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保存リハビリは肩関節のプロプリオセプションを改善できるか?

▼ 文献情報 と 抄録和訳

保存的リハビリテーションは肩関節のプロプリオセプションを改善できるか?システマティックレビュー

Ager AL, Borms D, Bernaert M, Brusselle V, Claessens M, Roy JS, Cools A. Can a Conservative Rehabilitation Strategy Improve Shoulder Proprioception? A Systematic Review. J Sport Rehabil. 2020 Jul 31:1-16. 1.9

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

✅ 結論
プロプリオセプティヴ・トレーニングは、肩のプロプリオセプティヴ障害を持つ人の効果的なリハビリテーションに最も強いエビデンスを示している。

[背景]
プロプリオセプショ ンの障害は、特に肩関節の障害において、持続的かつ反復的な身体障害の原因となる。そのため、臨床現場ではプロプリオセプショントレーニングが処方されている。しかし,手術を伴わないリハビリテーションが肩関節のプロプリオセプションを最適化できるかどうかは不明である。

[目的]
肩関節障害のある人のプロプリオセプションに対する保存的リハビリテーション(すなわち、非手術)の利用可能なエビデンスをまとめること。

[方法]
PubMed、Web of Science、およびEBSCOを、開始から2019年11月24日まで、系統的に検索した。選択した論文を系統的に評価し,Dutch Cochrane Risk of Bias ToolおよびNewcastle-Ottawa Quality Assessment Scaleを用いて方法論的品質を確立した。本レビューには「Preferred Reporting Items for Systematic reviews and Meta-Analyses」のガイドラインを利用した。保存的治療は以下のように分類された。(1)従来の治療法、(2)プロプリオセプティブ・トレーニング、(3)弾性キネシオロジーテープ、(4)その他の受動的治療法。

[結果]
12の論文が含まれ、58の健康な対照肩と、インピンジメント症候群、肩甲上腕骨脱臼、非特異的な肩の痛み、腱板機能不全、または脳卒中後の亜脱臼に罹患した362の肩が得られた。評価者間の一致度は84.9%と非常に高く、研究の質はまあまあ高いと評価された(バイアスのリスク:28.5%~100%)。このレビューでは、中程度のエビデンスで、プロプリオセプティブトレーニング(上半身のウォブルボードまたはフレキシブルフォイルトレーニング)が、中期的にプロプリオセプションを改善することが示唆されている。従来の治療法が肩のプロプリオセプションを高めるための付加価値であることを示唆する決定的なエビデンスは存在しない。伸縮性のあるキネシオロジーテープの貼付によるプロプリオセプションの改善については相反するエビデンスがあり、マイクロカレント電気刺激やブレーシングなどの受動的なモダリティは肩のプロプリオセプションのリハビリには効果がないことを示唆する中程度のエビデンスがあった

[結論]
プロプリオセプティヴ・トレーニングは、肩のプロプリオセプティヴ障害を持つ人の効果的なリハビリテーションに最も強いエビデンスを示している。弾性キネシオロジーテープは、肩のプロプリオセプションの感覚に影響を与えないようである。このレビューでは、肩関節プロプリオセプショントレーニング効果の特異性の可能性を示唆している。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

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✅以前にも『関節位置覚を考える』という記事を投稿させて頂いたが、近年こうしたシステマティックレビューが出されていた。本文が読めていないため、どのような”プロプリオセプティヴ・トレーニング”が肩の関節位置覚の障害に効果的であるか、その詳細はabstractのみでは分からないが、保存療法でもある程度の効果を認めることが分かった。

上記のabstractでも紹介されているフレキシブルフォイルトレーニングに関しては下記の論文が参考になる。

Sugimoto D, Blanpied P. Flexible foil exercise and shoulder internal and external rotation strength. J Athl Train. 2006 Jul-Sep;41(3):280-5.

ウォブルボードに関して、筆者は馴染みがないが、こんなものであろうか。どのように上肢に使うかは定かではないが、、、。

今回の論文で紹介されている中で、臨床上、一番活用しやすいものとしては、キネシオロジーテープだろう。ただ、これには相反するエビデンスがある。つまり、正しく評価し、貼付しないと逆効果になってしまう可能性がある。ここが、現状の課題であり、我々療法士の腕の見せ所だともいえる。

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医療従事者と研究活動における道徳感についても記事にしていますので良かったら読んで頂けると嬉しいです。

最後まで読んで頂きありがとうございます。今日も一歩ずつ、進んでいきましょう。

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