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『教養としての「地政学」入門』

『教養としての「地政学」入門』を読んでみました。

「地政学」とは「国は引っ越しできない」という前提で存在する学問
と、著者の出口治明さんはこの本の中で書いています。

移動すること、引っ越しすることを前提に考えたら、地政学は存在理由がなく、その場所で平和に生きるために、なすべきことは何か。どんな知恵が必要か。そのようなことを考える学問なんだそう。なるほど。

私たちが住む日本。日本という国は地政学的に見たらどういう位置づけなのでしょうか。出口さんは、次のように定義づけられています。

周辺の国々のすべてとトラブルの火種を抱えている歴史上稀な国で、ロシア、中国という大陸の二大国家が太平洋に出ていく障害となる、絶妙な位置に列島が連なっている島国である

たしかに、海を経て接している5つの周辺国、つまり、ロシアとは北方領土問題、韓国とは竹島問題があり、中国や台湾とは尖閣諸島、北朝鮮とは国交が成立していないという懸案を抱えています。

そんな周辺国と火種を抱えている状況でも、日本が平然としているように見えるのは、アメリカという世界最強国と軍事同盟を結んでいるから。そのことが大きな安心材料になっているというのは誰もが知るところだと思います。

日本にとっては、パートナーに選ぶべき相手国は事実上アメリカしか存在しないというなかで(この本では他にも同盟すべき候補の国を挙げていますが、結論的にアメリカに着地しています)、アメリカにとってはパートナーは決して日本一人ではないという現実。
アメリカは、国土も広く石油の生産高も世界一で、人口も増加しており、「アメリカ・ファースト」で十分生きていける、とても幸運な国で、さらに同盟候補国もたくさんあるという話に、読み進めていくたびに日本人として危機感を覚えていきました。

現在、日本からアメリカへの留学は2万人以下に対し、中国からアメリカへの留学生は37万人と激増しているそうです。
今の中国とアメリカの関係は悪くても、20年後、30年後を想像すると、中国からの留学生たちが大きな人脈をアメリカとつくり、両国の要人の間に相互理解し合う人脈が築かれていても不思議ではないと書かれています。学生時代はソロバン抜きで友情を育て、本当の信頼関係を作ることができるからです。そこで形成された強力な人間関係がある国とない国の未来は想像に難くないというのにも頷けます。

そこで、出口さんは、アメリカと深い人脈を形成するために、日本は官民一体となって留学生を増やしていくべきだとし、まずは留学する学生に奨学金を出すことだと書かれています。留学生問題に真剣に取り組み、アメリカとの間で新たなパートナーシップを築くための基本となる種まき政策が必要という内容にはとても同感です。

地形は変化しないけれど、世界の勢力地図は常に動いているという現実。日本の置かれている立ち位置を色々と考えさせられる一冊だと思います。


ここまで、読んで頂いて本当にありがとうございました♡

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