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"Fervere"の未来

一般社団法人 学士会の会誌"NU7"に記載されたエッセイを転載したもので、2020年5月号の原稿です。以下、本文↓

他のエッセイはこちらからご覧下さい。


"Fervere"とはラテン語だ。

 英語で"発酵"を"Fermentation"と書き、この語源が"Fervere"である。微生物が人間に有益な有機物を生成する事が発酵であり、その反対は"腐敗"で"Decomposition"と書く。微生物が目に見えないところで何かを作り出す過程から、"Fervere"は"湧く"と言う意味らしい。
 人間が自由であれば、その創造性から多くのアイディアが湧き上がり、自由が奪われれば、その湧水は干上がってしまう。私たちは、自由を制限されて自粛を余儀なくされた。当たり前が当たり前でなくなった時、その自由の尊さを思い知らされる。

 ある人は

自らがもたらした不自由の呪縛から、脱出せねばならない

と述べた。

 また、別の偉大な経済学者は、経済のあり方が人のあり様を決め、一定の行動が選択されてしまう事を自著で記していたそうだ。身近に変換すれば、あるコミュニティでのキャラクター設定が、自分の言動も自動的に選ばされてしまう。学校や職場の環境で自分のキャラクターが決まってしまい、自身の方向性も決まってしまう。そこに自分の自由はあるのだろうか?

 どこかで感じている夢や想いは、論理的に合理的に調合されるのではなく、自然とどこからか湧き上がるものであるが、それが叶わずに不適な環境で留め置かれれば、やがて臭みを放ち腐敗していくだろう。留め置く必要はないし、それを強いられる義務も無い。本来、私たちは自由だ。
私は自由が存在していたのに、自由でなかった原因を考えている。鎖を掴んでいたのは自分自身だが、縛ったのは別だった。しかし、それから解き放たれた時、湧き上がる自由を得る事ができるだろう。

 ある人は言った。

自分が自由になった時、運命を見いだせる。貴方自身に近づいている。運命は必然ではない自由だ。

 運命は、まだ湧き上がるだろうか?



[引用]
欲望の時代の哲学2020
マルクス・ガブリエル
NY思索ドキュメント
(NHK Eテレ) より

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