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【短編小説】失声症だけど鳥の言葉でだけ喋れる「私」の話

『飛べない翡翠の歩きかた』

 
 私は、人間である。
 或いは。
 私は、鳥である。
 それは、どちらでもあり、どちらでもないという、実に中途半端な存在であるようにも聞こえるかもしれないが、しかし事実は事実だ。
 一番最初の記憶は、今も鮮明に残っている。
 あれは私が小学四年生の五月上旬――大型連休中のことだった。どこの家族もそうであるように、私の家も連休を利用して外出をしていた。雄大な自然の中にアスレチックがたくさんある施設で、当時都市部に住んでいた私は、その目新しさに大はしゃぎしていたのを覚えている。
 草花のにおいが、木々の葉を揺らす風が、そしてなにより、一切の遮蔽物なく広がる青空が、私の五感全てを刺激した。息が切れるまで、とにかく全力で走り回って。息が整ったら、また走り回って。他の子どもたちが夢中になっているアスレチックには目もくれず、私はひたすら広場を走り回っていた。
 だけど、物足りない。
 どれだけ全力で走っても、まだ足りない。
 どうしてだろう、と考えたとき、答えは自然と思い浮かんだ。
 そうだ、飛んでいないからだ。
 空を飛べば、もっともっと楽しくなる。
 どうして最初から飛んでいなかったのか不思議なくらい、自明のことだった。
 そうして次の瞬間には、私の身体は空に羽ばたいていた。
 視界がぐんぐん高くなる。
 風が全身を撫でる。
 身体が軽い。
 心地良い。
 これこそが、私の求めているものだった。
 この高揚感と爽快感さえあれば、他になにも要らないと思えてしまうほどだった。
 ふと喉が乾いて、近くの川辺に降り立ち、水を飲んだ。水面に映った私は鳥になっていたが、これだけ自由に空を飛べるのだから、鳥の姿になっていて当然としか思わなかった。
 どれだけの時間、自由に空を飛んで遊んでいたのか、気づけば、日が傾き始めていた。鳥になって飛び回るのは楽しいけれど、きっと両親が心配している。だから一旦は帰らなくちゃ。
 鳥の姿になってもそういった思考がある自分に若干驚きつつ、私は広場へ戻る。
 地面に降り立つと、ずしりと身体が重くなる感覚があって、それまで自在に風を切っていた両腕は、人間の手に戻っていた。残念に思ったのも束の間、両親が血相を抱えて私の元へやってきたかと思うと、強く抱き締めてきた。息ができなくなるほど、強く。
 動揺と安堵で聞き取りにくい彼らの言葉から察するに、どうやら私は両親の目の届くところで鳥に姿を変え、飛んでいってしまったらしい。幻覚かと疑ったが、実際に人間の私はどこにも居ない。どうしたものかと呆然としていたところに、私が呑気に戻ってきたようだった。
「もう帰ってこないんじゃないかと思った。二度とこんなことしないでくれ」
「貴女は人間なの。人間の女の子なの。お願い、鳥になんてならないで」
 私が今日、鳥になって体験したことを伝えるより先に、両親は鳥の私を否定した。それがひどくショックだったのと、両親がこんなにも取り乱しているのを初めて見たという驚きで、私はぼろぼろと涙を流しながら、彼らに謝罪した。
「ご、ごめっ、ごめんなさ……、ごめんなさい……!」
 しかしこれは、ほとんど反射的に謝っただけであって、私はなにひとつ悪いことをしたとは思っていなかった。いくら両親とはいえ、私の好きなことや楽しいと思うことを否定する権限はないはずだ。
 きっとそう考えているのが、両親にも透けて見えてしまったのだろう。その日以降、両親は揃って異物を見るような目を私に向けるようになった。


 鳥になった私は、どうやらカワセミという種類の鳥らしかった。青い翼に橙の身体をした、とても綺麗な色をした鳥で、私は余計に鳥の自分を好きになった。
 私はいつでも鳥の姿になれるし、人間の姿に戻れもする。こんなに素晴らしいことはないというのに、両親はこちらがげんなりするほどの拒絶反応を示す。だから子どもながらに、これは『普通じゃない』、『おかしい』ことなのだと感覚で理解していた。仲の良い友だちにさえ、鳥になれることは言ったことがなかった。私はいつも放課後に公園で一人こっそりと鳥に姿を変え、その自由を楽しんでいた。
 だが、私の秘密の自由はそう長くは続かなかった。
 私がどれだけ隠れていたつもりでも、都市部でカワセミなんてそうそう見かけるものではなく、六年生の夏には両親にバレてしまった。小学生にしては長く隠れられたほうだとも思うし、逆に言えば、長かったぶん、親の怒りのボルテージを必要以上に上げる要因にもなった。
 リビングで開かれた家族会議は、あまりに怒りに満ちていて、会議というよりかは、有罪が確定している裁判に出席しているような気分だった。
 果たして私に待っているのは、断罪か。
 或いは、死刑か。
 ダイニングテーブルを挟んだ向こう側から、両親が二人揃って私を糾弾する。
「二度と鳥になるなって言っただろう、みどり。おかしいんだよ、お前のそれは。普通の人は、鳥になんかならないんだ。頼むから、まともになってくれ」
「娘が鳥になるだなんて、こっちの頭がおかしくなったかと思われるから、誰にも相談できないの。ねえ、貴女が鳥にならなければ、それだけで良いの。ね、簡単なことでしょ? どうしてそんな簡単なことができないの?」
 否定、否定、否定が続く。
 お父さんもお母さんも、もうひとつの私の姿を否定する。
 ここに居ると、息をすることさえ否定されている気分になって、苦しくなった。
 二人とも私の話を聞こうとすらしてくれない。
 人間が鳥に姿を変えることが異常というのは、嫌というほど理解した。だから、お願いだから、私自身まで否定しないで欲しい。
 そう言いたいのに、声が出ない。
 次第に怖くなって、私は家を飛び出した。
 玄関扉を勢い良く開け、即座に鳥になる。マンションの高層階からの自由落下にも似た飛行は、ほとんど自殺に近かったように思う。けれど今の私はカワセミで、その翼を羽ばたかせれば、空を飛べるのだ。
 慣れた所作で近くの木に止まり、飛び出してきたマンションを見上げる。
 もうあの家には戻れないと思った。家出しよう。いや、いっそこのまま、一生を鳥として過ごすのも良いかもしれない。山まで行けたら、きっと仲間の鳥も居ることだろう。
 我ながら素晴らしい考えだ、と悦に浸りながら羽を広げて飛び立った、その直後。
 かつて経験したことのない威力で、私の身体は弾き飛ばされた。
 都市部の交通量の多い道だ、車にぶつかってしまったのだろう。脳が冷静に状況を分析している間にも、私の身体は衝突した衝撃を流しきれず、何度かアスファルトの地面に叩きつけられる。不思議と、痛みはなかった。それよりも、車に轢かれたことにびっくりしていて心臓が痛いくらいにどきどきしていたし、視界はぐらぐらと揺れていた。
 そうして気がつけば、私の身体は人間に戻っていて、歩道に血溜まりを作っていたのである。
 怖い。誰か、私の手を握って。大丈夫だよって言って、抱き締めて。
 そう言いたいのに、口がぱくぱくと開くだけで、声は出てくれない。
 通行人の悲鳴が遠巻きに聞こえ、救急車のサイレンが近づいてくる。視界の端にはお父さんとお母さんが居た。家を飛び出した私を追ってマンションから降りてきて、事故現場に出くわしたのだろう。あまつさえ被害者が実の娘だというのだから、居た堪れない。他人事のように、そう思った。


 結論から言うと、この交通事故による犯人は捕まらなかった。
 当然と言えば当然だろう、轢いたのはあくまでも一羽の鳥であって、人を轢いた痕跡はどこにもないのだ。事故を目撃した人たちからも、人が車にぶつかったような音はせず、気づいたら道端に血塗れの女の子が倒れていたと、一様に証言された。
 車に轢かれた私の身体はというと、顔の左側に痛々しい傷が残った程度で、後遺症もなかった。事故に遭ってから二週間ほど意識不明になっていた割に、医者も驚くほどの早さで回復したらしい。これ幸いとばかりに、私の意識が戻らない間に様々な検査が行われたようだが、私は正真正銘の人間で、異常は見当たらなかった。
 しかし、良かったのはここまでだ。
 病院で目を覚ました私は、声が出せなくなっていたのだ。
 始めは失語症を疑われたが、脳に異常はなし。となると私のこれは、心因性失声症であるという診断が下った。
 医者によれば、心因性失声症とは、ストレスや精神的ショックが原因らしい。両親は口を揃えて、よほど交通事故に遭ったことが怖かったのだろうと言って、涙を流した。よくもまあいけしゃあしゃあと、そんなことを言えたものだ。なにも言えない私は、心の温度が急速に冷えていく感覚を味わいながら、『交通事故に遭ったショックで声が出なくなってしまった可哀想な娘の親』を演じる二人を傍観していた。いや、彼らにとってはその思い込みこそ事実なのだろうから、演じていると言うのは流石に失礼かもしれない。けれど、相変わらず私の話を一切聞かず悲しみに暮れる二人を見ていると、どうしてもそう思ってしまうのだ。
 退院する頃には、季節はすっかり秋になっていた。
 リハビリを真面目に行ったおかげで身体はすっかり元通りだったが、失声症までは治らなかった。当然といえば当然だろう、ストレスの原因は毎日のように病室を訪れ、自身が話したいことだけ話して帰っていたのだから。むしろ、入院中は顔を見ないで済む時間が多くて安堵していたところもあるというのに、退院してしまったらそれもなくなってしまう。
 案の定、家では常に監視された。
 医学的には人間として問題のない私が、二度と鳥にならないように目を光らせているのだ。そうでなくとも、私は家を飛び出し鳥に姿を変え、交通事故に遭った前科ができてしまっている。安全の為に、なんて大義名分の下、囚人のような日々を送ることとなった。
 それに伴い、事故に遭う直前に考えていた家出計画も、ご破産になる。
 カワセミの姿になる隙さえ与えられない生活を強制されていることも、要因としてはもちろんある。だが、それよりも、カワセミという小さい身体で車と衝突したという事実は、私が思っていた以上に根深いトラウマになっていたのだ。姿を変えようとすると、身体が震えてしまうようになってしまった。どれだけ人気ひとけのない場所であろうと、刻み込まれた恐怖が一気に蘇る。空を飛ぼうとしたら、またどこからか車にぶつかられてしまうのではないか。そんな不安でいっぱいになってしまうのだ。
 私はもうカワセミになれない。自由に空を飛べなくなってしまった。
 その現実が、なにより私の心を抉った。


 
 母親がその町の話を聞いてきたのは、十二月に入ってからのことだったと思う。
 遠い親戚の葬式の手伝いに呼ばれ、そこで透目町すきめちょうという、地方にある町の話を聞いたのだと言う。
 母親が言うには、ほどよく田舎で、誰もが自然体で居られる場所であるらしい。
 それだけで、私は母親の目論見がわかってしまった。
 端的に言えば、自分たちの体裁の為だ。
 事故から数ヶ月経っても失声症が治らない娘が居る家庭は、日に日に悪目立ちするようになっていた。なにより異常を嫌う彼らのこと、その視線からはなんとしてでも逃れたかったのだろう。知り合いのいない田舎で心機一転、娘の療養という名目での引越は、どこにも角が立たない。
 透目町への移住計画は、とんとん拍子に進められていった。例によって、私に意見は求められなかったし、そもそも、発言権さえ与えられなかった。


 
 私が中学生になるのに合わせ、私たち家族は透目町に引越した。
 この町へ引越した理由こそ癪に障るが、透目町自体は、とても空気の良い町だった。単に自然が豊かだからそう感じるのかと思っていたが、なんというか、人間が生み出す独特な淀みが、限りなく薄いような気がするのだ。そういえば、母親が最初に透目町の話を出したとき、『誰もが自然体で居られる場所』と言っていたっけ。いやに抽象的なことを言うなと思っていたが、案外、的を射ていたのかもしれない。
 そんな風に考えながら、これから通うこととなる中学校に足を踏み入れたのだが。
 その日、私は『自然体で居られる』ことの、本当の意味を知ることとなった。
 入学式で校長先生が話している最中、私の前に座っていた男子がくしゃみをした。式典の最中ということもあり、本人なりに抑えたのだろうが、それは紛うことなきくしゃみだった。それだけならまだ良い。くしゃみは生理現象だ、下手に我慢するほうが身体に悪い。私が驚いたのは、そのあとのことだ。
 くしゃみをした男子の身体が、ゆっくりと宙に浮き始めたのだ。
 それはまるで、手元から離れて行く風船のように、ふわふわと上昇していく。
 それだけでも驚きだというのに、隣に座っていた彼の友人らしき男子は、「お前、またかよ」なんて苦笑しながら、浮遊する彼の手を引っ張り、椅子へと戻したではないか。
 人間が一人、突然宙に浮いたというのに、生徒席からも、保護者席からもどよめき声のひとつも聞こえない。
 校長先生も、一瞬だけ見遣った程度で、普通に話を続けている。
 自分の頭がおかしくなったのかと思った。
 だって普通、人間はその身ひとつで浮いたりしない。仮に、私が鳥に姿を変えられるのと同様に、彼も自在に浮遊することができるのだとして、それを人目のつくところで披露するのは、いけないことのはずだ。私はずっとそうやって教えられ、怒られ続けてきた。けれど、私の前に座る男子は、それを個性のひとつであるように周りから受け入れられているのだ。
 何故。どうして。
 頭が処理限界を迎え、視界がぐわんぐわんに揺れる錯覚を覚えつつ、入学式を乗り切った自分を褒めてやりたかった。案の定、帰宅後、入学式に参列していた母親は、やれ躾がなってないだの、あれが自分の娘だったらと思うと顔から火が出ていただの、私にも聞こえるように大声で父親に報告していた。
 しかし、特異な能力を持っているのは、あの男子一人に留まらなかった。
 涙が花びらに変化する子、直接触れると他人の心が読めてしまうから常に手袋をしている子、風を自在に操ることのできる子。そして、猫とも会話ができる子。
 一学年二クラスしかなく、学校全体で見ても二百人ちょっとしか生徒がいない中学校で、同級生にこれだけ異能を持つ人間が居るというのは、はっきり言って異常だった。私の通っていた小学校は、ここよりもっと人が多かったけれど、そんな子は一人も居なかったはずだ。そんな異常者が居たら噂の的になっていたことだろう。
 しかしここ透目町では、それが当たり前の日常として受容されている。『誰もが自然体で居られる場所』とは、異形も異常も、当たり前の日常として飲み込まれているからこそ成立しいているのではないだろうか。ある種異常なまでの受容性は、なにが理由かまではわからないにしろ、この町特有のものだろう。中学校生活に馴染んでいく過程で、私はそう結論づけることにした。
 どんな異常も日常に飲まれていって当然のこの土地で、しかし私は自分のことを誰かに話す気には到底なれなかった。
 相変わらず声が出ない状態では、そもそもの話、同級生とコミュニケーションを取ることが難しいというのはもちろんのこと。この土地特有の人柄を信じて、自分は鳥にもなれるのだと打ち明けたところで、両親のように否定されてしまったらと考えると、どうしても勇気が出なかった。
 とはいえ、変わった特性を持つ人が少なからず居る土地柄のおかげか、顔面に痛々しい傷跡があって喋れず、中学進学に合わせて突如やってきた人間が一人いようと、迫害されることはなかった。私のような異常者でも、この町でなら、少なからず居場所はあるのかもしれない。そんな微かな希望を持てたことは重畳だった。
 中学生になって一番良かったことは、部活動に所属したことだ。
 田舎で交通量も少ないからと、引越してきてからは登下校の付き添いという名の監視もなくなったが、あまり家には寄り付きたくなくて、消去法的に美術部に入部したのだが、これが思いの外しょうに合っていた。ほどんどの部員は空調の効いている美術室内で各々制作していたが、私は専ら外に出て写生をしていた。透目町の空気や風景が好きで、写生している間だけは余計なことを考えず、穏やかな気持ちでいられた。
 なにより、思いがけない収穫もあった。
 どうやら私は、人間の姿のときも鳥の言葉がわかるらしかったのだ。
 カワセミの姿のときは当然理解していた鳥の言葉が、人間のときも理解できるとは思ってもみなかった。いや、もしかしたらずっと前から聞こえていたのかもしれないが、外出時は常に隣に監視の目があったから、気がつけなかったのかもしれない。
 ともかく、ある日、写生中に近寄ってきたスズメが確かに『ごはん、ごはん』と言っているのがわかったのだ。
 私は自分が声を出せないことを承知の上で、口パクのつもりでスズメに『ここにご飯はないよ、ごめんね』と答えたのだが――なんと私の口からは、カワセミの鳴き声が飛び出したのだ。久しぶりの発声でぎこちなくはあったが、それは間違いなくカワセミの鳴き声だった。
 私の声を聞き取ったらしいスズメは、驚いた様子を見せつつも逃げることはせず、
『ごはん、どこにある?』
と返してきたではないか。
 会話が成立している。
 ああ、誰かとまともに会話をするのはどれくらいぶりだろう。
 目頭が熱くなるのを感じながら、溢れそうになる熱をぐっと堪え、
『あなたはいつも、なにを食べているの?』
と訊いてみた。
『いろんなもの。いっぱい食べる』
『それなら、あっちの草むらはどうかな。葉っぱも虫もたくさんいると思うよ』
『行ってみる。ありがとう。ばいばい』
『ばいばい』
 短い会話のあと、スズメは私が指さした方向へ飛び立って行った。スズメは茂みに入って、あっという間にその姿は見えなくなる。
 刹那、せき止めていたはずの涙が目から零れ落ちた。それは喜びというにはあまりに湿っぽく、どちらかと言えば、ここ数年間抑え込んでいたなにかが涙となって溢れてきたような感覚だった。
 その日以来、写生中に近寄ってきた鳥たちと会話をする時間ができた。自然と私のスケッチブックには鳥の絵が増えていったが、それを誰かに見せることはなかった。学校に居る間だけ、もっと言えば、こうして絵を描いている時間だけは、私は空を飛べた頃のように自由だったのだ。今度こそこの自由を守る為には、万が一にもバレるわけにはいかなかった。


 さて、前置きが長くなってしまったが、ここからがようやく現在の話だ。
 結局、中学校で一人も友達ができなかった私は、隣の市にある高校に進学しても、相変わらず一人ぼっちだった。
 高校でも美術部に入部し、写生中に鳥とお喋りをする日々である。
 透目町に引越してきて一年も経てば治るだろうと思われていた失声症は、結局、高校一年生の今も治っていない。いつの間にやら『交通事故に遭ったショックで声が出なくなってしまった可哀想な娘の親』から『交通事故によって声帯を失った可哀想な娘の親』という設定に移行し、過保護という名の監視は続いていた。少なくとも彼らの前で異常な行動はしていないはずだし、鳥とお喋りをするときは、常に周囲を警戒しているから、誰かに見られてもいないはずなのだけれど。きっと、一度失った信頼を取り戻せないというのは、こういうことを言うのだろうな、と他人事のように嘆息するばかりである。きっと私はこれから先も、失敗作なりに軌道修正を繰り返され、かたちだけでも普通に見えるよう捏ねくり回されて原型が徐々になくなっていくのだろう。私は私の人生を、とっくの昔に諦めていた。
 だが、変化は前触れもなく現れる。
 私にとってのそれは、一学期中間考査の最終日――その夕方のことだった。
 考査前の部活動停止期間も終わり、数週間ぶりに軽く写生とお喋りを楽しんだ、帰り道。いつもと同じ道に、いつもは見かけないものがあったのだ。
 遊具がみっつしかない小さな公園の、出入り口の近く。
 雑種の中型犬二匹と、中学の同級生一人が居た。
 あれは確か、望月もちづき君だ。
 いくら友達が居なくとも、一学年二クラスしかないのだから、三年間で同級生の名前は大方覚えてしまった。そうでなくとも彼は、あることがきっかけで気になってはいたのだ。それは、中学二年のマラソン大会の練習をしているときに――
「――っ!」
 と。
 ぼんやり思い出に浸りながら、横を通り過ぎようとした、そのとき。
 望月君の連れている犬と、目が合った。それだけなら愛らしい顔を正面から見られて眼福だと思う程度だったのだが。次の瞬間には、二匹揃ってリードを持つ元同級生を振り払って、全速力でこちらに駆けてくるではないか。
『こnにtは! kんばんhっ!』
『目gあっtよn、犬h好きdsか!』
 満面の笑みを浮かべて来たかと思うと、私の足元をぐるぐると回り始めた。が、見た感じ、敵意はなさそうだ。犬の言葉は聞き取りにくいが、挨拶をされているように思える。
「わー! 駄目だよ、こっちおいでっ! ……って、あれ? 花桐はなぎりさんだ」
 二匹のリードを拾い上げて私から引き離したところで、望月君のほうも私に気がついた。私でさえ覚えているのだから、向こうだって言わずもがなだ。全く、狭い世間である。
 声の出せない私は軽く会釈をすることで、返事の代わりにする。
「急にごめんね、びっくりしたでしょ。今日は久しぶりに俺と散歩するから、二匹ともずっとテンション高くて……」
 屈んで犬を撫でながら話す望月君の言葉を、犬がばふばふと鳴いて遮る。彼は嫌な顔ひとつせずに、至極自然にそれに耳を傾けたかと思うと、
「うん、うん、俺も嬉しいよ。……ああ、花桐さんと目が合って、嬉しくって走ったんだ?」
と、犬に答えていた。
 望月君は、猫とも話ができる。
 それは同じ中学の人なら、全員知っていることだ。
 うちの中学で行われるマラソン大会は、校外をぐるりと回ってグラウンドに戻ってくるコースになっている。雄大な自然の中に中学校が建っているが故に、マラソンコースも自然と緑豊かとなる。
 中学二年のマラソン大会の練習後。
 とある女子グループが、望月君に助けを求めているのを見かけたことがあった。コースを走っている途中に見かけた猫をなんの気なしに撫でたら、学校まで着いてきてしまって困っている、と。
 望月君は件の猫の元へ向かうと、本当に話を始めた。にゃうにゃうとなにかを訴える猫に、真摯に頷き、猫に代案を提案する。望月君は日本語で話しているし、猫は鳴いているだけなのに会話が成立しているように見えるから、不思議に思ったのをよく覚えている。例えるならそれは、日本人とアメリカ人がそれぞれ母国語で会話を成立させているような奇跡と奇妙さを併せ持っているようなものだ。
 結局、あのときの猫は望月君の知り合いの保護団体が引き取ったらしいというのを、風の噂で聞いた気がする。
 そう、望月君はあくまで猫と話ができる人のはずだ。
「……?」
 私は身振り手振りで、望月君は犬の言葉もわかるのか、と尋ねた。
 当たり前のように、こうして目の前で犬と話している姿を見て、そう疑問に思わざるを得なかった。或いは、犬と猫は言語形態のようなものが近しいのか、なんて推察もしたのだが、果たして。
「いいや、猫ほどはっきりとはわからないよ。そうだなあ、英語の授業で習った単語で構成された英文を聞いている気分。知ってる言葉がいくつかあるから、なんとなく言いたいことはわかる感じ」
 どうやら望月君のそれは、私とは聞こえかたが異なっているらしい。私にとって犬の鳴き声は、周波数の合わないラジオ番組を聞いているような気分になる。なにを言っているのか、わかるようでわからない。
 犬は再び望月君に向かってばうばうと鳴くと、望月君は頷きながらそれを聞き取り、不意に私のほうを向く。
「あのさ、花桐さん、良かったらこの子たちと一緒に散歩しない? よくわかんないんだけど、なんか花桐さんのこと気に入ったみたいでさ」
 犬の散歩には、興味がある。我が家にペットはいないから、昔から憧れてはいた。だけれど即答で頷くのはなんとなく躊躇われて、私は、この子たちは望月君の家で飼っている犬なのか、と確認した。
「ううん、この子たちは、俺がボランティアをやってる保護団体で預かってる子なんだ。どうかな、花桐さん。この先にある橋までで良いからさ」
 そう言って、望月君は私にリードを差し出した。
 望月君が提案した行き先は、ここからでも見える場所だ。どれだけゆっくり歩いても十五分もかからない程度の距離だろう。なにより、私たちのやり取りを見つめる犬の、期待に溢れた視線があまりに眩しくて、断るという選択肢は瞬時に消滅した。
 私が一匹のリードを受け取ると、望月君は、ありがとう、と微笑んで歩き出した。
 両親以外の誰かとこうして外を出歩くのは久しぶりだというのに、加えて相手は男子である。若干の緊張を孕む私をよそに、望月君は楽しげな声音で話し始める。
「この辺、いつもの散歩コースじゃないからあんまり来ないんだけど、道路がまだ新しいからか、歩きやすくて良いね。チカちゃんの言ってたとおりだ。ああ、チカちゃんって、仲の良い地域猫のことね」
 道路が新しいのは、この辺りが新興住宅地だからだろう。かくいう我が家も、都会では目が飛び出るほど高額な土地も、ここは良心的な価格だったらしく、広い庭付きの一軒家を構えたほどである。
「花桐さんの家もこの辺りだって風の噂で聞いたことあるけど、そもそも県外からこっちに引越してきたんだっけ? どう? 透目町は。……なんて、もう丸三年も住んでる人に訊くのも変な話か」
 私相手に、沈黙を埋める為の世間話を一方的にするものだと思った矢先、突如として発言を求められ、私は目を丸くして望月君を見た。どんな感情でそんなことを言っているのか、確認しようと思ったのだ。
「え、だって、この子たちだけじゃなくて、俺も花桐さんと話をしてみたかったし……」
 しかし、そうやってさも当然のように言われると、こちらとしては余計に言葉に詰まる。いや、そもそも言葉を紡ぐ喉が正常に動作していないから、言葉なんて出しようがないのだが。
「文化祭で展示されてた花桐さんの作品、すっごい素敵だったからさ。どんなものを見て、どんなことを考えていたら、あんな風に描けるのかなって、訊いてみたかったんだ。だけど花桐さん、あんまり人と関わりたくなさそうで、訊くに訊けなかったんだよね」
「……」
 望月君の言う絵は、果たしてどれのことだろう。文化祭で展示した作品に限ったところで、それが三年分だと、それなりの数になる。直近の記憶に残っているものと仮定するなら、三年生のときのものだろうか。あれは確か、受験勉強の息抜きにちまちま描き始めたら、それまでで一番描き込んだ作品になったものだ。中学校から見える風景を描くのも、これで最後になると思ったら、ついつい熱が入ってしまったのだ。
 そんなことをぼんやり思い出しながら、私は筆談用の小さなノートを取り出した。生憎と高校生になってもスマートフォンのひとつも所持が許されていない私は、アナログな方法でしか意思表示ができないのである。
『この町は居心地が良い。気に入ってる。そういう気持ちを込めて絵を描いたつもり』
 歩きながら書いた字は少しがたついていたが、読めないほどではない。だが、暗くなりつつある野外では、そもそも見えにくかった。
 望月君は目を細めてノートに書かれた文字を読み取ると、へえ、と短い声を上げる。
「それは良かった。ほら、ここっていろんなことは起きるけど、なんにもないところだからさ……うん?」
 望月君の連れている犬が、彼を見上げてなにやら訴えていた。望月君は歩きながらそれを聞き取り、
「そっかあ、俺も君に会えて嬉しいよ~。一緒にたくさんお散歩しようね~」
と、なんともほのぼのとする返事をした。
 この二匹の犬は、とにかく望月君のことが大好きで、お喋り好きのようだ。
『いつからボランティアをしているの?』
 ノートを出したついでにと、私も質問してみることにした。
「高校生になってからだから、今年の四月からだね。あ、どうして猫と話ができるのに、猫の面倒を見てないんだって顔してる。はは、花桐さん、意外と表情に出るタイプなんだね……じゃなくて。俺が犬の散歩を率先してやってるのは、単純に、猫以外とも話ができるようになりたいからなんだ」
 猫と話せるだけでも充分すごいのに、と首を傾げた私に、望月君は続ける。
「俺さ、将来、獣医になろうと思ってるんだ。動物の言葉がわかる獣医ってすごいじゃん。だから今は、練習中ってところ」
 あまりに真っ直ぐで眩い言葉に、私は思わず息を呑んだ。
 私たちはまだ高校生になったばかりだ。ようやく高校受験から解放され、新しい学校生活に慣れることに躍起になっているところだというのに、彼はもう将来に向けて走り出している。
 将来なんて、どうなるのかわからない。
 明確に目指す目標も、なりたいものもない。
 どこかの大学へ進学して、どこかの会社に就職して働く人生なのだろうと、漠然としか考えていなかった。いや、これは『考えている』なんて大層なものではなく、敷かれたレールの先をぼんやり眺めているだけに過ぎないのだろう。
「もう将来のこと決めてんのって思うかもしれないけど、なんというか、これが今の俺の役目だと思うんだよね。なにかの縁や因果で俺にそういう力が備わっているなら、俺はそれを活かしたい。それなら獣医かなっていう、割と安直な発想でしかなんだけどさ」
 きっと望月君にとっては、それが彼にとっての人生のレールなのだろう。私と違うのは、誰かに敷かれたものではなく、自分で選んで敷いたものだという点だ。わかりやすく先が見えていて、進みかたもわかっていて、それに野次を飛ばす人間も居ない。なんとも理想的な人生設計だ。
 自分の適性を正確に判断し、進むべき道を決める。それができなかった人間が溢れかえっている世の中で、やっぱりこの時点で諸々が定まっている望月君は偉いと思う。
「それで、さ。ずっと花桐さんに訊いてみたいことがあったんだけど、良いかな」
 それはさっきもう終えた話題では、と思ったが、周囲を念入りに見回して誰も居ないことを確認する望月君の様子を見るに、こっちが本命の話題だったらしい。
 あのさ、と望月君は声を潜めて、言う。
「どうやったら、花桐さんみたいに鳥と仲良くなれる?」
 刹那、胃を直に掴まれたような錯覚を覚えた。
 吐き気で喉が締まるような思いがする。
 冷や汗が、じっとりと頬を伝う。
 どうして望月君が、それを知っている?
「覗き見るつもりはなかったんだ、本当に。たぶん秘密にしてることだろうなって思ったから、このことは誰にも言ってない。猫にも」
 殺気立った私を見て、望月君は慌ててそう付け足す。その表情は真剣そのもので、からかっているわけでも、脅すつもりもないようだ。
「花桐さんさ、俺と高校が同じってのは知ってる?」
 不意にそう問われ、私は首を横に振る。
「だよね、クラスが違う上に遠いし。俺が見かけたのは、本当に最近のことで――ゴールデンウィーク明け頃かな。花桐さん、放課後に駐輪場の裏手で写生してたことあるでしょ。あのとき、俺も高校に縄張りを持ってる猫とあの辺りで日向ぼっこしてて、偶然、鳥と仲良く遊んでる花桐さんを見かけたんだよね。俺は猫の友達が多いからか、鳥全般から警戒されまくっててさあ。あんなに楽しそうにしてるの、羨ましくって。コツとかある?」
「……」
 警戒が甘かったとか、普通じゃないことがバレてしまったとか、そういうことで頭の中がぐるぐるしていたはずが、いつの間にか、毒気を抜かれたように落ち着いていた。
 猫と話ができることを周囲から否定されず過ごしてきて、それを土台に獣医を目指し、ボランティア活動までするような人が、鳥と仲の良い私を羨ましがるなんて。
 さっきまで締め上げられていたようだった喉元に、すっと空気が入ってくる。
 冷え切っていた身体が、内側からぽかぽかとしてくる。
 望月君になら話しても大丈夫だろう。
 中学の三年間と、今の会話で、私はそう確信した。
『この言葉は、聞き取れる?』
 と。
 私は初めて、人前でカワセミの声を出した。
 周囲には誰も居ないが、それでも念の為にノートで口元を隠し、望月君からだけ、私の口からそれが発せられたのだとわかるようにして見せた。
 果たして、望月君はひどく目を輝かせていた。
「ちょ、ちょっとだけならわかる。微妙に周波数の合わないラジオみたいだけど、聞き取れてるよ」
 望月君は見るからにテンションがだだ上がりしていたが、大声を出すことはしなかった。信頼を倍にして返してくれたようで、心がくすぐったい。
『私は、人間の声は出せないけど、鳥の声なら出せるの』
「そっか、あれは花桐さんと鳥たちとのお喋りだったんだね。そりゃあ、楽しそうなわけだ。あ、鳥って種類によって鳴き声って全然違うと思うんだけど、花桐さんの声ってどの鳥とかってわかる?」
『……この声は、カワセミ』
 色鮮やかな姿を思い起こしながら、私は答えた。
 もう何年もあの姿になれていないし、これから先もなることは叶わないであろう姿だ。
「これは俺の推測だから、違ったら違うって言ってもらって構わないんだけど」
 少し考えるような間があってから、望月君は言う。
「花桐さんって、鳥の姿になれたりもする?」
『どうして、そう思ったの?』
 少しだけ躊躇って、それから私は意を決して、そう尋ねた。
「カワセミって、確か青と橙の色の鳥だよね」
『うん』
「今、こうしてカワセミの言葉で話してる花桐さんの髪の色に、少しだけその色が混じってるんだよ。だから、もしかしたら姿も変えられるのかなって思った」
『……そうだとしたら、望月君はどう思う?』
 髪の色に影響が出ているなんて、全く気がつけなかった。
 もしかしたら、望月君は『動物と話せる』という共通点で、私に親近感を持ってくれたのかもしれない。姿まで変えられるとわかったら、両親のように、気持ち悪がられてしまうのだろうか。
 信じた矢先に疑ってしまう。悪癖だとわかっていても、即時に直せるものではなかった。
「え? 普通にすごいし、羨ましいって思うよ。俺は猫と話せるけど、猫にはなれないからさあ。前に、しろさんとかけっこしようって誘われたけど、人間と猫だと、スピードも、見えてる景色も違うからさ。基本的には俺のこと大好き全肯定マンのしろさんも、あのときはちょっと残念そうな顔をしてたんだよね。だから、本当に羨ましいと思う」
 しかし望月君は、私の心配などよそに、けろりとそう答えた。
 いや、私だってこの町に引越してきてから数ヶ月のうちに、頭のどこかでは理解していたのかもしれない。この町の人間は、異能や異形を無闇に否定することはない、と。それでも臆病風に吹かれて自ら殻に閉じこもっていたのは、他でもない私自身だ。
『昔は、カワセミの姿にもなれたよ。今はちょっと、できないけど』
「そっか。まあ、生きてればいろいろあるもんね」
 詳細を語りたくない私の心情を察してか、望月君はさらりと流して、話を続ける。
「あのさ、花桐さん。今度、鳥とのお喋り会に俺も参加させてもらえないかな。鳥と話す機会って少なくて、言葉のチューニングがいまいち上手くいかないんだよね」
 既にカワセミの声で話す私と問題なく会話を成立させているというのに、望月君は熱心だな、なんて思う。それだけ獣医になるという夢に具体性を持たせているということだろうか。
『良いよ』
 その夢に協力できるのならと、私は快諾した。
 望月君は、やった、と笑みを深めて、言う。
「ありがとう、花桐さん。いつなら都合が良い?」
『いつでも大丈夫。望月君のほうが忙しいだろうから、時間があるときに声をかけてくれたら、それで良いよ』
「そう? それなら、行ける日がわかったら教えるね。花桐さん、三組だっけ?」
『うん』
「おっけ。あ、ちなみに俺は六組なんだ」
 そうして話がある程度まとまってきたところで、約束の橋に到着した。
 私は橋を渡らず、住宅街へ。
 望月君は橋を渡って、保護施設へと戻るのだろう。
 預かっていた一匹のリードを返すが、犬はなんだか名残惜しそうな表情をしているように見えた。
『また遊ぼうね。ばいばい』
 私が小声でそう声をかけると、犬はその言葉を理解したのかしていないのか、目を輝かせ、一際大きな声でワンと鳴いた。これは私にもわかる、『うん』と言ったのだ。よしよし、と頭を撫でると、それで満足したのか、望月君の足元へと戻っていく。
「それじゃあ、ばいばい、花桐さん。またね」
 二匹分のリードを持ち、望月君はこちらに手を振った。
 私はそれに頷き、手を振り返した。またね、と声に出して言いたかったけれど、大声が出せない以上は仕方がない。
 望月君は前に向き直ると、二匹の犬を連れて橋を渡って行った。途中、犬は何度かこちらを振り返ったが、私はその度に手を振って別れを告げた。そうして犬が振り向かずに歩いていけるようになったことを確認してから、私も帰路に就く。
 いつもなら憂鬱で足の重たくなる帰り道。
 しかし、数年ぶりに同級生と話ができたからだろうか、今日はなんだか、足が軽く感じられる。心の内がぽかぽかとしていて、気分が良い。
 獣医。獣医かあ。
 望月君から語られた夢を、今一度、頭の中で反芻する。
 自由に焦がれて空を飛ぶことばかりに意識を集中していたけれど、きっと今はまだ飛び立てはしない。
 それでも、この町でなら、地に足をつけて歩いていけそうな気がした。




※猫と話ができる望月君は、下記の物語にも登場しています。
 気になる物語がありましたら、単品でも読める仕様になっているので、是非ご一読ください。

こちらは、望月君の姉視点の物語。


こちらは、望月君としろさんが登場する物語。


こちらも、望月君としろさんが登場しますが、出番はちょっとだけです。


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