【紫陽花と太陽・下】第十一話 お願い[2/2]
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ラスボスが登場した。
以前言い合いになったので心配したのか、桐華姉に話をすると言った日に、梨枝姉はわざわざ有給を取って家にやって来た。
ひろまささんも家にいる。仕事を早く切り上げてくれたのだろうか?
赤ちゃんだった柚子……桐華姉の愛娘……も今は一歳を過ぎて二ヶ月くらいになる。
「……やっと、寝たわ」
げっそりと疲れた表情で桐華姉が奥の和室からリビングにやって来た。最近の柚子は、よちよちと独り歩きをするようになり、行きたいところに自由に歩いて行ってしまう。ダメよ、やめてと言っても聞いてはくれない。夜だって前ほどすんなりは寝てくれない。よほど疲れさせたら寝るのかもしれないが、疲れさせすぎれば機嫌が悪くなってぐずるのだ。姉がげっそりするのも頷ける。
「お疲れ様。さっきミルクティー作ったけど、良かったら飲む?」
敵に塩を送った。もうここ数ヶ月はラスボス対策で頭が痛くなってきていた。何をするにも姉中心に物事を考えてしまう。
「飲む。ありがと」
ダッシュして台所に向かう。あずささんが口に手を当ててちょっと笑っているような気がした。こっそり見ると目が合ったので、小さく「こら」と言った。あずささんが頑張って笑いを堪えた。
「あぁ、美味しい。身体に染みる。……あ、そうだ。あんた、私に話があるっていってたわよね。今日だったかしら?」
「一応そうだよ。でも疲れてるなら別の日でも構わないけど」
努めて穏やかに話をする。ケンカする気は毛頭ない。僕たちは自分の未来の話を相談するだけなのだから、何を言われようと悪いことは決してしていない。
「改まってあんたが話って、久しぶりね。今度はどうびっくりさせてくれるのかしら?」
鬼が出るか蛇が出るか。僕はひとつ深呼吸をした。
◇
ダイニングテーブルに皆が集まり、遼介くんの話が始まろうとしていた。ちなみに椿ちゃんはもう就寝しており、俺の娘の柚子も、さっきようやく桐華が寝かしつけを完了したところだ。
静かな部屋に掛け時計の秒針の音だけがカチカチと響いている。あずさちゃんが台所に行き、皆のお茶の準備を始めたようだった。
「今日は桐華姉、時間をとってくれてありがとう。梨枝姉も、せっかく来たところ話があってごめんね」
「いいえ、全然」
「一体何を話すのかしら?」
遼介くんが一度咳払いをして、カウンターに置いてあったクリアファイルから紙を取り出し、ダイニングテーブルに広げた。桐華にちょうど見えるように開いて置いた。
「……」
俺も、そしておそらく梨枝さんにも見せたであろう「婚姻届」。鉛筆で下書きが書いてあり、それは名前も住所も、本籍も届出人の署名も印も、書けるところはきちんと書いてあった。書けなさそうなところ、例えば届出日や同居を始めた時、などは後で書くのだろう。欄に大きく丸が付けられていた。
書けそうなところが埋まっている、ということは、本籍も調べたということになる。お義父さんが生前言っていた「ちゅうぶらりん」状態のあずさちゃんの戸籍を調べるのは、一体どうやったのだろうか。
俺は改めて遼介くんが桐華が言うほどしっかりしていないのではないことに気付く。むしろこれほどしっかりした十八歳が周囲にいるだろうか? 新卒採用で事務所で働き始めるスタッフもここまで自分の道を自分で決めて自分で突き進んでいるだろうか。
桐華を見た。眉間にシワが寄っている。紙と遼介くんと、そして台所にいるあずさちゃんを交互に見て、黙り込んだままだ。
「……そう」
桐華が呟いた。
「……そんなことを、考えていたのね」
桐華の言葉は是か非どちらとも分からない抑揚のない声だった。遼介くんが桐華の向かい側にゆっくりと腰を下ろした。台所からあずさちゃんが、全員分のお茶を盆に乗せてやってきた。意図しているのだろうか、桐華、俺、梨枝さん、そして遼介くん。最後に自分へと順にお茶を静かに置いていった。上座は桐華と考えてのことだろうか。
あずさちゃんも、空の盆をカウンターに置いた後、遼介くんの少し後ろにそっと座った。
「僕とあずささんは、結婚しようと考えている」
「これを見たら分かるわ」
「そうだよね。今日桐華姉に話があるというのは、ここ」
遼介くんが証人の欄をトン、と指で指して「ここに署名をしてほしいからなんだ」と言った。
「いつ、婚姻届を出す予定でいるの?」
「あずささんの誕生日が過ぎたらすぐにでも。そしたら二人とも成人になるから」
「確かに、十八歳過ぎたら成人になるわね」
「来月の上旬の予定になる。提出しても別に僕たちはここを離れるわけじゃない。家の中はいつも通り同じままだ」
「なら、別に来月に提出しなくてもいいんじゃない?」
桐華の言葉に、遼介くんが上目遣いで桐華の様子を伺った。
「提出しなくてもいいかもしれないけど、僕たちは提出する予定でいる」
「なんで」
少し強い言い方だった。俺は、たぶん俺の向かいの梨枝さんも似たような顔をしているので、同じことを思ったはずだ。二年前の二人の言い合いを嫌でも思い出してしまう。
「…………」
しばらく、遼介くんは目を伏せて俯きがちの姿勢になっていた。口を開こうとした矢先、桐華がかぶせるように話し始めた。
「あんた、バイトしたい、仕事したい、学校辞めますって時も、けっこう思いつきで行動していたわよね。忘れたわけじゃないでしょう? 今度は何、あずさちゃんを巻き込んで結婚しようとしているの。それはいいわ。でもいくら何でも早すぎるんじゃない? 周りで誰か結婚している人でもいるの? 誰かに結婚したらどうってアドバイスでもされたのかしら?
今度は自分だけの問題じゃないのはよく分かっているでしょう? あずさちゃんの人生も左右する大事な書類なのよ? それをちゃんと分かっているのかしら」
桐華がまくし立てた。ダイニングに少し沈黙が降りた。
やがて、遼介くんがゆっくりと両手を腿のあたりで組んで、まっすぐ桐華を見て言った。
「言いたいことは終わったかな」
「何よ」
「そんなふうに睨まないでよ。僕は別に桐華姉とケンカをしたくて話をしているわけじゃない。ただただ落ち着いて、報告と、お願いをするために今ここにいるんだ」
「話の論点をずらさないでよ。この書類の意味がどれくらい大事なものなのか、しっかり分かっているかって聞いてるの!」
「質問に答えるね。大事だということは分かっているよ。あずささんとたくさん話をして、二人で決めて、この紙を書いている。あと、周りで結婚している人もアドバイスをくれた人も誰もいないね。あとはそうだね」
遼介くんは始終微笑みながら続けた。
「できたら最初に、おめでとうと言ってほしかったな」
俺は絶句した。確かに言っていない。最初から桐華は臨戦態勢だった。
結婚、という人生の中でもおめでたいお祝いの話であるにも関わらず。
遼介くんが静かに続けた。
「ま、しょうがないね。時間は戻らないんだし。
それで、来月には籍を入れたい。この話は僕たちが真剣に相談して選んだことなんだけど、それでも理由は言ってほしいみたいだから言うね。……そうだな、全部で四つあるかな」
「……」
仏頂面で桐華が遼介くんを見ていた。彼は少し申し訳無さそうな顔で彼の後ろにいたあずさちゃんをちらりと見てから、桐華に話し始めた。
「ひとつ、早く結婚をすれば、それだけたくさんの結婚記念日を祝えるから」
なるほど。一つ目から俺の予想と全然違って面白いと思った。俺に報告というか相談をした時は、俺が反対などしなかったので理由を聞いていなかったのだ。
「ふたつ、僕はあずささんの卒業式に堂々と出席したいから」
「卒業式?」
桐華がキョトンとして遼介くんを見た。
「そう。このままだと保護者とか肉親がいないあずささんの卒業式を誰も見届けることができない。僕とあずささんは家族として暮らしてはいるけど、やっぱり血は繋がっていないんだ。個人懇談の時のようにひろまささんなら出席できるかもしれないけど、僕は自分の目であずささんが卒業式に出る姿を見たいんだ」
「……そんな、理由で?」
「そんな、じゃない。桐華姉は自分が卒業式の時に両親が来ていたはずだ。父さんがいたかは分からないけどね。だから、僕やあずささんの気持ちは、どう頑張ったって理解することはできない。
入籍をして、僕が夫になれば、堂々と身内ですって出席できる。それが二つ目の理由だ」
あと二つ。俺は次に遼介くんが何を言うのか楽しみになってきた。
「桐華姉、聞いてる? みっつ、現在進行系であずささんの不透明な戸籍を、籍を入れることで明確にしたい」
「不透明……」
「あずささんの現住所や本籍を書く時に、調べたよ。郵便局の引越の手続きとかで、手紙や書類が届く住所は確かにうちになってはいる。だから学校の手紙もうちに届いていた。僕はずっと知らないままだった。桐華姉はあずささんがうちで同居をする時に、父さんの一番近くで説明を受けていたはずだから知っていたはずだ。養子縁組とか里親の手続きはされていない。あずささんの戸籍はずっと前の家のままの状態で、手紙だけがうちに届いていた。そんなこと本当にできるのか、できるから今があるのかもしれない。でも僕は」
遼介くんは穏やかに言葉を紡いでいる。微笑みもそのままだ。
「健康保険証がなくて、医療費が全額自己負担になるのを遠慮して、あずささんはずっと病院に行くことを渋っていた。病院が苦手なのかな、と思っていたけど違った。前に産婦人科で診察を受けて知ったよ。保険証の住所変更手続きをすれば、もしかしたらあの男に居場所がバレてしまうかもしれない、そう思って、あずささんは一人でずっと抱え込んでいた。
桐華姉はそれを知っていたんだろうか。たまたまうちに来てからひどい病気をせずにここまで来れたから良かったけど、入院とか手術とかをしないといけない場面がもしあったなら、あずささんは一体どうするつもりだったんだろうって。僕と結婚したら、保険証はきちんと手元に来る。何の遠慮もなくあずささんは生活できるはずだ。身分を証明する、大事なものの一つにだってなるしね」
遼介くん以外、誰もしゃべらない。静かな間ができた。
「分かった。……ちなみに、すぐ結婚したい理由は四つあるんだったわよね」
「そうだね」
「聞きたいわ」
遼介くんが少し驚いた顔をした。
「よっつ」
あずさちゃんが遼介くんの後ろでそっと彼の背中を見上げた。
「僕が、あずささんのことを愛しているから」
ガタリと音がして、あずさちゃんが椅子から飛び上がった。顔が真っ赤になっている。耳も首も赤くなりアワアワと慌てた後、また椅子に座った。真下を向いてしまった。
「なんてことを言うのだ……‼︎」
「えっ? ダメ?」
対して遼介くんは平然としている。面白いので様子を見た。
「あんた……よく人前でそういうことを言えるわね」
桐華が唖然として遼介くんに呟いた。
「だって、本当のことだし」
「それがどうしてすぐ結婚したい理由になるの?」
「愛してるから、結婚したい。大好きだから、今すぐにでもしたい。それの何がおかしい?」
「……入籍の時期はね、普通はもっとよく考えるんじゃないかしら」
「また言うんだね。桐華姉と僕は、別人だよ」
「そうね」
「桐華姉の『普通』と僕の『普通』は、違うんだよ」
遼介くんは微笑んで続ける。
「桐華姉。姉さんもこの届け出を出したから、分かっているとは思うけど……。証人の欄に大人二人が署名をすれば、簡単に提出することができるんだ。例えばひろまささん、梨枝姉、それに縁田さん。剛だっていい、もう誕生日は過ぎているからね。剛のご両親に頭を下げて署名してもらうことも、もちろんできる。
それを、僕とあずささんはあえて桐華姉にお願いをしている。どうしてだろうか。僕にいろいろ察してよ、とよく言う桐華姉なら察してくれるよね。
それは、この家で、穏やかに皆で暮らしていきたいからなんだ。ずっとかどうかは分からないよ。未来は予測ができないことだから。父さんと母さんはもうここにはいないけど、僕はあずささんとも一緒にこの家で暮らしたい。のびのびと、心置きなく大学も就職も仕事も挑戦してほしいと願ってる。だから桐華姉が納得した状態で結婚をしたいと思っている。許可じゃない、お願いなんだ。僕たちはおかしいことも迷惑がかかるようなことも言っていないはずだ」
「私が、証人の欄に書けばいいのね?」
「そうだけど、納得しているかどうかが重要なんだ。何が足りないんだろう? どうすれば桐華姉は僕たちのすることに対して納得してくれるんだろうか? 教えてほしい」
「言ったとして、あんたはその通りにするの?」
「あずささんは、優しいし、すごく気を遣う人だから、自分は二の次で桐華姉の気持ちを大事にして行動してくれるだろうね。入籍時期が、例えば就職する直前がいいと言えばするだろうね。……でも、僕は違う。僕はあずささんとも別人だ。あずささんほど寛容にはなれない」
「だったら。言っても無駄じゃない」
「そうじゃないよ。言わなければ絶対伝わらないけれど、言えば桐華姉が何を思っているのかを僕たちは知ることができる。全部を受け入れることはできなくても、相手の考えていることは分かるから、ちょうどいい着地点を相談して決めていくことはできるはずだ」
「確かにね」
「桐華姉。一つ、想像してほしい。もし桐華姉が入籍時期を指定したとして、僕たちがその通りにしました。さて、何が起きるでしょうか」
「急になぞなぞを出したわね」
「考えて」
今日の話し合いは不思議な流れだった。昔のように言い合いにはならない。遼介くんが上手に桐華を受け流している。川の流れのように、さらりと、波風立たない程度に流して、優しくあずさちゃんを気遣っているのがひしひしと伝わってくる。
桐華はしばらく考えていたが、やがて降参したようだ。正直なところ俺も分からなかった。梨枝さんを見ると目が合ったが、ゆるゆると首を横に振った。分からないようだ。
「何が起きるの? 分からないわ」
「そっか。さっき言った通り、あずささんはたぶん怒らない。その通りにしてくれると思っている」
遼介くんがくるりと後ろのあずさちゃんの方を向いた。あずさちゃんはさっき愛の告白をされてしまったために、俯いたままだ。コクリと頷いたので聞いていることが分かった。
「僕は、その通りにしたとして、何か困ったことが起きた時に言うと思う。あの時桐華姉の言う通りにしなければよかった、と。自分を責めて、それから桐華姉を責めると思うんだ。だって、自分で選べるはずの生き方を選ばないことになるから。自分で決めて自分で進んだ未来なら、責任は自分にあるから辛くてもどうにかやるしかない。でも、人に言われて仕方なく選ぶ未来は、自分で選んでいるわけじゃない。だから誰かに責任を押し付けたくなってしまうと思うんだ」
俺は耳を疑った。お義父さんが生前俺に話してくれたことを、なぜか今遼介くんが話しているからだ。あの話を知っているはずがない。ならば、自分で考えたのだ。何もないゼロから、本や人との関わりや仕事を通して、考えて、辿り着いたのだ。
「責められるかもしれないと思ってもなお、桐華姉は僕たちに『結婚の時期が早すぎる』とまだ言うのかな」
くいくい、と後ろにいたあずさちゃんが遼介くんの服の裾を控えめに引っ張った。
彼が振り向いた。
「私……今日はすごく不安でした。桐華さんが、遼介の選んだ人が私だと知って嫌な気持ちにならないかどうか、不安でした。でも良かった。桐華さんは一度も相手が私であることに困った顔も困った言葉も言わなかったから。すごく、嬉しかった……」
あずさちゃんが透明な声で桐華に話しかけた。桐華も慌てている。
「そんな。あずさちゃんだって聞いて、そりゃあびっくりしたわ。えぇっ⁉︎ って寝耳に水みたいに思ったの。でも本当にあずさちゃんは遼介でいいの? これから先もいろんな人と出会って行くのに、今すぐに結婚相手を決めちゃっていいのかしら?」
あずさちゃんが静かに立ち上がった。俯いていた顔をゆっくりとあげて、桐華を見た。
「はい。私は遼介を選びました。遼介も私を選んでくれました。それが全てです。何も憂うことはありません」
「あずささん……」
遼介くんが呟いた。桐華の周りを覆っていたピリピリした雰囲気が和らいでいくように俺は思った。
「……そう。そっか。ありがとう、あずさちゃん。遼介を選んでくれて。てっきりいつもの遼介のグイグイ押し通す感じで押し切られたのかと思って。そうじゃないのならいいの」
あずさちゃんが少し逡巡してから、遼介くんの方を見た。何も言葉は発していないけれど彼には意図が分かったらしい。彼もゆっくりと立ち上がった。
一歩、遼介くんが後ろに下がった。あずさちゃんと二人並ぶ格好になった。
俺たち全員が二人を見ている中、手を繋いだ。まっすぐに俺たちの方を向く。
「桐華姉。お願いがあります」
「僕とあずささんは来月結婚したいと思っています。
この先、苦労することも辛いこともたくさんあるって覚悟してます。
それでも二人で乗り越えていこうと思っています。
だから、どうか……どうか、見守っていてほしいです」
二人は手を繋いだまま、深くおじぎをした。
だから、お願いなのか。
俺はお義父さんの遺影がある和室を見た。今は娘が寝ているため扉がしまっているので写真は見えないが、今日ここに持ってくれば良かったと切実に思った。
遼介くんとあずさちゃんの成長が誇らしかった。
見守られているのは、彼らではなく俺たちの方かもしれないとさえ思った。
俺は感じている。椿ちゃんに対する遼介くんの接し方は、既に俺よりも経験値がすごくて安心感がある。彼自身も子供であるにも関わらず、彼は人を育てる方法を日々学んでいる。椿ちゃんを育て、自分を育て、親の感情を知り、そして姉である桐華の気持ちも汲み取ろうとしている。努力している。彼は努力を怠らない。
俺はこのままでいいのだろうか? 努力していないつもりはないのだが、仕事の面、家庭の面、育児の面においてまだ努力不足かもしれないと思う自分がいる。もっと頑張れば、もっとできるかもしれない。
遼介くんがどんどん前を向いて進んでいく。俺を追い越す勢いで。もしかしたら俺はもう追い越されているかもしれない。
だったら俺は、大人として、俺ができることを……。
「遼介くん」
威厳のある真面目な顔を作ったつもりだったが、目の前の二人が「なんとか言うことができた!」という表情でへにゃりと脱力していたので、つい微笑んだ。
「はい、何ですか?」
ええと……一度、咳払いをし、大きな声で俺は言った。
「結婚、おめでとう!」
二人が一瞬驚いて、それから満面の笑みに変わっていった。 隣の桐華も微笑みながら、おめでとう、と続けて言った。梨絵さんが拍手をしてくれた。
言って良かった。
言葉は、口に出さないと伝わらないのだ。
(つづく)
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