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建材業界で新規事業を立ち上げて、8ヶ月で「業界シェア80%」をとれた理由

鶴岡 友也/BLUEPRINT, inc. 最高事業責任者

ぼくは「スタートアップを量産する会社」を運営しています。

事業をバンバン立ち上げて、PDCAを回しまくって、うまくいったものだけを法人化する。「スタートアップファクトリー」とよばれる、日本ではまだ珍しいビジネスモデルです。

かつてヘンリーフォードが「T型フォード」によって自動車を大量生産したように、事業立ち上げのプロセスを「型」にして、起業に再現性をもたせる。

まるで工場のように、革新的な「会社」が次々に生まれていくーー。

それがぼくらの目指す世界です。

「そんなにうまいこといくわけない、ただの絵空事だろ」と思われるかもしれません。

でも実際、うまくいきはじめているんです。

SaaSモデルとして、初めての成功事例が、この「建材サーチ」というサービス。建材業界に特化したVertical SaaSです。

https://lp.kenzai-search.jp/

実はこの事業、構想から半年で法人化、8ヶ月でエクステリア業界でのシェア80%を達成しました。初月からいきなり6000万円ほどの売上日経アーキテクチュア「建築をアップデートするベンチャー100」にも選んでいただくことができました。

ふつう、新規事業が黒字化するには3〜5年かかるといわれているので、けっこういいスピード感で進められたのではないかと思います。

なぜぼくらは爆速で事業を立ち上げ、軌道に乗せることができたのか?

改めて、建材業界で走り回った怒涛の8ヶ月間をふり返ってみます。これから事業を立ち上げたい人や、古い業界を変えたいと思っている人にとって参考になれば、とてもうれしいです!

事業立ち上げには「理想のロードマップ」がある

具体的なお話をする前に、ぼくらのやり方を簡単に紹介します。

この1年ちょっとで、ぼくらは10以上の事業を生みだしました。軌道にのりかけた事業も、途中で頓挫した事業もたくさんあります。そのなかで得た学びはすべてNotionにまとめて、社内で共有しています。

(noteでもこっそりシェアしてます)

そうしてできたのが、この「半年で事業を法人化するためのロードマップ」です。ぼくらはこのマップにもとづいて事業立ち上げを進めています。

半年で事業を法人化するためのロードマップ

特徴的なのは「法人設立の時点で、5000万〜1億円の売上が見えている」こと。あらかじめ、サービス導入の内諾を5社ほど取りつけておくのです。

ふつうの起業だと、会社を立ち上げた「後」にビジネスモデルを構想し、プロダクトを開発し、セールスを始めるケースがほとんど。ぼくらはそれらを会社を立ち上げる「前」の半年間で、すべて終わらせてしまいます。

こうしてノウハウをためているのは、起業のリスクを少しでも減らしたいから。

日本で「起業する」という選択は、まだまだ一般的ではありません。優秀な人はたくさんいるのに、制約の厳しい大企業のなかで、本来の力を発揮できずにいる。

ぼくらは、起業のリスクを下げることで、もっとたくさんの人が革新的な事業をつくり、世界をよりよくしていけると思っています。

だから、事業立ち上げのノウハウをためることで起業に「再現性」をもたせたり、優秀なセールスやPMをあらかじめ用意して起業を「分業」できるようにしているんです。

では、このロードマップを実践してみるとどんな感じなのか。建材業界でのケースをふり返っていきます!!

「問い合わせ対応」で丸1日つぶれてしまう

事業が走り出したのは去年の8月ごろ。当時はまだサービスの種すら存在していません。「建材」のケの字も知らない状態でした。

きっかけは、YKK APの方のお話を聞いたこと。

YKK APは、エクステリア(外構)業界で2番目に大手のメーカーです。

彼はもともと、ぼくらが学生時代に起業した「DX推進支援事業」のお客さん候補だったのですが、ある日「実はこんなこともやってて……」と、スタートアップファクトリーの話を振ってみました。

すると「営業マンが『問い合わせ対応』にものすごく時間かかっちゃってて……なんとかしたいんだよね」という課題が出てきたんです。

ぼくらはさっそく、メーカーの営業さんに話を聞きにいきました。

現場はたしかに大変そうでした。営業担当者には、電話が1日に30件〜60件、メールも数十件は届きます。問い合わせの対応をしているだけで、ほんとうに1日の半分とか、ひどいと丸1日つぶれてしまうこともあって。

営業が本来やるべき「ちゃんとした提案活動」に、なかなか時間が割けてない状態だったのです。

なんとかこの課題を解決できないだろうか。方法を探るべく、ぼくらはさらにヒアリングを重ねていきました。

2000ページもある紙の商品カタログ

そもそも、問い合わせが殺到してしまう原因はなんなのか?

メーカーの営業さんが対応していたのは、商品をエンドユーザーへ販売する「代理店」や「販売工務店」からの問い合わせでした。

彼らが使っていたのは、約2000ページもある超ぶ厚い紙の商品カタログ。

いちおう、ネット上にPDFデータも公開されていたのですが、それもすごく検索しづらくて。1ページずつめくっていかないと、目当ての商品にたどり着けない状態でした。

しかも、各メーカーによってカタログはバラバラ。「どこに何の情報があるのか」が、いまいちよくわからない状態だったんです。

その結果、代理店や販工店から、メーカーの営業さんに対して「この商品のこのデータってどこにあるの?」「この商品ってどういう特徴なの?」という問い合わせが殺到していました。

「カタログやPDFで探すのが面倒くさいから、電話でメーカーに直接聞いちゃおう」というスタンスが根強かったわけです。

これが「メーカーの営業さんが問い合わせ対応に追われてしまう問題」の原因でした。

建材業界の「Amazon」をつくろう!

解決策として、ぼくらは次のような仮説を立てました。

「建材業界に特化した『Amazon』みたいなサービスをつくったらどうだろう?」

いまは商品の情報がバラバラで、検索しづらい状態。そこで、商品の情報をデジタル上のひとつの場所に集約します。

商品ページにいけば、機能やサイズ、価格や必要な書類まで、すべて載っている。そういうプラットフォームをつくろう、と。そうすれば、わざわざ電話でメーカーに聞かなくてもよくなります。

この方向で仮説検証をしていこう。

ぼくらはさっそく「具体的にどんな機能が必要か?」「どうすれば買ってもらえるか?」サービスの詳細を詰めていくことにしました。

大切なのは「業界構造をつかむ」こと

建材業界の人たちの話を聞いていくうちに、わかったことがありました。

それは、この業界では「代理店」の力がけっこう強いということ。

建材業界の構造はこんな感じです。

メーカーは「代理店」や「販工店」を介して、家を建てたいエンドユーザーへ商品を売っていきます。ぼくらが最初に話を聞いたYKK APさんは、エクステリア(外装)のメーカーにあたります。

代理店の人たちがしっかり売ってくれないと、メーカーは売上が立たない業界構造だったんです。

メーカーの方は、代理店に「売ってください」とお願いしている立場。だからやっぱり、代理店の言うことをある程度は聞かないといけません。

これを知ったぼくらはさっそく、代理店とのアポをとりまくりました。

カギを握るのは「代理店」だった

エクステリア業界には、コアな代理店が2、30社ほどあります。ぼくらはそのすべてをまわって、話を聞いていきました。

最初は「なんだこいつら?」みたいな視線を向けられることもありました。

それでも「このツールで絶対に業界をよくできるんです」「代理店さんのお仕事ももっと楽にしたいんです」と地道に伝えて、なんとか気に入ってもらって。

「君たちおもしろいね。いま知り合いの担当者に電話してあげるから、ちょっと待ってなさい」という感じで、いろんな会社とつないでもらいました。

すると、代理店の人たちも課題を感じていることに気づきました。彼らはユーザーに提案するために、いろんな建材の情報を探しています。でもぜんぜん出てこないから、仕方なくメーカーの営業マンに問い合わせをしていた。

「建材のAmazon」をいちばん求めているのは、代理店の人たちだったんです。

代理店向けに商品をブラッシュアップしていく

そこでぼくらは、代理店の人たちがより使いやすいように、サービスを作り込んでいくことにしました。

これまでの紙カタログやPDFは、とにかく「検索がしにくい」のが難点でした。そこで、ZOZOTOWNみたいに絞りこんで建材を探せるようにしたんです。デザインや色、幅、高さなどの検索条件をつくっていきました。

あと、いままではお客さんへの提案も「カタログの必要なページだけ印刷して、お客さんに見せる」というやり方でした。なかなかアナログで非効率です。

そこで、代理店の提案がもっと楽になる機能もつけることにしました。

いままでの紙カタログだと、気に入った商品のページに付箋をはって、あとで見返せるようにする人が多かったんです。それだと時間もかかるし、いつも分厚いカタログを持ち歩かないといけません。

それをぼくらは、デジタル上で「いいね!」するだけで提案書が作れるようにしました。

(イメージ図)

サイトで「いいね」ボタンをポチポチ押すと「お気に入り」に商品が追加されていきます。「これ提案したいな」と思った商品をいいねしておけば、お気に入りページのリンクをLINEでお客さんに共有するだけで、簡単に提案ができる。

ここまでくると、代理店としては、メーカーがぼくらのサービスを導入してくれたほうが、絶対に仕事が楽になるわけです。

この状況をつくりだすことで、代理店からメーカーさんに「御社はあのサービスやらないんですか?」と声をかけてもらうことができました。

そうするとメーカーさんは、もう導入せざるを得なくなってくるのです。

いきなり業界シェア80%

エクステリアの業界は、大手4社で全体のシェアの約80%を占めていました。

YKK APさんは業界2位の会社です。1位がリクシルさんで、3位が三協アルミさん。4位が四国化成さんという会社です。

この大手4社をいかに落とすかが、事業成功の命運を握っていました。

YKK APさんは、最初にお話をいただいていたので、すぐに導入が決まりました。いちばん大変だったのは、そのあと2社めの三協アルミさんに導入してもらうことです。

なにせ、どこの馬の骨とも知らない新規事業です。この段階ではまだサービスリリースもしていません。あるのはサービスのプロトタイプだけ。

ぼくらはいろんな代理店さんにお願いして、三協アルミさんに掛け合って頂きました。最終的には噂が噂をよんで、もはや「あれ、やるって聞いてますけど」みたいな空気になってきて。それでなんとか、導入を決めてもらえました。

「きみたちを敵に回したらヤバそうだね」

最後まで残ったのは、業界最大手のリクシルさん。

リクシルさんとはこの半年間、もう20回ぐらい打ち合わせをして、ようやく契約していただけました。

「ほかの業界大手はみんな導入している」という実績ができたのは大きかったです。業界2位、3位、4位の会社がみんな乗ってくれたので、導入しないと「1社だけAmazonで取り扱いがない」みたいな状態になってしまう。

「さすがにここに乗らない手はないな」と思ってもらえました。

ぼくらが、代理店の声を届ける「伝道者」になれたこともポイントでした。

メーカーにとっては「代理店に選んでもらうこと」がなにより重要です。そこでぼくらも「うちのサービスを買ってください!」ではなく「代理店の人はこう言ってます」と伝えていきました。営業というより「相談役」みたいなポジションをとったんです。

そうしていると、打ち合わせで「きみたちを敵に回すのはちょっとヤバそうだね」と言ってもらえるようになりました。

建材業界は特に、古くから続く業界です。ぼくらみたいに何十社もの代理店の声を聞いてきて「こうらしいっすよ」なんて変なことをやっている人は、他にいなかった。「活きのいい若いやつががんばってるな」と思ってもらえたんです。

そうして立ち上げから8ヶ月後には、業界シェア80%をとれていました。

「売上アップ」×「コスト削減」ができると強い

今回の事業がうまくいった理由を、もうすこし分析してみます。

まず、サービスを導入してもらうには「価値ロジック」がしっかりしていないといけません。

先方の担当者は、導入にあたって社内の人を説得する必要があります。会議を通してもらうには「このサービスを導入すると、なぜ得なのか?」を、ロジカルにわかりやすく示してあげることが大切です。

考えるべきポイントは「コスト削減」と「売上アップ」。

従来の「紙カタログ」にはけっこうなコストがかかっていました。1冊印刷するのに4〜500円ぐらい。プラス送料もかかるので、1冊につき800円くらいのコストです。

それを何十万部と刷ってるので、そのうち10%〜20%削減できるだけで、数千万円のコストカットになるんです。

加えてこのサービスを導入すれば、導入していない会社よりも、代理店から商品を買ってもらいやすくなります。メーカーの売上をあげることに直結するわけです。

コストも下がるし、売上もあげられる。

この両方の価値ロジックがあると、お金を出してもらいやすくなります。

「サービスを導入すれば1千万円のコストが削減できます」だけだと、せいぜい「300万円くらいのサービス価格だったら買ってもいいかな」という感じです。

でもそこに「売上もあがります」という未来を描けると、極論「1千万円のコスト削減に対して、1千万円のサービス価格」でも買ってもらえる可能性があります。

売上があがるのなら「コストの削減額」と「サービスの導入費用」は、最悪トントンでもいいからです。

そういう提案の仕方ができると、単価アップにもつながります。

自分ができるかではなく、どうあるべきかを考える

……ここまで「楽勝でした!」みたいに語ってしまいましたが、実際、大変なことはたくさんありました。

リリース直前で「開発が間に合わないかもしれない!」となった時は地獄でした。メンバー総出で、2000ページのカタログのデータ入力をして、なんとか間に合わせました。

「なぜそんな大変なことをやろうと思うのか?」と聞かれることもあります。

そもそも、ぼくは事業を立ち上げにおいて「自分にできるかどうか?」ということを、いっさい考えないようにしています。

身の丈に合うことをしていたら、事業はいつまでも大きくならないから。

ぼくらは、大半のメンバーが20代。まだ若いし、小さい会社です。

もし身の丈に合うことをしていたら「まあ、数年かけてじっくりやればいいか」と思っていたかもしれません。最初から大手企業にいかず、小さめの会社から攻めていって「いつか大手にたどり着けたらいいな」と思っていたかもしれません。

だからこそ「あえて」業界の大手企業から攻めて、たった半年で軌道にのせる道を選んだのです。

「自分ができること」ではなく「事業として、どうしないといけないか」という「あるべき論」で考えていく。

そうすると、どんな大きなことも成し遂げられる気がしています。

建材業界の巨大プラットフォームに育てていく

ぼくらは、今後も「建材業界のAmazon」を本気で目指していきます。

商品選定、見積もり、発注など、建材に関わるすべての業務が「建材サーチ」上で完結できる。そんなプラットフォームにしていきたいんです。

エクステリア業界で80%を達成したのは、目指す未来への「第一歩」にすぎません。今後はインテリア業界も攻めていきたいし、工務店やハウスメーカーにもサービスを広めていきたい。約5年後の上場に向けて準備もしています。

まだまだ、余白がたくさんあります。

正直、人手が足りなくてやばいです!(笑)

この事業を一緒に引っ張ってくれる人、めちゃくちゃ探してます。ピンときた方はぜひ、気軽に連絡ください!

これからも「業界革命」起こします

今回の事業は、ほぼロードマップどおりの理想的な成功例でした。

去年の8月に取り組み始めて、2月に法人化。4月にサービスをリリースしました。その後、YKK APさん、三協アルミさん、四国化成さんが次々と導入して頂きました。

成功事例ができて、自信もつきました。セールス、エンジニア、ファイナンスなど社内の「起業サポート体制」も整ってきました。

特にプロジェクト中盤で、キーエンス出身の優秀な営業が入ってきてくれたのは大きかったです。前職では事業部の過去最高売上を叩き出していた人。「もっと挑戦的な環境で自分の実力を試したい」と、うちに飛び込んでくれました。

今回の成功で、ようやくぼくらのノウハウがひとつ証明されたかなと思います。

属人的でリスクが高いと思われている「起業」に、再現性をもたせることができつつあるのです。あとはこのまま突き進むのみ。すでに新しい事業も、製造業などの業界でいくつか走っています。

スタートアップの量産を、今後もどんどん加速させていきます!

あなたの課題が「事業のタネ」になる

最後にひとつだけ。

今回の事業の成功に、絶対に欠かせなかった要素があります。

それは「現場の声を聞き、課題を教えてもらうこと」です。

事業のきっかけになったのは、YKK APの方に教えてもらった「現場の営業さんの課題」でした。サービスの機能を充実させられたのは「代理店の人の声」を聞けたからでした。

彼は、事業が走りはじめてから、なんだかずっとニコニコしています。

「ずっとやりたいなあと思ってたけど、1人ではできなかった。それが目の前で形になっていくのは、やっぱり嬉しいよ」と。

そう言って、社内や業界のいろんな人に、サービスを広めてくれています。

ぼくらはそういう「ずっとやりたかったけど、1人ではできなかったこと」を叶える会社です。

もしもいま、旧態依然の業界で課題を感じている人がいたら、ぜひぼくらにお話を聞かせてください。

あなたの課題は、ぼくらにとって「事業のタネ」。業界全体を変えるパワーを秘めた、貴重な原石なんです!

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鶴岡 友也/BLUEPRINT, inc. 最高事業責任者

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鶴岡 友也/BLUEPRINT, inc. 最高事業責任者
BLUEPRINT,inc. CBO ← STANDARD 元代表取締役CTO / 2017年に東大AI開発学生団体の仲間と起業し、大手650社のDX推進を支援 / 現在はBtoB SaaSを量産するスタートアップスタジオを運営 / 好きな言葉は吉田松陰の「諸君、狂いたまえ」