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『能力』という評価軸の再考

無能という評価は存在しない

昨今の,ビジネス系SNSを見渡すと,いわゆる「できる人」が,仕事における自らの有能ぶりの高らかに叫んでいるのを目にします。
そして,仕事がうまくできない人たちは,『無能』と蔑まれています。

さて,人間は理由(原因)を探る生き物と言われています。
何事にも理由を求め、理由がないと安心できないのです。

仕事においては,計算力や行動力などと言った,『能力』というものを行動の原因と考えます。
しかしながら,人間の能力というものは,知覚することができません。

そのため、人間が分かる形にする必要があり、結局はメタファー(比喩)的理解でしかないのです。
それこそが、『力』というメタファーです。
つまり、能力とは『力』というメタファーが生み出すイメージです。

一般的に力とは,個体の中に備わっているものと見なされます。
ところが,力というものは、必ずしも安定して発揮できるものではありません。

例えば,数学のテストを思い出してみてください。
テストの問題文が,教科書と異なる問い方をしているだけで解けなくなってしまった経験はないでしょうか?
もし,計算能力というものが,確固たるものであるならば,どんな問題の出し方をされても解けるはずなのです。
これは,人間の知性が文脈に依存することを意味します。

人間は,問題の中のさほど重要ではない情報に左右され,賢くなったり,愚かになったりします。
問題の文脈や状況によって,人間の知性は違った姿を見せるわけです。
つまりは,人間に確実な能力など存在しないとも言えます。

これは仕事においても同様です。
職場という環境があり,達成すべき課題があります。
それに対応できている人が有能と呼ばれ,対応できない人が無能と呼ばれます。
しかし,前述したように,文脈や状況を無視し,切り取られた個人だけを見て,有能・無能の評価をすることがいかに間違っているか分かると思います。

これは,『視点の問題』なのです。
いま一度,視点を変えてみてはいかがでしょうか?

まとめ

  • 人間は、能力というものを知覚できないので、力というメタファーを使っている。

  • 人間の知性は文脈に依存する。

  • 個人から状況や文脈を切り離して、有能・無能という評価はできない。

【参考文献】
・鈴木宏昭:たちはどう学んでいるのか- 創発から見る認知の変化-.ちくまプリマー新書

#仕事 #ビジネス #コミュニケーション #哲学 #心理学 #価値観 #労働 #仕事のポリシー

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