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病いをめぐる課題:医療従事者と患者の疾患に対する認識の違い

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臨床において,医療従事者と患者の認識の違いは度々おこることかと思います。
その原因は,臨床哲学を用いて考えてみたいと思います。
*先に「疾患」と「病い」の違いを確認することをお勧めします。
https://note.com/paz0503/n/n39e6f6d79c96

まず, 患者さんは,病気を「日常生活に及ぼす影響」という観点から「病い」として経験しています。
それに対して,医療従事者(主に医師)は病気を「ある特定の疾患を明確に示すような身体の兆候と症状の集合」として理解するよう教育されています。つまり,病気を「糖尿病」や「パーキンソン病」などの「一個事例」としてカテゴリー分けをしています。

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そして,患者は病気を日常生活に及ぼす影響から病いとして経験するので,その表現方法は日常生活に関連するものになります。
それに対して,医療従事者は客観的データから表現するので,データに異常がないと異常なしと判断してしまうことが多いです。

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本来,医療従事者(特に救命救急や急性期医療)が目指すのは,患者の病気を「病理学的な事実」として把握して「疾患を正確に診断すること」です。
ですので,そういった場面においては,患者のもつ主観的体験が無視されやすいことがあります。
つまり,患者と医療従事者は両者にとって物事の重要度が違うのです。患者は自身の身体や生活への復帰を心配し,医療従事者は客観的データの変化を心配するわけです。

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また,患者と医療従事者の認識の違いは,患者エピソードの捉え方にも違いが現れます。
例えば医療従事者は,糖尿病患者のエピソードを,カテゴリー化された糖尿病患者エピソードの一つとして捉えます。しかし,患者はカテゴリー化されることを嫌い,「他ならぬ私のエピソード」と語るのです。

ここまで,医療従事者と患者の認識の違いを解説してきましたが,すべての医療従事者が上述のような人ではありません。
ただ,医療従事者として,疾患治療のために客観的データに基づいた関わりは必須です。
その上で,患者の「病い」を捉えた関わりも必要です。その視点がないと,お互いのギャップは開いたままのように思います。

【参考文献】
・榊原哲也(著):医療ケアを問い直す.ちくま新書

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