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構造方程式モデリングを用いた心理分析

この記事では、「構造方程式モデリング」(Structural Equation Modeling: 以下、「SEM」と表記する)について、基本的なことを紹介します。
なお,この記事の内容は,随時,更新していく予定です。

SEMで扱うのは「因果モデル」

SEMは、構成概念や観測変数の性質を検討するために、多くの観測変数を同時に分析できる手法です(豊田, 1998)。
SEMでは、仮説に従って、特定の変数が別の変数に及ぼす影響や観測変数がある潜在変数から受ける影響を分析します。

SEMで扱う変数

  • 観測変数:測定することができる変数(数量化できる変数)

  • 潜在変数:測定することができない変数

  • 誤差変数:測定の対象となっている因果関係では説明できない変数

  • 外生変数:その他の変数からの影響を全く受けない変数

  • 内生変数:その他の変数からの影響を1つでも受ける変数

分析結果の読み取り方

SEMでは以下のような結果を見ます。

【非標準化係数】

推定値
それぞれのパスの推定値を表す。

検定統計量
特定のパスがモデル内において有意であるか否かについて検討したものである。
数値が1.96以上である場合は、そのパスはモデルにおいて有意なパスであると判断することができる。

【標準化係数】

推定値
それぞれのパスの推定値を表す。

【適合度指標】

分析したモデルの適合度を評価するための統計学的指標である。
1つの指標から判断するのではなく、複数の指標から総合的に判断することが望ましい。

【独立モデル】

観測変数間に一切のパスを仮定しないモデルを指す。
適合度の下限を表したモデルである。

【飽和モデル】

最も適合度が望ましい状態であることを意味し、適合度の上限を表したモデルである。
分析したモデルは独立モデルと飽和モデルの間のモデルとなり、これらのモデルによって分析したモデルの当てはまりの良さを相対的に確認することができる。

【重相関係数の平方】

各内生変数の実測値とモデルによる予測値の相関係数の2乗を表す。
1に近いほど精度の高い予測ができていることを示している。

適合度指標の見方

SEMでは以下のような適合度指標を見ることができます。

【χ2検定(CMIN)】

適合度指標の出力の中のCMINが実際に分析したデータにおける「乖離度」と呼ばれる統計量である。
SEMでは、帰無仮説「構築したモデルは正しい」が棄却されないことを目的とする点に注意する必要がある。帰無仮説が棄却されないことは、対立仮説を採択することを意味するのではなく、あくまでも「構築したモデルに対するデータへの適合が悪くなかった」という意味合いである。
χ2検定はデータ数の影響を受けやすく、データ数が大きいほど検定力が高まるため、帰無仮説が棄却されやすくなってしまうという性質を持つ。

【GFI(Goodness-of-Fit Index)】

重回帰分析における重相関係数に相当する指標である。0≦GFI≦1の範囲をとる。1に近い値ほど、モデルの適合度が高いと評価することができる。GFI=.90以上が目安とされている。GFIは,推定させる母数が多いほど、値が大きくなる傾向がある。

【AGFI(Adjusted GFI)】

GFIに対して自由度による修正を加えた指標である。重回帰分析における自由度調整済み重相関係数に相当し、数値の範囲は、0≦AGFI≦1の範囲をとる。1に近い値ほど、モデルの適合度が高いと評価することができる。AGFI=.90以上が目安とされている。GFIとAGFIとの関係は常に、GFI≧AGFIである。GFIに比べてAGFIの値がかなり低い場合は、モデルを再検討する必要がある。

【CFI(Comparative Fit Index)】

独立モデルを比較基準とした場合に、どれだけモデルとデータの乖離度が改善されたかを示す指標である。0≦CFI≦1の範囲をとる。1に近い値ほど、モデルの適合度が高いと評価することができる。CFI=.90以上が目安とされている。

【RMSEA(Root Mean Square Error of Approximation)】

1自由度あたりの乖離度の大きさを評価する指標である。0に近い値ほど、モデルの適合度が高いと評価することができる。RMSEA=.05以下で当てはまりが良いと評価し、RMSEA=.10以上で当てはまりが悪いと評価する。

【AIC(Akaike Information Criterion)】

AICは情報量基準と呼ばれる考え方に基づく指標である。データとモデルの乖離度の大きさを評価する。AICでは分析したモデル単体の乖離度を評価するため、値の評価に絶対的な基準はなく、ほかのモデルとの比較により相対的に評価する。

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