲観的で抑うつ状態
・幸福感が低い
・自己紹介することが苦手
・電話をかけることが苦手
・集団の中に加わることが苦手
・パーティーを楽しめない
・デートすることが難しい
・自己主張できない


孤独感を経験するメカニズム

孤独感を経験するメカニズムは,Segrin, McNelis, & Swiatkowski(2016)の「ソーシャルスキル不足脆弱性モデル」から説明できる。

名称未設定

ソーシャルスキル不足はコミュニケーションの取り方をぎこちなくする。
例えば,同性の相手には過度な自己開示を行うが異性の相手にはほとんど自己開示しない(Solano, Batten, & Parish, 1982),会話相手のことについて話さない,話題の持続性がない,質問をしない (Jones et al.,1982),初対面の同性に対しても,ルームメイトに対しても議論の際の言語コミュニケーションが下手 (Sloan & Solano, 1984),経験の開示や意見表明が少ない, 会話へ積極的に参加しない,相手の会話内容に反応しない (相川他, 1993) などが挙げられる。このようなコミュニケーションの取り方は他者との相互作用を不快で不満足なものにする。そのため,当人は他者との接触を避けるようになり,周囲の人も心地よくない結果をもたらす当人との接触を避けようとする。こうして孤独感が生じる。

ソーシャルスキル不足脆弱性モデルでは,コミュニケーションの取り方が下手であることが,孤独感を慢性的に経験することにつながることを説明している。


孤独感を解消するための方法

孤独感は,以下のいずれかで解消することができる(諸井,1989)。
①願望レベルの変化
②達成レベルの変化
③両レベルの違いの重要性や,違いの程度についての知覚の変化

孤独感を解消するための一つの方法は,本人が現実の人間関係を変化させ,理想の人間関係を築けるように,ソーシャルスキルを身につけることである。ソーシャルスキルを身につければ,上記の①から③までの変化を起こすことができるからである。なお,ソーシャルスキルについては以下の記事にまとめてある。


結論

インターネットの発展により,現代は,コンピューターを介してコミュニケーションができるようになった。たとえ,新型コロナウイルスの影響で,外出自粛になり,人との関わりが減ったとしても,インターネットを通じて,人と関わることができる。

これまでに身につけてきたソーシャルスキルを発揮すれば,他者とのつながりを上手に保ち,孤独感を経験せずに現状を乗り越えれるだろう。


参考文献

相川 充. (1999). 孤独感の低減に及ぼす社会的スキル訓練の効果に関する実験的検討 社会心理学研究, 14, 95-105.

相川 充・藤田 正美・田中 健吾 (2007). ソーシャルスキル不足と抑うつ・孤独感・対人不安の関連: 脆弱性モデルの再検討 社会心理学研究, 23, 95-103.

相川 充・佐藤 正二・佐藤 容子・高山 巌 (1993). 孤独感の高い大学生の対人行動に関する研究―孤独感と社会的スキルとの関係― 社会心理学研究, 8, 44-55.

Horowitz,L.M.,French,R.S.,& Anderson,C.A. (1982) The prototype of a lonely person. In L. A. Peplau & D. Perlman (Eds), Loneliness: A sourcebook of current theory, research, and therapy (pp. 183- 205). New York: Wiley.

Jones, W. H., Freemon, J. E., & Goswick, R. A. (1981) The resistance of loneliness: Self and other determinants. Journal of Psychology, 49, 27- 48.

Jones, W.H., Hobbs, S.A., & Hockenbury, D. (1982) Loneliness and social skill deficits. Journal of Personality and Social Psychology, 42, 682- 689.

工藤 力・西川正之 (1983).孤独感に関する研究(I)―孤独感尺度の信頼性・妥当性の検討― 実験社会心理学研究, 22, 99-108.

McWhirter, B. T. (1990). Loneliness: A review of current literature, with implications for counseling and research. Journal of Counseling and Development, 68, 417-422.

諸井 克英 (1989).大学生における孤独感と対処方略 実験社会心理学研究, 29, 141-151.

Peplau, L. A., & Perlman, D. (1982). Perspectives on loneliness. In L. A. Peplau & D. Perlman (Eds.), Loneliness: A sourcebook of current theory, research, and therapy (pp. 1-18). New York: Wiley.

Russell, D., Peplau, L.A., & Cutrona, C.E. (1980). The revised UCLA loneliness scale: concurrent and discriminant validity evidence. Journal of Personality and Social Psychology, 39, 472-480.

Segrin, C., McNelis, M., & Swiatkowski, P. (2016). Social skills, social support, and psychological distress: A test of the social skills deficit vulnerability model, Human Communication Research, 42, 122–137.

Sloan Jr, W. W., & Solano, C. H. (1984). The conversational styles of lonely males with strangers and roommates. Personality and Social Psychology Bulletin, 10, 293-301.

Solano, C. H., Batten, P. G., & Parish, E. A. (1982). Loneliness and patterns of self-disclosure. Journal of Personality and Social Psychology, 43, 524.

Solano, C. H., & Koester, N. H. (1989). Loneliness and communication problems: Subjective anxiety or objective skills?. Personality and Social Psychology Bulletin, 15, 126-133.

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