『子どもたちの遺言』から
お盆でお休みだった方も、明日からは仕事でしょうか。我々医療者にとっては、世間の長期休暇は、外部にいらいする検査や物流は止まる、救急外来に患者さんがあふれかえる、自分たち以外は楽しそう、と3拍子揃って迷惑でしかないわけですが(笑)
このお盆の期間は戦争にまつわる話題も多く、いつもいろいろ考えさせられます。とりわけ今年はあいちトリエンナーレにに関する話題も多く、より生きるとは何か?子どもの医療に関わるとはどういうことか?と自問することも多い日々だったように思います。
小児医療の中で大切にしている言葉の中に、「アドボカシー(advocacy)」というものがあります。使われる文脈でさまざまな訳語が当てられていますが、小児医療においては、われわれ医療者は「子どもの代弁者」であると訳されます。これについては、私なりにいろいろと思うところがあって、また追々お話ししていきたいと思っていますが、今日はひとつ詩をご紹介したいと思います。
『子どもたちの遺言』
私の大好きな詩人に、「谷川俊太郎」という人がいます。写真家の田淵章三さんの写真に合わせ、「我々に子どもたちが遺言を残す」という体で書かれた詩集です。絵本ナビで数ページ読めるようですね。
この中から一つ目の詩を紹介します。
生まれたよ ぼく
生まれたよ ぼく 詩・谷川俊太郎
生まれたよ ぼく
やっとここにやってきた
まだ眼は開いていないけど
まだ耳も聞こえないけど
ぼくは知ってる
ここがどんなにすばらしいところか
だから邪魔しないでください
ぼくが笑うのを ぼくが泣くのを
ぼくが誰かを好きになるのを
ぼくが幸せになるのを
いつかぼくが
ここから出て行くときのために
いまからぼくは遺言する
山はいつまでも高くそびえていてほしい
海はいつまでも深くたたえていてほしい
空はいつまでも青く澄んでいてほしい
そして人はここにやってきた日のことを
忘れずにいてほしい
(『子どもたちの遺言』
詩・谷川俊太郎 写真・田淵章三 佼成出版より引用)
こどもの寝顔を見ながら、この詩を声に出して読んでみると、なんというか背筋が伸びる思いがして、「よし、がんばろう」と思えてくるのです。そして、寝顔に向かって、「今日の空は青かったかい?」「今日の世界は何色だった?」ととかけたくなるわけです。
さあ、明日からの一週間、がんばりましょうか!
小児科、小児集中治療室を中心に研修後、現在、救命救急センターに勤務しています。 全てのこども達が安心して暮らせる社会を作るべく、専門性と専門性の交差点で双方の価値を最大化していきます。 小児科専門医/救急科専門医/経営学修士(MBA)/日本DMAT隊員/災害時小児周産期リエゾン