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42歳の女装モデル兼2児のパパ。多様性のひとつの形は、オチのないアンジャッシュ?

Twitterのフォロワーは20,000人超え。地上波テレビにも出演した実績を持つ女装モデル、谷 琢磨(たに たくま)さん、42歳。

また、女装モデルだけでなく、ロックバンド『実験台モルモット』のボーカルとしても活動中。

そして実は谷さん、なんとそれだけではなく「1歳と3歳の2人姉妹のパパ」という顔も、持ち合わせています。

「人気女装モデル」に「ロックバンドのボーカル」、そして「2児の父親」と、多種多様な役割の間をせわしなく駆ける谷さんへ、今回は「仕事と子育ての両立」や「女装家パパが社会で暮らすこと」などについて伺いました。


対談相手は、『実験台モルモット』の元プロデューサーで、現在は日本で唯一のベビーテック専門メディア「Baby Tech」の運営や、育児系IT商品サービス総合コンサルティング事業などを行う、パパスマイル代表の永田です。6歳の娘さんの育児にも、奮闘の日々。

「ロックバンドのボーカル」と「そのプロデューサー」として出会った2人が、「人気女装モデル」と「ベビーテック企業の社長」として、5年以上の時を経て再会しました。

(インタビュアー:パパスマイルBLOG編集長 藤本けんたろう)


「海外のファッションショー」よりも「娘とのお風呂」

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──谷さんはふだん、仕事と子育ての両立はどのようにされていますか?


じぶんはフリーランスなので、「定時」という概念がないんですよね。だからきょうは一日中お仕事とか、夜だけとか、日によって仕事をする時間が違うんですけど、どんなことがあっても子どものお風呂だけは、毎日入れるようにしています。

──おお...!毎日はすごいです...!


たとえば夜にイベントへ出演するお仕事があっても、リハーサルが終わったタイミングで一旦家に帰ってきて子どもをお風呂に入れて、それからもう一回イベント会場へ戻ることもあります。

仮にお仕事が入っていても、じぶんが家庭内で持った役割は、できる限り果たしたいなと思っていて。お仕事でお世話になっている方々も、「谷さんはお子さんがいるから」と言って時間の調整をしてくださることもあるので、そこは本当にありがたいです。

永田
谷くんみたいに「子どもがいるから途中で抜けることもあります」って、宣言することは大事ですよね。宣言すると、周りの方たちってけっこう合わせてくれるものなんですよ。

逆に一番ダメなのは「言わないこと」で、「ウチは子どもがいるから帰りたいんだけどな...。でも言い出せないな...」となってしまうと、お互いに働きにくくなってしまいますよね。

──たしかに「素直に伝えること」が、一番大事なのかもしれないです。

永田
たとえばぼくの妻も、いま時短で働いているんですけど、もう「16時で帰ります!」って宣言してるんです。そうすると、16時以降は仕事の連絡が来なくなるって言ってました。周囲の人たちも「この人はこういう働き方なんだ」と分かれば、それを無理に崩そうとはしないですよね。


もうひとつ、お仕事と子育ての両立みたいな話で言うと、ありがたいことに結婚して子どもができてから、女装モデルのお仕事も順調にいき始めたんですね。そのなかで、海外のファッションショーからも、お声がけしていただけるようになったんですよ。

ただ、じぶんはやっぱり子どもをお風呂に入れたいので、「日帰りのスケジュールだったらお受けできます」って返信してます。そうするとまあ、当然メールは返ってこないんですけど(笑)

──たとえばそれで欧米まで行くってなると、往復するだけで一日が終わっちゃいますもんね...。


でもそれで悲しいっていうよりかは、いまじぶんはやっぱり子どもを最優先にしたいので、いまのこの環境でできる仕事をさせていただくって感じですね。幸い、いまでも十分にお仕事が回っている状況ではあるので。

永田
特に谷くんの場合は、他に替えのきかないキャラクターだから、余計に谷くん中心にスケジュールの調整なんかは進みそうですよね。でも替えがきかないのは、家庭内でのお父さんだって同じわけだから「仕事と子育ての両立」に関して、谷くんはとてもうまくやっているなーと思います。


「男湯」でも「女湯」でもなく「谷さんしか入れないお湯」

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──女装に関しては、お仕事のときだけじゃなくて、プライベートでも化粧をされたり、いまのような衣装を着られたりすることはあるんですか?


そうですね。朝起きてからは、基本的にずっとお化粧をしてます。

──そうなると、たとえばご家族でお出かけなんかをされたときに、周囲からの目線が気になることはありますか?


向こうからなにかしらのアクションがない限りは、まったく気にしないですね。ただ、たとえば以前、温泉旅行に行ったことがあったんですけど、そこで旅館の方がすごく気を使ってくださって、「谷さんしか温泉に入れない時間」を設けてくれたんです。そういうときは、すごく申し訳ない気持ちになりますね。

──周囲の人からすると谷さんに対して配慮したつもりが、逆にそれが谷さんに気を使わせてしまうってこともあるんですね。


あと他に「周囲からの目線」に関する話で言うと、たとえばお昼にお仕事が終わったらそのタイミングでお化粧を落として、午後から子どもを近くの児童館に連れて行くこともあるんですね。

それで児童館にいるママたちたちと話していると、お化粧を落としていても、ママに間違われることがあって。そこで「じぶんはお父さんなんですよね〜」って言うと「あっ、お父さんとしての役割もされているんですね」と言われるんです。

永田
女性同士のカップルで、谷くんがお父さん役をしているって解釈をするんですかね。


そうなのかもしれないです。でもこっちからもあんまり詳しく説明するわけじゃないので、フワッとしたまま話が進むことはよくありますね(笑)

──たしかに、それでお互いにとって困ることがないなら、全員に詳しく事情を説明する必要はないのかもしれないです。


家族4人で飲食店へ行って、お金を払うときも「お会計は別にしますか?」って聞かれることがよくあるんですけど、特に説明はせずに「あ、一緒で大丈夫です」とだけ答えています。

──そこでも「一人ずつ子どもを連れたママ友のご飯じゃなくて、2人の子どもを連れた家族なんです」って説明はしないんですね。


勘違いされて答えを出さないままなんだけど、そのまま生きていけてるから問題ないって感覚です。

永田
最後までトラブルが起こらない、アンジャッシュのコントみたいな感じなんですかね(笑)。でもぼくは、その勘違いしたまま生きている状態をポジティブに捉えているし、過剰に相手に干渉しないことこそが、ダイバーシティだと思うんですよね。


もちろん、もっと仲良くなりたいと思ってくださった方とは、深い話をすることもできます。人間関係の距離感を選びながら生きていけるっていうのは、やっぱり時代背景として、「女装」自体がそれほど珍しいことではなくなってきているのも、関係しているのかもしれないですね。


「幸せ」であることの代償?

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永田
きょうこうやって久しぶりに会って話すなかで、『実験台モルモット』のプロデューサーとして関わっていたときよりも、いまの谷くんのほうが、気持ち的にすごく健全そうなんですよね。


もう病んでないです!病み続けるのって、難しいなと思いました(笑)。

永田
バンド活動をメインにやっていたときは、病んでいるような状態だからこそ、生まれていた表現もあったじゃないですか。


↓実験台モルモットの代表曲のひとつ、『100万回死んだぼく』



そうですね。求められても、いま当時と同じ表現をすることはできないです。それだけいまの環境が穏やかで、満たされているってことでもあるんですけど。だから、じぶんがこの状況になってみて、ハッピーなことを作品にできる方って、すごいなと思いました。

幸せって、活動源にはならないんです。作品は、そのままにしていると耐えられないつらさを、変換されることによって生まれることが多いのかなと思っていて。だから、幸せや楽しさを変換してものづくりをされている方って、すごく無駄で素晴らしいことをしているなって思ってしまいます(笑)

永田
これはあくまでもぼくの経験則なんですけど、谷くんの2人のお子さんがもう少し大きくなると、また状況が変わってくるんじゃないかなと思います。子どもが3歳を超えるくらいまでは、幸せなんだけど必死でもあるから、余裕がないんです。

ぼくもじぶんで豆を挽いてコーヒーを淹れられるようになったの、子どもが4歳になったくらいだったので。だから谷くんも、もう少ししたら自然と「あ、いまのこの感じ、メロディにできそう」みたいな感覚が出てきそうな気がします。


なるほど。たしかにこれから子どもが大きくなっていくなかで、どんどんじぶんの環境も変わっていきますもんね。

──では最後に、谷さんご自身の経験も踏まえて、お子様2人へのメッセージをいただけますか?


じぶんがやりたいと思ったことは、どんどんやってみてほしいですね。パパはもう、なにも口出ししないので。じぶんの経験としても、失敗から枝分かれして次の展開につながったことも多かったんです。

永田
いまの女装モデルの仕事にしても、最初は別のモデルさんがやる予定だったけど、急遽欠席になって、そこで谷くんが代役として受けたことがきっかけでしたもんね。当時のマネージャーさんが、撮影が終わったときに「谷くんの女装がすごかった!」と興奮していたことは、いまでも覚えてます(笑)


いまこうして女装モデルとしてお仕事をたくさんいただけるようになるなんて、当時は思いもしなかったです。だから子どもたちも、「あなたは○○っぽいね」っていう周りの意見に流されたり、男だから女だからとかにとらわれたりすることなく、じぶん自身を信じて動いてみてほしいですね。

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今回インタビューに登場してくださった、谷 琢磨さんのTwitterアカウントはこちら!


永田が代表を務める株式会社パパスマイルが運営中の、日本で唯一のベビーテック専門メディア「Baby Tech」のサイトも、ぜひ見てみてください!


▼これまでの対談記事一覧

第1回 【パパ兼経営者の二刀流ライフ】子育てして、親育てされて。父親になって、経営者としても成長できた

第2回 ロボット世界大会最年少出場で入賞、孫正義育英財団3期生の息子を育てたパパ経営者が、社会に描くビジョン

第3回 ベトナムで2人のお手伝いさんと共に3人の子育てをするパパ経営者からみた「ここがヘンだよ日本の子育て」

第4回 キャリアの専門家は、子育てもプロなのか?返ってきた答えは「たぶん上手くいかない(苦笑)」

第5回 みんなの魅力を発見し「プロデュース」!人の魅力を届けるため、YouTuberやECサイトを手がけるパパ経営者

第6回 「仕事と育児のバランスは9:1くらい」なパパ経営者が、社員とその家族の分まで健康診断の費用を全額負担する理由

第7回 「2人だけのLINEグループ、何個もあります。」夫婦間のコミュニケーションを円滑にする、LINE活用術とは


写真:ぺらねこ
執筆:藤本 けんたろう

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